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最後の幹部

ザシィ!




 クロウの短剣がマインドの胸を捉えた!




 もっと深くへ突き入れると遂に心臓に達し、マインドの口から大量の血反吐が吹き出す。




「一番劣等な奴に殺られるとは……」




 マインドがクロウの顔を目掛けて手を差し伸べてくる。それを短剣で振り払うクロウ。




「哀れな奴だ……」




 血のしたたる短剣をマインドのガウンでふき鞘に納める。




 マインドがどたりと倒れる。その死体に片足を乗せると目が充血し。呼吸が荒くなり、体内の熱が上がる。そして大声で叫ぶ。




「我は成し遂げたー!」




 仲間がクロウに駆け寄った。






「なんとどうやらマインド様までも殺られた様子。いかがいたしましょう」




「なに!後はオペムだけか。どうやら俺が直々に手を下さなくてはならない公算が大きいな。体を暖めておこう」




 デウスはそう言うと武闘場に消えて行った。






 あれから3日経った。旅は順調に進み、クロウ一行は大統領府である、オーギュードへ到着した。




 着いたのはまだ正午。ホテルにチェックインし、荷物を置き、町歩きに出る事にした。





「ズズちゃんと歩けるなんて嬉しいぜ」




「なに言ってんのよ、いつも歩き通しじゃない」




 ズズが突っぱねると、ジョエルが返す。




「旅の話じゃないんだよ。こういうふうなデート的な……」




「後ろに3人いるじゃない。デートってふたりでするものよ」




「いいんだよモブの存在は。こういう二人きりの空間があるのがデートって言うんだよ。ほら腕を貸すからしがみついてご覧」




 ズズはずっこけた。手がないのだ。それを完全に忘れているジョエル。




「そうだ両手がなかったんだ。わっははは。これならどうだ!」




 ジョエルは見えない右手でズズの肩を抱き寄せる。見えない腕は温かく、確かに血が通かよっていた。





「お、なんだ? 雰囲気いいな」




 クロウが目ざとく2人が寄り添っているのを見てとった。




「あのふたり、仲がいいんだか悪いんだか」




 カルムがつぶやく。




「やっぱり決定打はあれじゃねえの、さそりの男の毒針からジョエルがズズを守ったやつ。俺がズズだったら惚れてるよ、やっぱり」




 とクロウが言うとカルムが分析をする。




「そうだな。女っていう生き物は10代の頃は男の容姿しか見てないが、大人になるにつれ自分を守ってくれるのか否かでパートナーを選ぶもんだ。ズズは18歳だろう? そろそろ大人になる年頃だ。彼氏として意識し始めたんじゃないのかな」




「ジョエルはああいう性格だから、男からも女からももてるだろうし、背は高いし、まあまあの男前だし……俺なんかと真逆なんだもんな」




 クロウが自己否定をするとカルムが笑う。




「なんだお前、もしかして女の子と付き合った事がないのか?」




「ちげーし!もててたし!」




「まあまあ泣くなチェリーボーイよ。人生には3度のもて期が訪れる。ここで好きな子にしっかり告白をするんだ。さすればしっかり彼女も出来よう。彼女が出来たらあんな事やこんな事がやり放題だぞ」




 クロウは、あんな事やこんな事を妄想する。




「女は権力者や立場が上の者に弱い。これからふたりで成し遂げる夢を実現すると、自動的にモテモテになるぞ」




「ほ、本当か?」




「保証しよう。そのためにも頑張らなければな」




「ああ、成し遂げよう!」





 ふたりは握手し、クロウに新たな夢がプラスされた。





 町を歩いているとなにやらもめ事が起きている様子。大きな屋敷の前の門にいる棒を持ったふたりの門番と、初老の男が掴み合いの喧嘩をしているのだ。




「だから取り立てがお前の家に行くから、文句はその時に言えよ!」




 門番が男を突き放す。男は足を絡ませしりもちをつく。




「どうしたんだ?」




「ここで金を借りてしまったんです。でも利息が高すぎる。十一ですよ。10日に一度一割も利息を返さなくちゃならない。そして返さないと取り立て屋がやってくる。もう地獄ですよ。女房も娘を連れて逃げ出してしまいました。私は、私は一体……」




 いい大人がしくしくと泣き始めた。クロウは感じる、なにか嘘臭いと。




「行こうぜクロウ。金は借りる方が悪いんだ」




 ジョエルがドライに言う。




「いや、行く!」




「らしくないぜお前」




 クロウは手を振り、集まったみんなで円陣を組みひそひそ声で話し始める。




「俺の勘ではこれは罠だ」




「なに!じゃあそれこそ避けないと」




「最後の幹部が待っている可能性が非常に高い」




「なにぃー!ますます避けないと」




 思わず大きな声を出したジョエルが自分の口をふさぐ。




「だからあえて行くんだよ。天秤の男と決着をつけるために」




「そこまで分かっててお前…よし分かった。俺も男だ。汚ねー高利貸しなんか、あっという間にズタズタにしてやる!」




 みんな腹を決めたようだ。




 クロウが門番に近づく。




「私はクロウ・ベンナと申します。ここのご主人にお会いしたいのですが」




「聞いて参ります」




 門番はそう言い残すと屋敷の中に消えて行った。





 待つこと10分、ようやく門番が表れた。




「こちらへどうぞ」




 最後の幹部の屋敷に入る。まがまがしい雰囲気だ。2階に上がると主の書斎に通された。みんなが前を行き、クロウは最後に部屋に入る。




 その時、クロウの頭の中にデーデの声がする。




( クロウ!男の目を見ちゃだめだよ。体が動かなくなる!)




 部屋に入ると確かにみんなの動きが止まっている。




 でっぷりと太った男が異能を使う。




「ハリケーン!」




 小さな竜巻が起こり部屋中のものを激しく壊していく。風はますます強くなり物がジョエル達に当たり始める。




「飛んでけー」




 なんと紙幣を竜巻に向かって投げつけたではないか。




 そしてみんなの鼻にぴたりと引っ付く。みんなが窒息状態に陥る。




 クロウは敵の目を見ないように空に浮き、超速で敵の後ろへ回り込む。




「私がの名はオペムと言う。お見知りおきを。でもすぐにみんな死んでしまうんだがね、ククク」




 後ろから首を絞め、短剣を抜くと男の首筋に当てる。みんなが窒息している。時間がない。




 クロウはいきなり男の頬を短剣で切りつける。




「キャー!」




「術を解け!さもないと次は命を取る」




「もっと、もっと!」




「はあ?」




 時間がない。息だけでも復活させてあげなければ。




 クロウは超速で飛び、みんなの鼻に張り付いた紙幣を取り除いた。みんなは荒い呼吸をし、 なんとか人心地ついた。




 すかさずまたオペムの首筋に剣を当てる。




「早く術を解けー!」




 ザシッ!




「キャー、もっとー!」




( マゾってやつかよ…)




 またみんなの紙幣を取り除く。らちがあかない。




 超速で戻るとクロウは叫ぶ。




「本当に殺すぞ!このマゾ野郎!」




「お前は俺を殺す事は出来ない。なぜなら俺を殺したら術がそのままになってしまうおそれがあるからだ。確率は半々、どっちにかける。ククク」




 クロウは閃く。




「デーデ、今のを聞いていただろう。答えはどっちだ!」




 デーデがオペムの心を読む。そしてクロウの頭の中にじかに話しかける。




( その男が死ねば術も解けるよ)




「よし分かった!おい、殺してもいいんだとよ」




 ぎくぅ!




 クロウがオペムの胸を突こうとすると、ズズが鬼の形相でスイカ大の黒い玉を出しているではないか。




 ズズはオペムの顔めがけて、念力だけでその玉を投げつけた!




 ザンッ!




 オペムの首がふっ飛んだ。




 そして胴体がどたりと床に転げ落ちた。




 するとズズが目を血走らせ大声で叫ぶ。




「我は成し遂げたー!」




 ズズは体の熱を感じる。拳を握っていると、その熱も冷めていく。





 みんなの呪縛が解け、伸びをしている。




「なんだか、あっさり終わったな」




「いや、そうじゃない。今日のお手柄はデーデだ。デーデの知らせがないと俺も術にかかり、全滅の可能性があった。紙一重の勝利だったんだ」




 みんながデーデの頭をなでる。デーデは嬉しそうな顔をしている。




 その時、クロウの脳裏にビジョンが見えた。




 馬にまたがり槍を持った男。年は40歳くらい。修羅場をくぐり抜けてきただけあって右の頬に大きな傷あと。腕には槍が2本クロスした紋章のようなタトゥーがあり、直感的にこの男がボスだと分かる。




 その男は大きな木の下を通りかかるとなぜだか上から岩が落ちてきて、もろに頭に直撃し、馬から落ちて死んでしまった……




 動きがあるビジョンは初めて見た。そして死ぬところまで。




 おそらくこいつがボスだろう。ホテルに戻りみんなと会議をする事となった。

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