5話
場面は変わり最前線組がいる14階層。前線ではギルド江戸城のメンバーが指揮をとって着実に子分ゴブリンの相手をしていた。
いかに30階層を突破している前線組であっても数の暴力には少々苦戦している様子が見られる。
「おい!あのデカいのがキングゴブリンじゃないのか?」
ギルド江戸城のマスターであり個人ランキング2位のヤマトが言う。
「どうみてもそうね、あいつを倒せばイベント終了かしら?」
同じく個人ランキング2位のナナが子分ゴブリンの脳天にスピアを突き刺しながら冷静に分析する。
「僕が特攻してみるね~!(ボスボーナスいっただき~)」
両手にククリ刀を持って素早く特攻を仕掛けるのは個人ランキング4位の黒猫だ。
黒猫は盾持ちのガタイの良い男を足場にして飛んだと思ったら、子分ゴブリンを足場にしてキングゴブリンへと一直線に向かっていく。
「いってぇな!黒猫!」
叫ぶのは足場にされたガタイの良い男。ランキング7位の3丁目のおじさんだ。所属ギルドは町内会。
「メンゴメンゴ!」
そういいながら黒猫はキングゴブリンの首元へククリ刀を滑らせる。
「やったか!」
お調子者である黒猫だが、実力は確かだ。誰もがキングゴブリンを倒したと思った。しかし
「ぐおおおおぉぉぉおおお!」
キングゴブリンが叫ぶ。咆哮スキルだろうか。冒険者だけでなく配下である子分ゴブリンでさえも動きを止めた。そして大きな手で黒猫を掴んだと思ったら地面真下へ投げつけた。黒猫の姿が消えた。だれもが困惑しているとD-カードからアナウンスが流れる。
「初の死者が出ました。」
「当イベントでの死は現実での死というわけではありません。」
「死亡するとプレーヤーはダンジョンの外へ強制転移されます。」
「また、ペナルティとして装備を全ロスト。そしてダンジョンへ3日間入場できません。
「イベントでは安心して死んでください。」
「よかった。死んだわけじゃないんだ」
そうナナが呟いた。今まで前線で一緒に頑張ってきた黒猫が死んだわけではないことを知り安心している。
「おい嬢ちゃん。安心するには早いんじゃねぇか?あの黒猫が1撃だぞ」
3丁目のおじさんは苦笑いしながらキングゴブリンを見る。
「子分ゴブリンが6階へ侵入しました。キングゴブリンが強化されます。」
14階層に絶望のアナウンスが響き渡る。
「あれ以上強くなられたらやべえぞ!ナナ!俺に続け!ファイヤボール!」
今までいくつものピンチを潜り抜けてきた火魔法を使用してヤマトが叫ぶ。
「OK!スイッチ!」
火魔法からの視界を利用してナナがキングゴブリンへ攻撃する。
最前線攻略組のトップ2が繰り出す黄金パターンだ。
「よしっ!いった、、、、なっ!?」
ナナが勢いよく壁に飛んでいき、死亡扱いとして転移していった。キングゴブリンは虫を払うかのようにナナを手で払ったのだ。
おい、トップ2だぞ。
もう無理だ。
だれか突っ込んでくれよ。。。
い、イベントだから死なないらしいし。もういいんじゃない
冒険者の士気はゼロになる。
1人、また1人とキングゴブリンに倒されていく。
「子分ゴブリンが5階へ侵入しました。キングゴブリンが強化されます。」
「キングゴブリンが13階へ侵入しました。」
「子分ゴブリンが4階へ侵入しました。キングゴブリンが強化されます。」
「キングゴブリンが12階へ侵入しました。」
受付横にあるモニターではキングゴブリンが下位層へ向かって歩く姿が映し出されている。
「ゴブ、ゴブ、、、ゴブゴブリンガ♪」
子分ゴブリンが「ゴブゴブリンガ♪」というとキングゴブリンが
カメラにドアップされ握りこぶしを引き付けるようにして言う。
「Come On~♪」
「子分ゴブリンが3階へ侵入しました。キングゴブリンが強化されます。」
「キングゴブリンが11階へ侵入しました。」
「子分ゴブリンが2階へ侵入しました。キングゴブリンが強化されます。」
「キングゴブリンが10階へ侵入しました。」
「子分ゴブリンが1階へ侵入しました。キングゴブリンが最終強化されます。」
「キングゴブリンが10階へ侵入しました。」
「ギッ!ギッ!」
ん?なんか鳴き声が聞こえるな。
今回イベントに参加した冒険者は彼以外残っていなかった。
そう、1階層でスライムを狩り続けていた彼である。
D-カード
Name:マッハパンツマン
レベル:162
攻撃:351
防御:298
速さ:15
魔力:160