89話『密談 4』
エドワード視点です。
僕の話をするのは、エミリアには初めてだ。
ベリアルにも詳しくは、話していない。
僕が打ちあける、本当の内緒話だ。
僕が経験したタイムリープ前の話。
「まず、話しておかなきゃいけない重要な部分は前回と今回では
まったく違う展開を進んでいるってこと。
それを踏まえたうえで話すね」
僕の言葉にエミリアもベリアルも不思議そうな顔をしている。
「まずは、前回の世界の話をするね」
僕は、頷く2人に語るように話し出した。
「僕は前回の世界で、エミリアのことを嫌っていたんだ。
嫌っていた。いや、違うかな。嫌うように仕向けられていたが正解かな。
天真爛漫なナナリーとその周りを飛び回る妖精。
そして、謎のフードの女、リリア。
リリアはナナリーの侍女だった女性の名前だよ」
謎のフードの女リリア? と呟く怪訝な表情の
エミリアを無視して、僕は続ける。
「ナナリーが学園で辛い事があると、全てエミリアのせいになったよ。
思えば、彼女達に僕はそう思い込まされていたんだ。
リリアが持ってくる証拠の数々からエミリアの犯行が証明され、
カインの推理通りの展開で、
エミリアが現行犯として捕らえられる場面もあった。
エミリアは最初は自分ではないと言っていたけれど、
だんだん何も言わなくなっていった。
今にして思い返してみると、全部否定されるのだから
言っても無駄だと思うように、なっていたんだよね」
僕は隣に座るエミリア、いや、妹を見つめる。
妹は苦笑いだった。
「そして卒業式間近。
僕とナナリーが呪われていることをリリアから教えてもらったんだ。
その呪いを解除する方法が記された『白魔法の文献』。
リリアが教えてくれた『白魔法の文献』は、
王族の宝物庫に眠っているらしく、探し出して見つけたんだ」
『白魔法の文献』のことはエミリアは記憶に無いと言っていた。
隣を見ると、場所を教えた瞬間にハッとしていた。
「その文献には、一つだけ魔法が載っていたよ。
それも異世界の言葉で書いてあったんだ。
妖精リリンとリリアにしか読めないその文献の魔法を
ナナリーは必死に覚えていた。
『白魔法のリフレクト』
呪いを相手に返す呪文だと、リリンとリリアは言っていた。
ただし、使えるのは返す相手が目の前に居ないと使えないらしい。
僕とナナリーは卒業式のパーティの時にリフレクトを使う事にした。
僕はパーティでエミリアがしてきたことを断罪し婚約破棄したんだ。
ナナリーは覚えた呪文で僕と自分にかかった呪いをエミリアに返した。
ナナリーの放った魔法は波動となり、
僕とナナリーの体から抜けるように黒い煙が立ち上りエミリアに向かった。
エミリアは目の前で苦しみ出したよ。
助けを求めるように手を伸ばされたけれど、僕はその手を取らなかった。
ナナリーを庇うように抱きしめていたからね。
しばらくの間エミリアは苦しんでいたけれど、
我慢して立ち上がり、僕達に微笑んだ。
そして、美しい淑女の礼をして会場を出て行ったよ。
あの時のエミリアは、どんな気持ちで僕達を見ていたんだろうね」
僕は一度深呼吸した。
「お兄ちゃん、一度目の私の最後ってどうなったの?」
エミリアはうつむいたまま疑問を口にした。
「後から、エミリアの侍女達に聞いた話だと、
エミリアの最後は王都のヴォルステイン家の別宅の玄関前で……。
侍女が支えて馬車を降りた瞬間に息を引き取ったって……」
僕は、隣のエミリアを窺う。
妹はワンピースタイプの学生服をぎゅっと握り締めていた。
その手は力が入りすぎて、真っ白くなっていた。
僕はそっと、エミリアの手に触れる。
握られた手がすこしだけ開かれる。
「卒業パーティの会場で、エミリアが居なくなって、
僕とナナリーは浮かれてしまっていた。
酷いことに、これで僕達の邪魔をする者は居なくなったと喜びさえしたよ。
けれど、そう上手くいかないのが人生だ。
ここは小説や漫画のような、ご都合展開な世界ではないんだ。
一方的な婚約破棄をしたあげく、エミリアを害してしまった。
そんな僕達が、幸せになれるわけがない。
その後は、ゲームで言うところのハッピーエンド……
にはならなかったよ―――」
僕は続ける。
まだ、話は始まったばかりだ。
話さなきゃいけない事はまだ、あるのだから。
次回もエドワード視点です。
『ゲーム』の『その後』の話です。




