72話『両陛下との会話 1』
ラナー様とアスト殿下登場回。
表現の誤字を修正しました。
『妖精』部門のショーは何の問題もなく進行した。
マリエラたちは、優勝は逃した様だが目立つ格好で注目度は高かった。
特に、より妖精らしい格好の3人がゲッソリしていたので、
まさに妖精を捕食せんとする植物の図だった。
審査員と観客達は、驚愕していた。
『モンスター』部門も順調に進み、天候のせいで雷雨になったおかげで
雰囲気抜群だった。
私達、ヴァンパイアトリオは優秀賞になった。
優勝は、マリエラとレヴァンヌだ。テーマは『植物モンスター』。
モンスター部門でも応募していて、ちょうどよく雷に反射した斑模様が
会場に居る観客の心を振るわせた。
何か仕掛けを仕組んでいたようで、蔓や帽子が淡く光り、蠢いていた。
血糊を付け足していたので、まさしく、植物モンスターにふさわしかった。
こうして、仮装ショーはつつがなく終わった。
ショーの次は、ダンスパーティである。
こちらも、部門わけで行われるので、ナナリー達とは別行動だ。
もちろんマリエラ達もモンスター部門にいる。貴女達、妖精だったのでは?
立食形式の会場内で、私と殿下とベリアル様は、国王夫妻に挨拶に向かう。
アスト国王陛下は、金の前髪をオールバックにし、
式典用のロングコートを着ている。ラナー様の乗った車椅子を押していた。
ラナー様は、水色のハイネックのドレスはふんわりしていて、
全体的にラナー様の肌を隠している。
「国王陛下、王妃陛下、ご機嫌いかがでしょうか」
エドワード殿下が声をかける。
両陛下に私とベリアル様も、挨拶をした。
「ねぇ、エミリアちゃん! 今日のショーはすごかったわね。
皆でゆっくり話したいから、談話室に行きましょう!」
ラナー様の提案で談話室で会談することになった。
パーティはいいのかって?
2人はもともと、息子とその将来の嫁にあいさつしたら
疲れたことにしてさっさと切り上げる予定だったそうだ。
なんというか、自由なお二人だった。
談話室にて。
侍女達にお茶を用意してもらい、会話を開始する。
先に口を開いたのはラナー様だった。
「そういえば、渡したいものを忘れてしまったわね。
エドワード。私達の部屋から箱をもってきてちょうだい」
ラナー様は、学園の来賓室のことを言っているのだろう。
エドワード殿下に頼むとは、従者達でもいいのでは?
とか思ったけど、名指しされたのならしょうがない。
「箱ですか? 母上、どの程度の大きさの箱でしょうか?」
「机の上に置いていたからすぐに見つかるわ。
部屋の前の騎士にも後で取に来ることを伝えていたので
きっと大丈夫でしょう」
「わかりました」
ここから来賓室まではかなり遠いぞー。
庭を通って反対側の校舎に向かわなければいけない。
雷雨のせいで、馬車も出せるかも心配だ。
エドワード殿下は、教養の教室の隣に設置されているドレスルームで
着替えてから行くようだった。
「それでは、行ってまいります」
現在部屋には、アスト国王陛下とラナー王妃陛下、私とベリアル様だ。
「マリエラちゃんとエレノアから聞いたわよ」
薄く笑っているラナー様の表情が怖い。
「エミリアちゃん、前世の記憶、思い出したそうね?」
やっぱり、その話をするために、エドワード殿下を追い出したのか!
でも、アスト陛下はいいのかな?
チラリとアスト陛下を見ると、微笑みを深くされた。
イケメンー!!
エドワード殿下を大きくしたイケメンー!! まぶしー!
「えと、そのことで両陛下にご相談が」
私は、前世の記憶と、ゲーム知識を両陛下に語った。
「婚約破棄だって!? まったく、あの馬鹿は何を考えているんだ!!」
とはアスト陛下の声だ。
「貴方、落ち着いて」
ラナー様は落ち着いているようだけれど、目が怒っています。
「それで、ベリアル陛下もお手伝いされているということね」
「ええ」
確か、両陛下とベリアル様って親友だったよね?
王自らヴェルマと国交しているってお父様が言ってたっけ。
「マリエラちゃんから聞いた通りね。
エドワードの事も考え直さなきゃいけないかしら?
あの子の態度は、王宮でも目を瞑りたくなるものも多かったし」
エドワード殿下の過去のイタズラの件だね。
「最近のエドワードは変わってきている。
彼にも、チャンスを与えるべきだと私は思うが」
とはベリアル様の言葉だ。
確かに。エドワード殿下少し変わったよね。
ベリアル様が編入してきた日の、あの馬車の時から少しずつだけど。
「そうなの? ではあと2年、あの子がちゃんとしていれば
王太子の座を弟に譲ろうとは思わないわね」
わぁあああっつ!? ※What's!?
なんてこったい! エドワード!
貴方、あの傍若無人なままなら、王太子の座を降ろされるところだったよ!
私はことの重大さに戦慄した。
続きます。




