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親子そろって悪役令嬢!?  作者: マヌァ
白魔法の文献編
196/232

195話『さすがヒロイン』

ちょっと長くなってしまいました。




次の日。

朝を知らせる鐘の音で目が覚めた。

※兵士が鳴らしています。


昨日はお風呂を堪能し、体が温かいうちに寝床に着いたのだった。

いろいろあったからね、グッスリ眠れたよ。


寝台を確認すると、今起きたのは私とナナリーとマリク君だった。

他は空になっている。


「おはよう」


と声がした方をみると、ベリアル様がイスに座って本を読んでいた。

私達は、それぞれあいさつを交わす。


「おはようございます」 「ふぁ~……おひゃよ~」


「おはようございます。

 ナナリーさん、はしたないですよ!」


ナナリーはあくびが混ざって変なあいさつになっている。

それをマリク君が注意していた。


私は、目線だけでコンラート様とリーテ様が寝ていた場所を見つめる。



「リーテ嬢とコンラート殿は、兵士達と共に朝の稽古だそうだ」



とベリアル様がいない2人の所在を教えてくれた。


ちなみに、マリエラは自分用のテントを持ってるらしいのでそちらで寝ている。


カツン カツン という音が外から聞こえ、そっとテントから外を覗く。

まだ朝早い時間帯なのに、兵士の皆さんはキビキビと働いている。

朝食の準備や朝の稽古をする兵士達の姿があった。

その中には、目立つ真っ赤な髪をポニーにしたリーテ様と

隣にはコンラート様もいた。


ほとんどのテントは片付けるための解体作業に入っていて、

カツン カツン という音はテントの解体作業中に出た音だったようだ。


テントの中に首を戻して、朝の支度をする。

昨日、お風呂時に脱いだ服が洗われ、

丁寧にたたんだ状態で机の上に置かれていた。


私とナナリーはそれぞれそれを手に取った。

気を使ってか、マリク君とベリアル様はテントの外に出てくれた。


念のために、衝立ついたての後ろで着替える。

顔を洗ったり、髪を整えたりと朝の準備をすませた後、

汗をかいた状態のリーテ様がテントに帰って来た。

額や首周りの汗を適当に拭いてそのままで済ませようとしたリーテ様の腕を

ナナリーは掴む。


「リーテさん、まさかそれで終わりとか言うんじゃないでしょうね?」


「その通りだが?」


きょとんとするリーテ様にナナリーの顔色は青くなった。

そしてこちらに目線で訴えかけている。

ナナリーのアイメッセージは「だめだ! 早くなんとかしないと!」だった。

頷いた私も、リーテ様の腕を掴んで、衝立の後ろに引きずり込む。


着ていたサーコートを脱がし、下に着ていたインナーを脱がせる。

インナーは汗でじっとりしていた。


「こんな状態じゃ、風邪を引いちゃうわ」


「む……確かに、そうだな」


今は、運動のおかげで感じてはいないだろうけど、

服についた汗が冷えて、危険だとナナリーは言っているのだった。


とりあえず、ナナリーと手分けしてリーテ様の体の汗を拭き取った。

ポニーテールも編みこんでトップのお団子に変更した。


これで、女性陣の朝の準備は完了したのだった。


あとは、戻ってきたコンラート様にも汗をきちんと拭き取るように

ナナリーとリーテ様に言ってもらい、男性陣の準備中に

私達が朝食をもらってくることにした。


男性陣の準備はかなり早いもので……

朝食をもらってきたら荷物まで持って、もう全員準備完了していた。


マリク君の左右にはお馬さんまでもいる。

コンラート様が馬に荷物を取り付けている最中でもあった。

そして、ベリアル様の隣にはマリエラが既にいた。


「おはよう」


マリエラは私達に向けてあいさつをした。


「「おはようございます」」 「おはよう~」


「朝食のあと、すぐに出発するわよ」


マリエラの指示で私達は朝食を開始する。


今日の朝食は魚介出汁の効いたシチューだった。

なんとなく、クラムチャウダーに似ている味付けだ。

魚介出汁なのに、魚介系の食材は入ってはいない。

入っているのは、ジャガイモやニンジン、鳥肉の団子で結構ボリューミーだ。

それに硬パンが2枚というメニューだった。


食べ終わったら、荷物のチェックはもう済ませてあるらしく、

本当に直ぐに出発するだけだった。


リーテ様を先頭に列を組む。

マリエラがその後に並び、私とベリアル様、ナナリーとマリク君、

しんがりがコンラート様だ。


皆、馬に語りかけている。

今まで一緒に進んできたんだもんね。


私も自分が乗って来た馬をナデナデする。


後ろからは、「チョコ~! 会いたかったわ~!」とか聞こえた。

視線を向けると、ナナリーが馬とキャッキャウフフ状態だった。


この旅が終わったらお別れになるのに、名前なんて勝手に付けて

大丈夫なのかな?


さらにその後ろでは、コンラート様がナナリーを悲しい視線で見ている。

自分の馬に乗って欲しそう……。


ちなみに、マリク君はベリアル様と何か話している。

地図を広げているから、場所の確認かな?


マリエラとリーテ様に視線を向けると、もう馬にまたがっていた。


ザワワ……


ん!?


何か見られている様な感覚がして、振り返った。

金色に目が光るマリク君と目が合う。

ニッコリと微笑むマリク君と隣にいるベリアル様は私に頷いていた。


「『そのままでいるのである』」 


というアリエ様の言葉に何か思惑があって、

マリク君があの行動を取っているのだと理解する。


「どうしたの?」 「何かあっただろうか?」


マリエラとリーテ様の言葉に、マリク君が手をぶんぶんしながら答える。



「エミリア様の星霊様が美しいなと思って、つい見惚れてしまいました」


「え!? エミリアって星霊憑きになったの!?」


「それは、すごいですね」



マリエラもリーテ様も驚いているようだ。

そういえば、言ってなかったかも?



「ベリアル様の星霊様も凛々しく雄雄しい姿で素晴らしいですね」



マリク君に褒められて、シェイド様はドヤ顔を、アリエ様はピーピー言って

飛び回っているのがうっとおしかったので、捕まえて肩に乗せる。



「へ~。 どんな姿しているの?」


「エミリアのは、可愛い白い小鳥さんよ。

 エレノア様のはオレンジ色のオカメインコで―」



ナナリーが会話に加わって、マリエラの問いかけに返事を返す。

両手をパタパタとさせている。



「ベリアル王子のは東洋の黒いドラゴンって感じよ」



さらにナナリーは両手を頭の横につけて爪を立てるポーズをした。


あれ?


ちょっとまって!


「ナナリー、貴女、星霊の姿が見えるの!?」


思わず素が出た。



「その子達だけじゃないわ。

 周りにもいっぱい飛んでいるじゃない」


ナナリーは周りの空間や空に向かって手を伸ばして魔法を発動した。

すると、その手の魔力に引き寄せられるかのように、

小さな光がキラキラとナナリーの周りを舞う。


そんな幻想的な光景に全員驚いていた。


レアなんてものじゃない。スーパーレアクラスだよ!

星霊や微聖霊が見える人の数はかなり少ないって聞いた。

人間には、ほとんどいないんじゃなかったっけ?

例外は私達のような星霊憑きくらいかな。


しかも、ナナリーはレア度マックス、ウルトラレアクラスの白魔法も使える。

ナナリーがとんでも人間に見えて怖くなった。


「さすがヒロイン……」


ボソっと呟いたマリエラの言葉に、私は心の中で同意したのだった。



ありがとうございました。

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