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with us!(仮)  作者: soruto
1st-game [Survival Shop War]
2/6

第一話【streamer】

 俺は窓の外を見ながら思う。学校なんて爆発してしまえばいいのに、と。みんなもそう思ったことはないかい?俺は毎晩願っているよ?夜寝る前お星さまに。

『学校を十割楽しんでいる者は青春も十割楽しんでいる』

 これは俺が高校生活を一年間したうえで出した説だ。そして青春を楽しむためには恋人は必要不可欠。あーあリア充爆発して学校も爆発しねぇかなあ。弁償金はもちろんリア充持ちで。

 そう世の中への不満をぶつけてた所いつの間にか担任の藤崎(ふじざき)先生が教壇に立っていた。いや、失礼。言葉足らずだった。窓からグラウンドを眺めている俺を睨みつけて教壇に立っていた。藤崎先生は黒髪ロングで落ち着いた感じの先生だ。ただし怒るとすごく怖いらしい。

「どうしました高林(たかばやし)君?何か外に面白いものでもありましたか?」

 そう笑って――いや、目以外は笑って俺に尋ねる。人物描写は苦手なんだよな、みんな思っていること口に出して行こうぜ?そうすれば世界は平和になると思うよ。そして俺は思った事をそのまま答える事に――

「いえ、特に何も」

 そんな思っていること言えるわけないよね。「グラウンドにいる女の子すごくかわいいなぁ……」って今ここで俺が言ったら教室中が大騒ぎとなっていただろう。エスパーでもなければ自分の思っていること周りにバレないからね。思っていることを口に出すのはやめようね。

「そうですか。ならちゃんと前を向いてくださいね?」

「はーい」

 俺はそう返事をした。こういう時は素直に従うのが一番だということを十六年に渡る人間生活で学んだ。まあ別に人間生活以外したことないけどな!

「二年生になって一か月が過ぎたがみんなこのクラスに馴染めているようで何よりです。さて、みなさんも知っている通り来月には体育祭があります。」

 でたでた体育祭。あれでしょ?別名『女子が写真をどれだけ自撮りできるか大会』体育を純粋に楽しんでいる奴なんていないだろう。(個人の見解です)そして、うちの学校の体育祭はクラス対抗で学年ごとに行われる。恐らくクラスが一番団結するときなのではないだろうか。まあ去年なんて「えー男子とダンス踊るのヤダー」という女子がいて「練習よりサッカーしようぜ!」とか言う男子がいる団結とは程遠い環境だったのだが……

「そして去年と同様にクラスから男女一人ずつ実行委員を選出しないといけません。なので明日のLHRでまた聞くから考えてきてくださいね」

 クラスのそれぞれが気の抜けた返事をする。俺には関係ないな。だってこういうのって『ウェーイwwww今日俺の家でパーティーしようぜwww』とか言っている奴がやるんだろ?俺ができるわけないじゃないか。この学校は何を考えているんだ。

 今俺がいる学校は神奈川県立北横浜(きたよこはま)高等学校、通称『北浜高(きたはまこう)』は一昨年に校舎が出来たばかりのとても新しい学校でグラウンドは人工芝。テニスコートはなんと6面もある。理科室は一流大学並みの設備が整っており、近隣大学との提携も行っているらしい。もちろんその他の施設もハイレベルだ。図書室なんて一つの部屋に収まりきらず一つの建物として独立している。正確に言えば図書館だ。音楽室にはスタジオにあるようなレコーディングブースだってあるし、コンピュータールームなんて3Dモデリングができるようにハイパースペックのものが四十台近くある。

 そんな色々ハイレベルなこの学校は様々な進路に就くことができるように学科・コースも多様だ。全て言うと、

 普通科(文系・理系)

 工業科(建築・情報処理・電気)

 医療科(看護・医学)

 芸術科(音楽・美術)

 体育科(スポーツ科学)

 この5学科10コースに分かれている。

 そしてクラスも学科、もしくはコースごとに分かれており

 1~4組―普通科

 5組―工業科

  6組―医療科看護コース

  7組―医療科医学コース

  8組―芸術科音楽コース

  9組―芸術科美術コース

  10組―体育科

 なぜこんなにコースや設備が充実しているのかについては理由がある。それは今、県が最も力を入れていると言われている『最先端教育プロジェクト』の試験校だからだ。このプロジェクトでは生徒の更なる学力の発展と教育の効率化を同時で進行させる事を目標としており、様々な生徒のサンプルが必要となるのでコースがとても充実しているのだ。また、このプロジェクトでは生徒の自由性に重点を置いているため校則が意外と緩い。もちろん制服着用、授業中のスマホは禁止等最低限のルールはあるが昼休みの内に学外に出ても良い事にはなっていたりする。その他にも色々とこの学校独自の仕組みなどが多いがそれはまたの機会に説明しよう。


 それが今日の朝の事。そして今は放課後、時計は午後4時を示していた。

 今日の授業は全部つまらなかった。特に体育でのサッカーは辛かった。シュートを外したら舌打ちする奴はマジで良くない。

 そんな事を思いながら俺は家へ帰ろうと昇降口へと向かった。ラブコメ的には自分の下駄箱を開けたらラブレターが入っているのがお約束なのだが……そう思いながら俺は下駄箱を開けた。

 まあ当然ラブレターなんて入っていない。ちなみにコレを一年生の時は毎日やっていた。もちろん一回も入っていたことはなかった。というより今どきの告白ってLINEで済ますらしいね!されたことないから分からないけど。

 だが、されたことは無いがもらったことはある。え?何を言っているかわからないって?しょうがないな。そんな君たちにヒントをあげよう。

『高林君って○○君と仲が良いよね?』

 これだけでどういう意味か分かった君は俺と同じ側の人間だろう。なのでラブレターはもらい慣れている。俺は下駄箱に上履きをしまい通学用の運動靴を取り出す。すると後ろから女声を掛けられた。

「高林君?ちょっと……良いかな?」

 ふむ、生憎俺には女子に声をかけられる心当たりが一つもない。

 そしてないが故に心当たりが一人しかいない。振り向いて俺は言う。

「どうした真一。なんか用か?」

 この()()()()()()()()()()()()()()()平井真一(ひらいしんいち)。俺の小学校からの幼なじみだ。この男、サッカー部のキャプテンにして陽キャの中の陽キャ。そして特技はミックスボイスという発声法で女子に限りなく近い声を出すことが出来ることだ。正直言って何に使えるか全くわからない。が、この声で電話してもらうと一定の満足感は味わえる。悲しいなぁ……

「もう帰るのか?」

 そう言いながら真一が俺の横に並び下駄箱に手をかける

「ああ、お前は今から部かt……」

 俺の言葉は彼が下駄箱を開けたせい──いや下駄箱から落ちた何かのせいで途切れた。

 俺は下駄箱から落ちた物を拾って差し出す。

「ほら、落ちたぞ」

「ああ、ありがと……ん?」

  何故コイツが困っているかと言うと俺が落ちたものを差し出したまま掴んで離さなかったからだ。

「なあ?一つ聞いていいかい?」

 笑顔で俺は聞く。

「良いか悪いかで聞かれたら悪いだ」

「このハートのシールが貼られた封筒は何なの?」

「なんだろうな。多分あれだろ、通信教育のダイレクトメールだ。なにもお前がきにすることはない」

 なんだ、ただのDMかあ……とはさすがにならない。

「どうして……」

「ん?」

「どうして俺には彼女ができないんだ……」

 別に俺は頭もそこそこいいし容姿も悪くない(と周りから言われている)し足だって速い。なのになんでこいつはモテて俺はモテないんだ。神はいないのか?

「じゃあ部活……がんばれよ……俺は用事思い出したから……あと今日は二十一時五十分にいつもの場所……集合な……」

「俊樹、一つ頼みごとをしてもいいか?」

「……ん?」

「この手紙捨てておいてくれないか?」

 こんな男を好きになる方が可哀そうになってくる。最初は断ろうと思ったが良いことを思い付いたので素直に引き受ける。

「分かったよ……」

 そう言って俺は手に持っていた運動靴を仕舞い上履きを下駄箱から取り出し履く。

 そして俺は元来た道を帰り渡り廊下を抜け専門棟へと向かった。

 ここ北浜高は大小2つの長方形の建物が並行して建っていて一回り小さい建物が今いた全クラスの教室や下駄箱がある管理棟。大きい方の建物は専門棟と言って理科室や調理室など専門的な教室が集まっている。

 そして俺が向かうのは二階の渡り廊下を渡って右へまっすぐ行った一番奥の部屋だ。ドアの上には「PCルーム」と書かれている。躊躇せずに俺はドアを開け中に入る。PCルームはすっきりとしており前にはホワイトボードがありPCが横に十台、それが四列あるのでかなりのハイスペックパソコンが四十台あることになる。一体いくらかかっているんだ。そしてよく見てみると最後列の一番隅っこに黒髪ショートボブの女子が気持ちよさそうにすやすやと寝ていた。俺が気持ちよく寝ているのを邪魔されたらキレ散らかすので寝かせたままにしておこう。俺は最後列の1番右のいつもの席に座ってパソコンを起動させる。そして後ろの棚からマイクとヘッドセットを取り出しパソコンに接続し自分の鞄の中からジュースを取り出して喉に流し込む。パソコンが起動すると無機質なデスクトップ画面が表示される。俺は慣れた手つきでゲームと配信ソフトと立ち上げた。すると左の方からガサガサ音がしたので見てみると黒髪ショートボブの女が目を覚ましていた。

「あんた、こんなところでなにしてるのよ?」

「それはこっちのセリフだ、若槻(わかつき)。ここはPCルームであって仮眠室じゃ無いんだぞ?」

  黒髪ショートヘアの名前は若槻愛香。俺と同じ二年生だ。そして──

「そうやって自分の部屋みたいに言うけどあんたがこの部室に来たのはいつぶりか分かってる?」

  俺と彼女は同じ部活に所属しておりその部室がこのPCルームなのだ。

「だって映像研究部の活動って家でも出来るじゃないですか……だからまあ来なくてもいいかなーって……思いましてですね……」

  俺は俯いてボソボソと喋る。俺たちが所属しているのは映像研究部。通称、映像研だ。この映像研は一年前。つまり俺が新一年生だった時は部員が一人もおらず廃部寸前になっていた。だが、その時の俺は部活動の活動日や活動場所が書かれた一覧表を見て

「えっ?活動場所がPCルーム?ということは毎日PCゲームできるってことじゃね?え?入ろう。今すぐ入ろう」

 という安易な理由で入部したのだ。今思うとあの選択は正しかったような気がする。

「てかお前は何をやってたんだ?」

「絵を描いてたの、絵を」

  若槻は持っていたペンで枕がわりに使っていたペンタブレットをコンコンと軽く叩く。

「そしたらいつのまにか寝ちゃって、昨日結構夜遅くまでゲームをしてたからかなあ?」

「じゃあ今から俺FPSゲームするけどお前はどうする?」

「もちろんやるよ。てか、あんたがFPSやるなんて珍しいね。」

「まあ、ちょっとな」

 リア充にむかついたからストレス発散したいとは言えない。

 俺は自分の席に戻り若槻に隣に来いと手招きをする。

「なんで私が動かなきゃいけないのよ……」

「その方が意思疎通しやすいだろ。マイクも一つで済むし」

  そう言いながら俺は隣の席のパソコンの電源をつけ、ゲームを起動させた。

  この間にマイクのテストをしておこう。そう思い俺は隣の席との境目に設置して置いたマイクへ向かって話しかける。すると画面の右下にあるマイク音量を表すパラメータが真ん中あたりで止まっていた。ふむ、このくらいでいいだろう。そして後は専用ソフトにサイトから発行されるURLとストリームキーを入力すれば準備はOKだ。すると左側からとてもいい匂いが鼻をくすぐる。俺が香りの元を確かめようと左を向くと若槻が隣の席に座っており俺が見ているモニターを横からのぞき込んできた。

「っ……⁉」

 え?なんでこんなに顔寄せられんの?男子がこんなことやったら『顔近いんですけど……』『何顔近づけてんのキモッ……』とか言われかねない。てかこういう無邪気な行動が多くの男子を勘違いさせるとかどっかの本に書いてあったが全く持ってその通りだと今思う。

 そうくだらないことを考えていると若槻が肩をたたいてきた。

「ねー?きいてるー?」

 そう言えばその本には『ボディタッチをしない』を徹底しろとかも書いてあったな。俺は感情を表に出さず普通にしゃべるように心がける。

「え、なななな、にゃんのことだ?」

 やばい、まずい、自分では感情を表に出さずにしゃべったつもりだがこんなのバレバレじゃないか!俺は恥ずかしさのあまり思わず赤面してしまう。すると若槻が俺の方をじっと見てきた。

「あんた顔赤くない?熱あるんじゃないの?」

 そう言いながら右手を俺の額に当ててきた。その頃俺の頭の中ではオーバーヒートしたせいか天使と悪魔によるささやきが行われていた。


「わかっているかい高林君?彼女が君のことを好いているわけないじゃないか!その勘違いのせいでどれだけの男子が犠牲となったか分かる?」

 えらく辛辣な天使だ。だがそれも俺の今後の学園生活を考えての事なんだろう。一方悪魔の方はと言うと

「高林……きっと若槻はお前のことが好き……なんだと……思う……」

 なんとも歯切れの悪い悪魔だ、悪魔でも嘘をつくのがしんどいレベルの事なのか?

 まあ結論は全員一致なのでいつもどおりに接することに俺はした。

「いや、ちょっと着込んでいるから暑くなっただけだ。で?なにか言おうとしてなかったか?」

「え?ああ、準備ができたよーってだけ」

 なんだよ紛らわしい。俺に好意があると思うじゃないか。

「そうか、じゃあ始めるぞ」

「ふぁーい」

 そういえばまだこの部活が何の活動をしているのか説明していなかったな。

 俺は画面上に表示されている《配信開始》というボタンをクリックした。

 神奈川県立北横浜高等学校映像研究部での活動内容。それは――

『どうもみなさんこんにちは!with usのクロンです!』

『with usの若菜です!』

 ゲーム実況をすることだ。

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