191話『合流 1』
霧が晴れるまで、私達はその場から動けずにいた。
どれくらい時間がたったのか。
1時間くらいだろうか。
霧が晴れたと思ったら、周囲は兵士で取り囲まれていた。
青いマントをはためかせた白い短髪に碧眼の青年? がこちらに馬で近寄る。
どこかで見覚えがあった。
たしか、建国パーティとかお茶会で見かけた……
「馬上から失礼します。
エミリア様、あなた方を助けに来ました。
私は、コルニクス兵隊の隊長を勤めてる、ユアンと申します」
ユアン……どこかで聞いた名前……
コルニクス兵!?
ってことは、この霧の原因の魔物はコルニクス公爵が手間取っているっていう
魔物の仕業ってことよね。
そして、思い出した。
ユアン隊長って、コルニクス公爵家の長男の名前だ。
「ユアン様、お久しぶりですね」
パーティでも何回か見かけたし、挨拶もしたことあったけれど、
服装が違うとこうも印象が違うとは……。
助けにってことは、霧を取り払ってくれたのはコルニクス兵という事?
疑問に思って、ユアン様に話を聞く。
そして聞いた話に私達の顔色は悪くなった。
テントを張っている陣にナナリー達は居るという話だったので、
私達は、兵士数人の案内で、陣にたどり着いたのだった。
陣には複数テントが建ててあり、料理を作っている兵士や
馬を世話する兵士など忙しそうに動き回っていた。
乗って来た馬を休ませるため、馬用のテントに向かった。
荷物を降ろし、馬の蹄に詰まった土を取ったり、
塩や水、干草をあげたりしたあと兵士に馬を預けた。
この後は、兵士に複数立ち並ぶテント区画へ行くように言われ、
その中の1つから見覚えのあるピンクのゆるふわの髪の少女が姿を見せた。
少女はこちらに視線を向けて、ホっとした表情でこちらに駆けてきた。
そして、飛びつく勢いで抱きしめられ――
「うわああああぁああぁぁぁぁ――!!」
耳元で大声で泣き叫ぶナナリー。
ナナリーの背中に手を回し、撫でる。
ユアン様の話では、ナナリーは全身血だらけで慢心相違だったとか……?
全然、五体満足なんだけど……。
ナナリーは、そうとう怖い思いをしたようだしね。
このままナナリーが落ち着くまで、私は背中を撫で続けたのだった。
しばらくして落ち着いたナナリーに案内されて、
パイプテントに設置してある長机と長イスに全員で腰掛けた。
緊張のせいもあって、座った瞬間にドッと疲れが押し寄せた。
隣に座ったナナリーは、何があったのか詳しく状況も説明してくれた。
「私達が霧に閉じ込められている間に、そんな事になっていたなんて……」
「あの霧は、音や光を遮断するってマリク君が言ってたわ」
ほんの数十メートル先で戦闘が行われていたのに、気づけない程の
濃密な霧を発生させるなんて……
魔物の強さはどれほどのものなのか。
想像するだけでも恐怖が押し寄せる。
ナナリーの話を聞いていたコンラート様は、俺がついていれば! とか
言ってるけど、ナナリーは無視している。
そのあと、ナナリーが砦に向かっている途中で
コルニクス兵と出くわしたそうだった。
ちなみに、コルニクス兵達が丁度良くあの場所に居た理由は、
昼食の休憩に陣を設置し、休憩が終わって先行部隊が隊列を組んでいざ出発!
という時にナナリーが前方から馬で走って来たのだとか。
あとは、陣で休憩中にリーテさんとマリク君が運ばれてきたらしい。
マリク君はコルニクスの医師達とナナリーが治療を施し、今は眠っている。
リーテさんは疲れているらしく、テントで寝ている。ということだった。
ナナリーの話を聞き終えたあたりで、聞き覚えのある声が私の名前を呼ぶ。
「エミリア!」
声のしたほうを確認すると、皮鎧の上から白色の胸あてを着込み、
短パンに白いタイツ。
白と金色の肩当から背中にかけてはためく白いマント。
頭には魔法の輝きを放つ小さなヒマワリの髪飾りをしたマリエラが
細身のレイピアを腰から差した状態で立っていた。
なんというか、勇者パーティに居そうな女剣士って感じだ。
「マリエラ!? ど、どうしてここに!?」
微笑むマリエラに対して、私は驚きを隠せなかった。
全員集合!