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喋るタマゴを(自称)天才魔導士が拾いました。

作者: フェイリー

異色すぎて受け入れられるかどうか…(汗)少女とタマゴのワイワイ劇場です。


空は青く晴れ渡り、季節は心地よい風の吹く木の芽時。

とくれば、普段は家に籠りきりな私も買い物に出るっきゃないわけでして!


「んしょっと。ちょっと買い過ぎちゃったかな~。」


両手いっぱいの紙袋を抱え直す。うん、我ながら買いすぎたわ。



独り言を楽し気にもらす少女───アプライトは、はっきり言って相当に奇妙な格好をしている。

本人は金色の長い髪をポニーテールにした、好奇心旺盛な大きな紅赤の瞳の可愛い16歳の少女。

しかし。臙脂色のチョーカー。金の縁取りの臙脂色のドレスとローブが合わさったような服は動きやすいよう腿の辺りで前がガッツリと開いている。両肩には留められた白いマント。指先の出る黒い手袋に、黒いタイツと金の縁取りがされた臙脂色のロングブーツ。頭の上には輪っかのような変わった形の帽子まで乗っている。

貴族どころか庶民の女性でもドレスを着て足を見せないのが常識とされるなか、完全に常識から外れた格好をした少女だった。




「ああ、でも至福の重み~♪新しい魔導書~♪新しい調合材料~♪帰るまで待っちきっれな~い♪」


別に変人じゃないよ?ちょっと浮かれているだけさ。

郊外に建つ私の家まではもう少し。周りを草原で囲まれた家は、静かだし騒音を立てても良いしで良い所なんだけど、買い物に行くのが大変なのが玉に瑕かな。


私は魔法や魔法具を作ったり、魔法を研究したり、新しい魔法を開発したりする魔導師なのだ。色々と騒音が出たりもするから、街中に住めないんだよね。

ちなみに元になる武器とかさえあれば、魔法剣とかも作れたりする。

これが出来るのは上級魔導師の証!ふふんっ


つまり!私は、天才魔導師だ!!


「んふふふ~♪材料もたんまり買ってきたし。毒にしようかなー、それとも爆弾にしようかなー?」


よく求められる依頼品の多くは薬や日常用品だけど、貴族には毒、騎士団なんかには爆弾なんかも売れる。もっとも滅多に出ないし簡単に売ったり出来ない代物だから滅多に作れないし、その数少ない機会もほぼ研究の為に作るだけ。

今回はその数少ない機会!品質を研究しようかな~、それとも効力を研究しようかなー♪


『殺人計画でも練ってんのか?』


「失礼ね、あくまでも研究の為に作るのであって、純粋なる知的探究心を満たすためよ!」


『オレには嬉々として爆弾投げそうに見えるがな?』


「そりゃ爆発騒ぎは学生時代にちょこーっと、若気の至りとゆーか、お茶目で何度かやったけどぉ。」


『やったんかい。』


「でも爆弾は投げてないわよ!実験で爆発しまくった……だけ……で?」


あれ、私さっきから誰と喋ってるの?

周りは背丈の低い草が生えてるだけ。見回しても誰かが隠れてる様子もない。


「って誰よさっきから!?」


『気づくのおせーよ。下だよ下!』


「下?」


見ると足元に小さな小さな………、


「……何コレ。タマゴ?」


見たとこメダカの卵よりちょっと大きい程度だけど……、形は卵だ。鶏みたいに殻がついてるし……。

鳥の卵?爬虫類の卵?


「いやでも小さすぎ……。変な卵ね?」


『うっせーよ!』


………。


「……い、いったいナニになるのカシラ……?」


『オレ様は世界の覇者となる!』


………………。


「イ───」


『い?』


「イッヤァァァァ!!??た、たまごがっ!?

 タマゴがしゃべってるぅぅぅぅぅぅっ!!??」


信じられない!卵だよ!卵が喋ってたよ!!

明らかに声の出どころは私の足元、メダカなサイズの卵から発せられてるよ!?


『いちいちうるせー奴だな。近所迷惑だ。』


「ご近所は四方1キロはいません!ホント何なのよこのタマゴ!?」


『うむ。話せば長くなるのだが―――』


「話さんでいい!」


『オレ様の部下が、うっかりオレ様をここに落としていってしまったのだ。』


「ガン無視!?タマゴの癖に生意気だ!!」


『奴が現れん以上、自分で身動きがとれん。という訳で、貴様がオレ様の面倒をみろ!』


「意味がわからん!何で私がそんな事しなきゃなんないのよ!?」


タマゴの世話ってなんだ!?徹頭徹尾、意味がわからん!


『世の中、助け合いが重要だぞ!』


「だからなんで……、ん?もしかして今、ピンチなの?」


『う゛。』


図星だったらしく言葉に詰まるタマゴ。


『ま、まぁ……そうとも言うな。』


「ほほ~ぅ?」


ついついニマァっと口角が上がる。

いやいや、ふと気づいたんだけどね?

この存在自体が面白いタマゴ。中々研究しがいがあるんじゃない?いやいや、なんなら研究材料にだって……?


「まぁ助けてあげてもいいけどねぇ~?どうしても、って言うならねぇ~?」


『いい性格してんな、お前。』


「よく言われる。どうすんの?アプリコット様、助けてくださいってお願いするぅ?」


『くっ!タマゴを恫喝する女め……。お、お願いします。助けてください……。』


「ふふん、いいわよ!(いい研究材料になりそうだし)」


『……今なんか不穏なこと考えなかったか?』


「気のせいよ!!それでアンタ、名前は?」


『まだねーよ。生まれてねーんだから。』


生まれてないのに意思があって喋るとか斬新だなー。そういやどうやって喋ってるんだろ。持ってる知識とかどれくらい?タマゴの部下ってなんだ?

いやいや全く疑問が尽きないタマゴだね!研究しがいがあるね!


「名前がないと話しかけにくいわね。そうねぇ……タマゴでどうかしら?」


『まんまじゃねーか!却下!!』


「えー。わかりやすいのに…。じゃあ、ルフナ?」


『……お前、ネーミングセンスないなぁ。』


「なんですってぇぇぇっ!?」


ぶち割ったろか、このタマゴ!!


『ま、それで我慢してやるよ。しばらくお前の世話になるみたいだしな。このオレ様に感謝しろ。』


「割るわよ、くそタマゴ。」


『ごめんなさい。』


足で踏みつぶしてやろうとしたら、即座に謝ってきた。案外と素直な卵だな。


―――こうして。私は自宅近くの辺鄙な郊外にてこの喋る超絶変なタマゴ、ルフナと出会ったのだった。……研究価値が高そうだし、売っても高そうだしいい拾いモンだと正直思った日でした。





謎のタマゴを拾ってから2か月程。

あいっかわらずのメダカのタマゴサイズに、絶対無くしたり割ったりするわーと思った私。

対策として風の魔法でルフナを保護してみた。


具体的にはルフナの周りに常に弱い風を吹かせ、衝撃を和らげてやっている。弱い魔法とはいえダラダラと常に使い続けるのは疲れるけど、これで家の中なら割れる心配はないし見失っても魔法で手元に戻すことも可能!


「ふっ、これぞ私の実力!術式を弄って弱い風で浮かせ続けるなんて、そんじょそこらの魔術師には出来ない天才の御業よ!」


『ふむ、オレ様の下僕はなかなか優秀だな!』


「ほほほほほ。摘んでプチッとつぶれるか試してみる?」


『……下僕呼ばわりしてごめんなさい。』


この通り、ルフナも感謝しているようである。


「大変だったんだからー。強過ぎたら割れちゃうし、何度もウズラの卵で実験したのよ?」


『まてアプライト。確かお前、ここ一週間程タマゴかけごはんを食べてなかったか!?』


「割れた卵は食べないと勿体ないもの。いやー、ウズラの卵では最終的に成功したけど、メダカの卵サイズのあんたにもうまくいって良かったわねー♪」


さすが天才!どうしてルフナは無言なのかなー?タマゴの癖に震えるなんて器用だね!




また一か月程経ったある朝は、ちょっと驚かされた。


「ふぁ~。るふなー、おは・・・・・・っ!?」


『……んあ?ああ……おはよ。どーした、オレ様を指さすな。』


「だ、だ、だ、だって!!あんたっなんか、大きくなってるわよ!!?」


ルフナがメダカのタマゴからウズラの卵にたった一晩で進化していたのだ!これが驚かずにいられますか!


『何っ!?……おおっ!世界の覇者となる未来に、また一歩近づいたな!!』


世界の覇者ってなんだ。タマゴ界の覇者か?と脳内でツッコんだけど、それよりも私はショックを受けていた。


「なんてこと・・・!一晩で一気に、メダカの卵からうずらの卵に昇格するとは思わなかったわ。事前にわかってたら一晩中、喜んで観察してたのにっ!」


『誰がうずらだ、このヤロ。』



更に3か月後には、いきなり鶏のタマゴサイズに進化していた。


「今度は一晩で一気に、うずらから鶏の卵に昇格かぁ~。くっそー、事前にわかってたらっ!!」


『誰が鶏だ、オイ。だが世界の覇者となる未来は、もう間近だな!!』


「ニワトリ界の王になったら、私に毎日タマゴを1個献上してね。」


『だ・れ・が!ニワトリだっ!!』




ま、こんな感じでそこそこ仲良くやってたのよね。

ルフナの研究自体はなかなか進まなかったけど(割っちゃダメだし)、観察だけでもなかなか面白い。正体がさっぱりわからないけど、邪悪な存在とは到底思えなかったし。阿保だし。バカだし。

毎日バカな会話を繰り広げていると、情もわいてくるってもんだ。


「あんたを拾ってもう10か月か。……そろそろ検卵とかしたら中身みえたりしない?」


『するかアホ。』


「アホじゃないわよ!普通は見えない方がおかしいの!!」


今日も今日とておバカな会話を繰り広げる。





エラソーで、我儘で。


かと思えば脅すとあっさり謝って、なんだかんだノリのいいタマゴのルフナを気に入ってた。


ずっと一緒にいられたら楽しーだろうなーって思ってたのよ。



───この数か月後。

コイツを迎えにとんでもない人物がやってきたり、しゃべる鶏の卵ぐらいにしか認識してなかったコイツが、まさかの人型……それも10人中10人が振り返るような美形の姿になるなんて。


だ・れ・が!! 想像できるのさっ!?

かつて作っていた自作育成ゲームのシナリオ、そのプロローグ+αを手直しした作品です。勿体ないから短編であげちゃいました(笑)

一応、この後は恋愛になったりしなくもないんですよ…相手タマゴですけど!

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