36話『喪女でウブ』
によによ展開です。
またしても、醜態を晒してしまった。
魔王ベリアル様はとっても優しい笑顔で隣に座っている。
そして、手を繋いでいる。
え……これなんなの?
手を繋いでいる。そう、手を組むように繋いでいる。
いわいる、恋人つなぎである。
ボフッと顔が熱くなる。
自分で言っておいて赤くなるとか、私ってウブー。
私は、自分の熱をごまかすためにベリアル様に話しかける。
「ベリアル様って、変わってますよね」
なにその顔、どういう気持ち?
ベリアル様の表情が私には読めなかった。
驚いてるような?うれしいような?
例えると、富士山の山頂から見た景色を眺めたときにする表情かな。
ほわわー!って感じ。なに言ってるんだ 私。
「変わっているのか?
自分ではわからないな。どういうところか聞いても?」
ベリアル様は、うれしそうに聞いてきた。
さっきのも、きっと無意識だったんだろうなぁ。
なんて表現しようか。
「ベリアル様は、優しいです。でも、厳しいです」
親指の腹で私の親指を撫でないで頂きたい。また顔に熱が!
「それで?」
「別に、叱られたのが嫌とかではなくて、
なんていうか……その…………」
言葉にしがたい感情に戸惑う。叱られて、うれしいだなんて。
馬車の中のエドワード殿下もこんな気持ちだったのかな?
『大丈夫――私は、君の味方だ――』
ボフン!と顔に熱がこもる。
~~~っなんって、恥ずかしいセリフを言えるんだこの魔王はっ!
形容しがたい感情に翻弄される。
「わかった。私でよければ、いつでも叱ってやるぞ」
ふぁっ!??? 心を読まれた!?
「私は、ただ、エミリア嬢が心配だっただけだ」
ベリアル様は、体ごとこちらに向けて顔を覗き込んでくる。
手は持ち上げられて、繋がれたままだ。
私の体温はものすごく上昇中であります!
「君はあのままだと、いつか自分の感情に押しつぶされていた。
吐き出せるときに吐き出しておいたほうがいい気持ちもあるのだ。
君が元気になってくれて良かった」
ベリアル様はそう言って、私の手の甲にキスを落とした。
ボフン!!
この後、頭がパンクして私は気を失った。
知恵熱ってやつですかね。
気が付いたら夜になっていて、ベリアル様とポアソン君は
自分の部屋に帰ったあとだった。
無理もないよ。イケメン耐性なんて皆無だもの……。
前世では忙しくて、19歳まで喪女だった者さ……。
私は、その日ずっと、によによ顔の侍女達を見るたびに、
顔を赤くするのだった。
皆さんは気づかれたでしょうか?
エミリアが、ベリアル様のイケメン対応に
ふざけたリアクションを取るのは照れ隠しのためです。
私の友達のR氏は、照れ隠しで相手の男性にすぐに手を上げていました。
彼氏にからかわれる→ もー! パシ!パシ! てな感じでした。




