5話『学園入学から今に至るまで。』
やっとヒロイン登場です。
説明不足、脱字や誤字があるかもしれません。
時間を遡って話すなら、入学から1ヶ月ほどたったときだった。
まず、学園は全寮生で、貴族区画と一般区画などに分かれている。
学園の詳しい話はまた今度するとして、うーん……。
そうね、あれはヒロインであるナナリーがエドワード殿下と
よく話すようになった時から。彼女の噂が校内に広がっていた。
「彼女は、婚約者のいる殿方に言い寄っている」
「彼女は、多数の殿方と関係を持っている」
「彼女の母親は娼婦である」
などなどだ。
一般的に、目立つ人物にとっては広がりやすい噂だったので
最初のころは、私もあまり気にしていなかった。
でも、しばらくして、エドワード殿下が私のところに訪れた。
取り巻きの友人2人(攻略対象)とヒロインを引き連れて。
彼女は殿下にピタッとくっ付いて、私から隠れるようにしていた。
彼女、ナナリー・ランゲス男爵令嬢はとても可愛らしい方だった。
ピンク色のゆるふわショートボブに白い雪の結晶のような髪飾りをつけていた。
髪よりも濃いピンクの瞳も大きく常に潤み、
保護欲を引き立てられる印象だった。
成長したエドワード殿下は物語に出てくるTHE王子という見た目で
毛先だけクセのある金髪の貴公子だ。
ブルーサファイアの切れ長の目と整った顔立ち。
そこにいるだけで、女性達を虜にする甘いマスク。
2人は、恋人のように寄り添っていた。
中庭の東屋前での出来事である。
「エミリア!」
少しだけ目じりをわずかに上げて、エドワード殿下が声をかけて来た。
「ごきげんよう、エドワード殿下。それに、皆さんも。何か御用でしょうか?」
タジタジの様子の取り巻きを無視し
淑女の礼をとり、微笑みながらあいさつをする。
「っ……。エミリア。彼女の悪口を広めるのをやめてくれないか」
少しだけ動揺したらしいエドワード殿下の言葉にハテナマークがうかぶ。
首を少しかしげる。
「なんの、ことでしょうか?」
訳がわからなかった。
私の言葉に、ナナリーはうるうるしながらうつむき、殿下の袖を掴む。
エドワード殿下はさらに目じりを上げて、少しだけ強めに言った。
「君が、ナナリー嬢の噂を流していると聞いた。
上流貴族である君が、ナナリー嬢のことをよく思わないのもわかる。
だけど、エミリアは将来、僕の隣に、王妃になるんだよ。
王妃は、国民を差別してはいけないよ。だから、悪口を広めないでくれ」
困惑はますます深まった。
「私ではありませんわ。
私がナナリー様の噂を流したという証拠は?」
「ナナリーが廊下で君の友達が言っていたと」
チラッとナナリーを見ると少しだけ口角が上がっていた。
思い出しても、まじ、はらたつ。
「もう一度言いますが、私ではありませんわ。
よく知りもしない人の話を信じたというのですか?
婚約者である、私を信じては下さらないのですか?」
私は怒っていた。目じりを上げたつもりだったけど、
たれ目のせいで、いつも悲しんでいるような印象になってしまう。
動揺しかけたエドワード殿下だったが……
「いいんです!!エド様!!悪いのは私なんです!!」
急に、淑女にあるまじき大声をあげたナナリーに思わずビクリとした。
ナナリーはエドワード殿下の袖にしがみつく。
「私が、たくさんお友達を作るのに必死で……
もともと、庶民だから。馴れ馴れしい態度が、鼻につくって……。」
そういってナナリーは、ぐすぐす泣き始めた。
この時の私は、困惑の表情のまま、
泣かれたことや、淑女らしからぬ彼女の言動に動揺していたんだとおもう。
それに、エドワード殿下に気安く触れるナナリーに胸がざわついていた。
というか、思い出したのだけれど、婚約者でも恋人でもない殿方の名前を
愛称で呼ぶってどうなの?
「申し訳ないのですが、私、次の授業の準備があるので失礼しますね」
そのときの私は、逃げるようにその場を去った。
彼女が、エドワード殿下に触れる姿を見たくなくて。
それからの学園生活は地獄だった。
ナナリーに何かあれば、すべて私のせい。
学園にある王族専用の執務室にまで呼び出される始末。
王族と関係者以外入れてはいけない場所に取り巻きとナナリーがいた。
王族専用の執務室には、エドワード殿下用の重要な書類がおいてある。
それらの書類は一般人には見せられないものばかりだからこそ、
学園では王族専用の執務室が設置されているのに。
そして、その殿下用の公務の書類を片付けるのはいつも私の仕事だった。
書類の締め切りも迫っていた。頭が痛い問題ばかりだった。
私は、水晶にストレスと憎悪を溜め込んだ。
悪魔にあの2人を呪うことを望んで。
誤字、脱字、説明不足など訂正していっています。
よければ、読み直ししてくださると嬉しいです。
補足
取り巻きの友人の(攻略対象)は、ヒロインであるナナリーの攻略対象という意味です。
2人の詳細な情報が書かれていないのは、
エミリアが記憶を思い出す前で、相手を知らなかったからです。
『2人は、恋人のように寄り添っていた。』
この部分は、エド王子の隣にナナリーがくっついていただけですが、
嫉妬フィルターのかかったエミリアには恋人同士のように見えたんでしょうね。
あくまで、エミリア視点での話です。