30話『談話室にて』
今更ですが、友達に指摘されたので。
エミリアの言葉遣いは私です。
一人称視点のしゃべり時は前世のエミリアが強く出ているので
私です。
談話室で泣き止んだ私は現在、顔が真っ赤だ。
隣には、私の手を撫でる魔王ベリアル様が心配して顔を覗き込んでくる。
ベリアル様の右肩はしっとりしている。
とんだ、醜態を晒してしまった。
私は、深呼吸して自分の中の熱を吐き出す。
そして、神様に一言。
記憶を戻すタイミング、本当に考えてください。お願いします。
(事が起こった後じゃ意味ないんじゃー!)という副音声を込めて。
私が今回思い出したのは、ダウンロードコンテンツのキャラクター
留学生のベリアル王子だ。
私は10週以上したけど一度も彼に出会っていない。
だから、どんなイベントが発生するのか、
ゲーム中のベリアル様の性格もわからない。
ネットの攻略情報にも、20~30週回プレイしても1回合えれば幸運らしい。
ゲーム内学園で、留学してくる可能性が運なのだ。
そんな留学生ベリアル王子は、ネットではかなりの人気だ。
私は、出会えなかったので、攻略サイトに添付されているスチルしか
見ていなかった。情報も、出会った人が少なすぎてほとんど無かった。
なぜ、留学してきたのか? 国はどのあたりにあるのか?
ベリアル様ルートをクリアした人の情報でも書かれて無かった。
最後はヒロインと一緒に国に帰るらしいというのは分かる。
そんな『ゲームの裏情報』の関係者はエミリアだったのか!
ゲームには、好感度のほかに見えないパラメータ嫌感度がある。
きっと、エミリアの嫌感度が一定に達しないと、留学してこないのだ。
でも、ここはゲームじゃない。
現実は私が記憶を取り戻したりだとか、呪わなかったりだとか
ベリアル様と母を会わせたりだとか、母も悪役令嬢だったりだとか、
因縁のリリーナの事情にベリアル様も関わっていたりだとか……
いろいろあったなー……白目。
とりあえず、思い出した内容をベリアル様に話した。
「なんというか、私は運命とやらに玩ばれているのか?」
難しい顔をしたベリアル様はとっても不服そうだ。
そりゃそうだろう。
自分で決めて進んできた道だと思ったらそうじゃないかもしれないのだ。
自分の意思だと思っていたものが実はまったくの別の意思によって
導かれていたものだと思ったら、心境は複雑にもなるわ。
「ゲーム内のベリアル王子がどういった理由で留学してきたのかは
まったく持って謎だったのですよ」
「ふむ……。」
何かを考え込むベリアル様に、私は少し不安だった。
ナナリーと出会わせてしまったということは、ナナリーとベリアル様の
イベントのフラグが立ったということ。
ナナリーはヒロイン補正として攻略対象に好かれやすい要素を持っている。
ベリアル様が、もしナナリーを好きになったりしたら……?
(なんでかしら? 少し胸がざわつく。)
そんなことを考えていたら、視線を感じて顔を上げる。
そこには、優しく微笑む魔王様がいた。眼福です。
「心配しなくてもいい。
私は、アレを好きになることはないぞ」
安心させるためにかけて下さった言葉に顔が熱くなる。
(ひぃーーーー。イケメンっ! まぶしーー!!
いつものドヤ顔じゃないなんてズルい!!勘違いするな!エミリア!)
プイと顔をそむけて、いつまでもなでられ続けていた手を引っ込める。
一瞬にしてベリアル様の顔が落ち込んだけど気にしない。
とりあえず、休憩時間が終わる前に教室に戻ることにした。
次、プチざまぁ です。




