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親子そろって悪役令嬢!?  作者: マヌァ
学園生活開始~学園祭。
33/232

32話『馬車の中の友情』

土日は更新速度落とします。




貴族食堂に向かう馬車が動き出してからは、馬車の中は少し不穏だ。


席順は扉側にエドワード殿下、隣に私で向かいの席にベリアル様だ。

上級貴族の馬車もそうだが、王族専用の馬車はさらに豪華だ。

深緑のなめし皮で貼られた室内は冬でもあったかそう。

ふかふかの座席にはつる模様の刺繍が。幅は子供が横になれる広さはある。

言い例えるなら、動く大きな宝石箱だ。

従者達は、馬車の後ろについている従者用のスペースに座っている。


黙っていたベリアル様が殿下に視線を向けて言った。


「エドワード王子。こんな事を言うのは失礼だと承知しているが

 先ほどの少女は貴族のマナーや常識を理解していないのか?

 彼女は『お友達を増やす』と言っていた。

 エドワード王子は、その『お友達』なのだろう?

 もっと、淑女しゅくじょらしく振舞うように言ってあげないのか?」


おおぅ。

痛いところを付いてくるベリアル様の言葉にエドワード殿下は

貼り付けていた微笑が一瞬だけ崩れた。


「わ、私も以前から彼女には注意はしています。

 ですが、彼女は純粋で。それが彼女の長所でして……。

 元々庶民だからと、めげずに彼女も頑張っているんです。」


婚約者の前で他の女性の長所を口にするとはエドワード殿下……。

まぁ、別にいいけどね。そのうちこっちから婚約破棄してやる。

そんな様子の殿下に対して、ベリアル様は鋭い目線で言った。


「長所だろうがなんだろうが最低限のマナーや常識は必要だ。

 下級とは言え、アレは貴族に連なるものの態度とは思えない」


アレって言ったよ!?

だけど、もっと言ってやってくれベリアル様!

私が言っても聞かないんだ。


「貴方も、そんなことを言うんですね」


エドワード殿下は一瞬、私をチラ見して悲しい表情になった。


(悪かったですねー。口うるさくてー。)


「当たり前だろう。エドワード王子も私もあの少女も立場は同じだ。

 将来、国や領に関わる立場だ。それ相応の責任を背負う。

 私とエドワード王子の場合は国の頂点だ。

 民や官僚たちが自分達に接してくれる態度は、将来への期待の現われだ。

 君の食事や衣服だってそうだ。民達の税金おもいで出来ているんだ。

 それは、ただの貴族でも王族でも違わない」


ベリアル様の厳しい言葉には重い責任への説得力が篭っていた。


たしかに、貴族とは、国から領地を預かって領民の税金で暮らしている。

貴族なら、貴族としての振る舞いをしなければならない。

責任を、領民の想いを還元しなければならない。

それは、どんな理由であれ暮らしと同等の対価を支払う義務があるのだ。

ナナリーの場合は、貴族としての常識やマナーを振舞う義務が生まれている。

(領地経営うんぬんは、領地をついでからの話だ。)


てゆーか、ここまで重い会話になるとは私は思ってなかった。

それにしても、ベリアル様が輝いて見える。まぶしー。



「そう、ですね。

 ありがとうございます。ベリアル王子」


顔を上げたエドワード殿下の顔は晴れやかにスッキリしていた。

殿下の中でなにか変化があったのだろう。

そのあと、馬車の中の重たい空気は消えうせ、

国について語り合う殿下とベリアル様。


貴族食堂についた時には、

ベリアル様に尊敬の眼差しを向けるエドワード殿下が完成していた。



「ベリアル、こちらですよ」


「エドワードのオススメの料理があるのだろう?」


「ええ、それは―――」


エドワード殿下とベリアル様は打ち解けていた。

呼び捨てで呼び合うほど、めっちゃ仲良しになってしまっていた。


エドワード殿下は、もしかすると周りからの将来の期待に

不安を感じていたのかもしれない。

イタズラをするのは、その期待を少しでも紛らわすためだったとか?

そして、そんな不安な想いを分かり合ってくれる人物が現れた。


それがベリアル様だ。

同じ、王子という立場。同年代で達観した考え。

※実際は100歳越えてます。


ベリアル様の言葉で何か心を動かされたのかもしれない。


そして、さっきの晴れやかな顔だ。

あれは、ゲームでナナリーがエドワード殿下の心の問題を

解決したときの表情だった。


ナナリーは、心の闇のよき理解者として寄り添う決心をしていた。

それがきっかけで、エドワード殿下はナナリーへの恋心を自覚する。


複雑な心境の私、エミリアがお送りします。

そして、焦るよね。これ、まずくね?


エドワード殿下と仲良くなる = 話す機会が増える。

話す機会が増える = ナナリーが近くにいる。

ナナリーが近くに居る = イベントが発生する。


焦る心の私は、表情にそれが出ないようにするので必死だった。

ありがとうございました。

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