プロローグ
午後十時過ぎ。俺はスマホに配信開始の通知が来ているのに気づいて急いでライブを見に行く。
『どうもみなさんこんにちはーwith usの若菜です!』
『with usのなるでーす!』
良かった。何とか間に合ったみたいだ。
俺が今見ているのは最近中高生に人気のゲーム実況者グループ「with us」
今現在は4人のメンバーで構成されている。
基本的にどのゲームも得意だがFPSが唯一苦手な「クロン/Kuron」
ゲームは何でも好きで絵の才能もプロ並みの「若菜/Wakana」
音ゲーならだれにも負けない自信がある(と思っている)限界オタク「なる/Naru」
FPSゲームを得意とするが利敵行為を好んで行うサイコパスな「シン/sinn」
彼らは毎日夜十時から二時間ほどゲームの実況放送をする。
今日は若菜となるの二人で配信するようだ。コメントを見ると
──わかなるキターー!
──わかなる配信来るまで全裸待機してた
など楽しみにしてた人が大勢いるようだ。でもさすがに服は着ような。
おっと、そんなことを話している間にゲームが始まった。
『じゃあ今日はこのゲームで対戦していきましょー!』
なるが言うと同時に画面には有名なリズムゲームが映っていた。
『え?なるこのゲームってまさか……』
どうやら若菜はこのゲームに見覚えがあるらしい。それは俺達視聴者も同じである。なぜならこれはなるが大得意とするゲームなのだ。
『どうしたの?早くやろうよ!』
『……まじで?』
二人は一時間半以上ゲームを楽しんでいた。途中対戦して負けた方が一万円分ガチャを回すという勝負をして若菜が五万円をつぎ込んでいたのは最高に面白かった。まあ、なるはその画面を見て『相坂真琴ちゃんだ!!』などとオタクっぷりを見せていたが。
楽しい時間はあっという間に過ぎて二人がエンディングトークをし始めるとコメント欄には
──おつウィズ~
と発言している人がたくさんいた。これがwith usの終わりの挨拶だ。そういえば俺も今日は一回もコメントしていなかったな。せっかくだし言ってみるか。
俺はコメントを入力し送信した。
──おつウィズ~/kuron
──え?クロンいるじゃん⁉
──クロンずっと見てたのかよww
いつもは自分が言っている側だったが、たまには視聴者側で言うのは少し新鮮だった。