92話『密談 7』
今回のエドワード視点ラストです。
僕が今から話すのはタイムリープした後の話だ。
「僕とナナリーがフードの女に出会ったのは
ちょうどエミリアがヴォルステイン領に戻っている時だったよ。
王都の郊外に僕とナナリーはコンラートの狩りに誘われたんだ。
そして、狩をする森の中で獣に襲われたフードの女を見かける。
その傷はすぐに治療しないと助からないほどの怪我で……。
ちょうど、傍にいたナナリーが治癒の力で癒してあげるんだ。
一命を取り留めたフードの女は、ナナリーの侍女として
ランゲス家に引き取られた。
それから、ナナリーとフードの女は常に一緒にいたよ。
フードを被っていた理由は火傷を隠すためだって言ってた。
名前は一族の掟で生涯使える人物にのみ教えるっていう理由で、
彼女の本名はナナリーしか知らなかったよ。
けれど、それだと僕達も呼びにくいからって、
ナナリーがリリアと名前をつけてあげたんだ。
そして今回……フードの女が母上を狙っていることを僕は知っている。
だから、コンラートの狩りにはナナリーは同行させなかった。
コンラートと分かれて獲物を探すフリをして、彼女の元に向かった。
彼女の瞳は期待に満ちた目で僕を見ていたよ。
だから、僕は彼女に言ったんだ。
『君の企みを知っている。ナナリーはここには居ないよ』って。
目の前で倒れている女性は体中から血を流しながら、
僕に怨嗟の言葉を投げかけた。『お前もか』って
何度も叫んでいたよ。
表情はフードで見えなかったけれど。
僕は冷たくなっていく彼女を見つめ続けた。
僕の心は彼女に対して何も思わなかったよ。
それだけ、僕は彼女に怒っていたんだろうね」
僕は紅茶に手を伸ばして一息ついた。
「それじゃあ、もうリリーナであるリリアは存在しないってこと?」
妹の疑問に僕は頷いた。
「そうだね。
でも、ベリアルはそうは考えてないんだよね?」
頷くベリアル。
「これは、私の想像で考えた仮説だ。
あまり当てにはしないでくれ」
疑問をうかべる妹に、ベリアルは答えた。
「私の考えは、リリーナという肉体の悪意は滅ぼしても
どこかで転生しているか、その記憶を持った人物が
現れているかのどちらかだと思う」
ベリアルの説明に考え込む仕草の妹に言葉をつけたす。
「それか、ナナリーを隠れ蓑にして
本命はどこかでこちらの動きを見ているか。だったよね?」
僕の言葉にベリアルは頷き、妹の表情は険しくなった。
「少し休憩にしないか?
エミリアも、聞いた話を纏めたりしたいだろう?」
ベリアルの言葉に僕と妹は頷いた。
そして妹は寝室に向かった。
ベリアルが自分の侍従に何か合図を送ると、
猫目の侍従がクッキーが並んだケーキスタンドを運んできて
すぐに下がっていった。
クッキーをベリアルと堪能していると、紙とペンを持ったエミリアが
戻ってきた。
エミリアの持ってきた紙は数枚あり、その中には『ゲームの知識』と
書かれた紙も混ざっていた。
僕はそれを手にとって読み始める。
「話の要点を纏めようと思います」
妹とベリアルは、真新しい紙にペンを走らせていた。
エドワードは[リリーナを見捨てた。]
これは、エレノアお母様と同じ行動をしていたんですよね。
やっぱり親子なんですねぇ。
(なにこの親子、怖い。白目)
次はエミリア視点に戻ります。




