特異ナンバー九九九
某財団リスペクトの作品。一応被らない様に注意はしていますが、支部が多すぎて全ての把握は不可能です。因みに見ているのは本家と日本だけなので、それ以外の国で何かが被っても偶然だと思って下さい。
『おはようございます』
機械音声の一言で、オレは意識を覚醒させた。シーツと毛布だけがある簡素なベッドから飛び降りると、機械音声の続きが再生される。
『今朝の体調はどうでしょう。優れない様でしたら、ドクターの診察を受ける事をお勧めします』
この温もりを感じない音声にも、直に慣れなければならないというのに、まだまだ違和感を覚えてしまう。オレは入り口の横にある日記帳に今日の夢についてを記述する。
と言っても、何も見ていない。または見ていたとして、覚えていない。
『何も無かった』と書き終えた後、オレは鏡の前に立って、身だしなみを整える。ファッションに疎い俺にとって、服のセンスなどはどうでも良かった。ハンガーに掛けられた白衣を取り、翻しつつ背中に回して着用する。机の引き出しから一枚のカードを取って、ポケットに押し込んだ。
忘れ物は?
やり残した事は?
無い。オレにやり残した事があるとすれば、それは真っ当な生活を送る事くらいだ。けれども後悔はしていない。これはオレ自身が選び、そしてオレの親が受け入れた現実だ。これからオレが生きるのは非日常の世界。他でもない非常識のオレが、常識を持って生きるなどおかしな話だ。今の価値観は努めて早急に捨てなければならないだろう。
オレが部屋を出ると、見慣れた人物がそこに立っていた。
「おはよう、特異ナンバー九九九。貴方の報告書が完成したから、特性記述の所。間違いがないか、目を通してもらえるかしら」
特異ナンバー九九九は天岬幸太として知られていた十六歳の少年で、身長は一メートル七十センチ、体重は六十キログラムです。九九九の背後には、既存の科学技術では検知出来ない未知の存在が隠れており、その姿は後述の特異性が発現した瞬間、肉眼でのみ確認出来ます。
九九九は自身に加わる危害の程度を問わず対象を類似した方法で殺害します。程度が軽ければ対象が死亡するまでの時間は長引き、重ければ周囲への被害と共に対象を殺害します。この為、九九九の特異性の限界を調査する実験は推奨されません。尚、この際の危害が過度で九九九が即死してしまった場合は、九九九は蘇生します。復活には七秒間を要します。この状態変化を、九九九は「水面から顔を上げたみたい」と述べています。
また、この特異性は九九九自身には制御できません。例外的に、九九九自身が要因で引き起こされた危害には、この特異性は反応しないようです。
「間違いは無いですね。僕の特性そのままですよ」