Part.7
教室に到着したと同時に、俺は自分の席に座った。疲れた。何だか、岩崎に元気を吸い取られたようだ。
「おはよ」
隣の席の住人、真嶋が声をかけてくる。
「何でそんなに疲れているの?」
「いろいろあったんだよ」
説明するのも面倒臭いね。説明したとして、どうせ理解できまい。俺とて、未だによく解らないのだからな。解るのは悪夢にうなされていたということだけだ。俺がな。「真嶋さんおはようございます!」
自分の席に荷物を置いてきたのだろう。岩崎が俺に遅れてこちらへ来る。
「おはよ。岩崎さん元気になったみたいだね」
元気になりすぎだ。
「はい。昨日はすみませんでした。携帯を忘れて外出してしまって。大変心配かけました」
「岩崎さんが元気でよかったよ。それで、どこに行っていたの?」
当然の質問だとは思うが、それは口に出してはいけない疑問だぜ、真嶋。
「はい、治療を受けていました」
「ああ、病院かあ」
いけしゃあしゃあと嘘をつくなよ。俺はそう思ったのだが、
「いいところでした。かなり手厚く看病していただきました。とてもいい気分で過ごせました」
それは嘘というより、岩崎流の感謝だったかもしれない。
「へえ。そんなところあるんだ?場所はどこ?」
「近いですよ。真嶋さんも病気になったら行ってみて下さい。真嶋さんもきっと気分よく病気を治せると思います。ただし、そのときは私も同行させていただきますが」
岩崎は人のよさそうな笑顔を浮かべているが、きっと心では舌を出しているに違いない。
真嶋は理解できない、といった感じで首をかしげている。
「俺がそこに行ったらどうなるんだ?」
「成瀬さんが行ってもこれといった利点はありません。別のところに行くことをお勧めします」
やっぱりか。そうだと思ったよ。
「そこってどういうところなの?人によって対応が違うわけ?」
「そうです。人によります。でも真嶋さんなら大丈夫ですよ」
俺は、不安そうな真嶋とかなり楽観的な発言をする岩崎の声を聞きながら、机に伏せた。身体がだるいし、眠いし、極度に疲れたしで、今日は最悪だ。授業中耐えられるだろうか。俺は嫌な予感に襲われながら、目を閉じた。何度も言うようだけど、俺の嫌な予感はよく当たる。