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国境検問所

朝10時になった。もう前の宿場町から2時間歩いている。


 前に国境検問所の建物がようやく見えてくる。クロウの勘によると、そこには12、3人の人間がいるらしい。


 荷馬車にはデーデを下にしゃがませ、その上から大量の小麦袋が積み上げられている。


 馬に乗っているカルムは緑色のジャケットを脱ぎ、朝服屋で買った農夫の格好に変装している。


 検問所へ差し掛かる。どくどくと鼓動が高まる。無事に通過しますようにと、みんなが心の中で祈りながら。



 3人の男がシャツ1枚で出てきた。建物の中は相当暑い様子だ。


「まずは通行証だ」


 男達は4人の通行証を確かめる。1人の男が口を開く。


「通行証は問題なしだが、お前らの格好がねぇ…怪し過ぎるぜ」


 クロウがとっさに答える。


「私達はこの特別に美味しいと評判の小麦を、大統領官邸に運ぶためにこの農夫と小麦を護衛して行っている者でございます。どうかお目こぼしを…」


 そういうと1万ビードルを、疑ってかかっている職員の手にそっと握らせた。


「なんだ、これは賄賂か!何か疑わしい物でもあるんだな? 農夫よ馬から降りろ。徹底的に調べてやる!」


 よかれと思ってやった事が裏目に出て、最悪の事態を招いた。


 カルムが馬から降り、ごそごそと小麦袋の中に手を入れている職員を見ている。


「えーい、らちが明かない。槍を持ってこい!」


「へーい」


 別の職員が建物の中から槍を持って出てきた。


 疑った職員に槍が手渡される。小麦袋の中に槍を突き刺そうとしたその時!


 ズズが黒い玉をその職員の膝より下にぶつける。膝下が吹っ飛んだ職員は、「ぐわー!」っと叫びその場に崩れ落ちた。


 瞬時に4人は四隅に互いに距離を取る。もうこうなったら破れかぶれだ。ズズがもう1人の職員の男の膝下を狙い撃ちし、見事に命中させる。


 また足先が宙を舞う。


 伝えを聞いた建物の中にいる職員が、なんだ、なんだとわらわら出てきた。その数10人ほど。



 ズズがきつく唇を結び黒い玉の連続攻撃だ。


「みんな不具者になればいいわ。不具者の苦しみはなってみないと分からない!」


 足が飛ぶ者、腕が飛ぶ者、決して殺さず足と手だけをピンポイントで狙い撃ちにしていく。


「みんなに不具者に…みんな不具者に……」


 ズズは泣きながら攻撃を続ける。



 そこにいた10人以上の職員が全てズズにやられ、みんなその場で動かなくなった。


「所長。しょちょー!」


 足を飛ばされた職員が所長を呼ぶ。階段から降りて来たその男はにっちゃにっちゃとガムを噛みながら面倒臭そうにドアを開けノロノロと出てきた。


「あ~あ、こりゃまた悲惨だねぇ」


 所長はさほど驚く事もなくその凄惨な光景をぐるっと見回す。


 ズズが所長に大きめの玉を、ももにむかって投げつける。所長は軽々とひょいとかわす。


 そして手から何か白い塊のようなものをズズに飛ばすと、それは網の塊だと分かった。素早く所長のそばまで回りこみ、渾身の回し蹴りを繰り出すジョエル。しかし所長はすっと離れ紙一重でかわしてみせる。


 網がズズを捕まえる。ズズは必死に抵抗するがびくともしない。黒い玉を出し、網にぶつけるも網を破る事が出来ない。


 ジョエルの連続突きを内受けでなんとかブロックし、前蹴りで距離をとる。どうやら格闘技もこなすようでジョエルの攻撃もなかなかヒットしない。


 クロウがひらめく。


「お前らはもしかしてグイードの息がかかっている者達か!」


 所長が物憂げに返事をする。


「だとしたらどうした」


「俺の勘だが……グイードは、稼ぎの場を人口が多いドーネリアに定め、幹部らはゴエラスの別荘でのんびりと暮らしているんだろう。そしてそれを脅かす者を検問所で排除する……政府なんかに属していない、グイードの私設検問所がここの実態だ!」


 所長はズズの入った網を木の枝にくくりつけている。中でもがき続けるズズ。


 クロウはじれる。


「なんとか言ったらどうなんだ。おい!」


「同じ言葉を言わせるなよ。だとしたらどうした!」


 いままでノロノロとした口調だった所長がキレて大声で怒鳴る。


「滅多刺しにしてやる!」


 その時、クロウの脳裏にみんなが所長の網にかかり木に吊り下げられているビジョンが浮かび上がった。ヤバい、非常にヤバい。


 クロウが短剣で所長を袈裟懸けに斬るも空を斬る。所長も短剣を取り出し、クロウに迫る。


 怒涛の5連突きをクロウに放つもクロウは全て紙一重で避ける。同時にクロウが胸を突き刺す。浅かったと見えて少し血が出ただけだ。しかし、これが所長の怒りを増大させる。


「よくも俺様に傷を着けてくれたなぁ!」


 所長がクロウに網を飛ばすと、それをひょいとかわすクロウ。これには所長も驚いた様子で口をポカーンと開けている。


 そこへまたしてもジョエルが連続突きで迫る!


「ぐふぅ!」


 見えないパンチが面白いように所長に決まる。射程距離は腕を入れて2カイルほど、短剣では届かない距離である。


「食らえ!」


 所長がクロウに網を飛ばす。ジョエルに任せていて隙ができていたのだ。ついにクロウも網にくるまってしまった。


 クロウをズルズルと引きずりまたあの木の枝に吊るされてしまった。


 残りはジョエルとカルム……だが、ビジョンで見たのは3つの網。少しおかしい。まだ完璧な未来予知は出来ないのだろうか。


 ジョエルが二段蹴りで先制攻撃だ。左足は軽くいなしたが、右の中段蹴りがもろに入った。


「うぐっ」


 所長は前に倒れ込んだ。ジョエルは巨体で怪力の持ち主である。その蹴りが腹に決まれば並大抵の苦しみでは済まない筈だ。


「勝った!」


 クロウは確信した。しかし二転三転するビジョン。


 ジョエルがとどめを刺しに倒れている所長に近づく。


「ジョエル、逃げろ!」


 ジョエルがはっとしてクロウを見ると、そこに網をかけられる。


「しまった!俺としたことが」



 3人とも木に吊り下げられる。最初のビジョンに戻ったのだ。


 クロウは知る。未来は確定してはいない事を。二転三転するビジョンは細かく別れた未来の欠片の一つ一つの可能性に過ぎないという事を。




「よく来たデーゼよ。まあ、ワインでも飲んでくつろげ」


 デウスが呼びつけたのは賭場の管理者のデーゼ。右の腕にはあのさそりのタトゥーが。デーゼは出されたワインをごくりと飲み干す。


「あの4人組の事ですか?」


「そうだ。相次いで俺の部下と戦っているうちにますます力をつけつつあるようだ」


 デウスもワインを一口流し込む。


「今は国境検問所のドネイルと戦っている。ドネイルが優勢だが、先は分からない。不可能を可能にしているなにかがあいつらにはあるようなのだ」


「不可能を可能に……しかし私を呼んだのはあの4人を抹殺するためでしょう。ご心配には及びません。私にかかれば赤子の手をひねるようなものにございます」


「そうか、ところで戦いやすい場所や条件などはあるのか? なるべくなら用意するが」


「奴等の寝込みを襲えば十分でございます」


「それは頼もしい。では任せたぞ」


「はっ」


 デーゼは部屋を出ていった。




 3人が捕まった。カルムに全てがかかっている。しかしカルムの姿はどこにも見えない。


( 俺の網は俺の思念体で出来ている。あがいても無駄だ。それにしても妙だな、3人か。こんなに人数が少なかったかな…)


 その時、地面の下から糸が現れ、一直線に所長の首目掛けて飛んでゆく。

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