173話『出発前夜 2』
文法がおかしい場所を修正しました。
皆が寝静まった夜、
月明かりが差し込む廊下の窓から、私は1人で庭を眺めていた。
誰かが作った2つの雪だるまが月明かりに照らされてキラキラと輝いている。
いろいろ有り過ぎて正直眠れなかった。
まだこの街に来て、3日しか経っていないのにね。
カチャ―。
音がしたほうに視線を向けると、
ベリアル様が部屋から出てくるところだった。
「ベリアル様……」
「眠れないのか?」
近づいて、隣に並ぶベリアル様は無表情だ。
だけど、この無表情は少し怒っているときの顔だ。
(夜中、出歩くなんて危険だものね)
「考え事を……していました。」
庭に目を向けながら、考え事の内容をベリアル様に話す。
相談とまではいかないけれど、私は1人で溜め込むクセがある。
そして決断した結果はあまり良くないらしいから。
「現実はゲームと違った運命を選択できるとアリエ様から聞きました。
私に絡まる運命の糸はできるだけ絶ち斬っているとも。
運命を変える手段は本人にしか持ち得ない。
私の選択は本当に間違ってないと言えるのでしょうか?
私が砦に行って、兵士の皆さんを救えるのでしょうか?
私は―――」
(――2年後、生き残れるのでしょうか……)
屋根から落ちてきた雪がトサトサと音を立てる。
落ちてきた雪の塊が、雪だるまの片方の上に降り注ぎ、
やがて雪だるまはドサッと言う音と共に倒れて崩れてしまった。
「…………」
自分でも理解している。
私はマイナス思考で、考え込んでしまうタイプだ。
今、目の前で起こった雪だるまの崩れる瞬間が、
2年後の自分の様な気がして――。
目じりに涙が溜まる。
「エミリアは、自分が持っている力だけでは満足していないから
悲観的な考えになるのではないか?」
ん?
どういうことなのだろう?とベリアル様に視線を向ける。
「君は十分、力をもっている」
「力……ですか……?」
「もっと、自信を持ったほうがいい。
考えてもみろ。
普通の一般人は大陸に15柱しかいない星霊の1柱に愛されるか?
独自の特別な治癒魔法を使えるか?
さらには、人柄、魅力、財力、家柄、知識。
全て揃っているものはいるか?
君のその自信のなさは、能力を持っていない者にとって
どう思われているか考えた事があるのか?
君は、十分特別だ。
君の特別に理由をつけて卑下するな。
もっと誇って、堂々としていてもいいんだぞ」
そう言って、ベリアル様は頬を伝う涙を親指の腹で拭ってくれる。
励ましてくれるベリアル様のやさしさが嬉しい。
「自信をもつですか……」
私は、以前ベリアル様に言われた言葉を思い出す。
「私は、私に出来ることをやるといい。でしたね」
「そうだ。
しかし、性格というのは変えろと言われて変えられるものじゃないからな。
弱音や愚痴はいつでも聞こう。
エミリアは私を惹きつける程の魅力を持っている。自信をもて」
え? それってどういう……
「ああ、それと――」
途中で区切ったベリアル様は、両手で私の頬を軽くつねる。
痛いけれど、全然平気な痛さだ。
「い……いひゃいれす……」
「夜中、1人で出歩いたことを私はまだ許してはいないからな」
おおぅ。
ベリアル様、根に持ってるー。
「ごめんなひゃい」
「加護は効いているが何が起るかわからない。
部屋に戻ろう」
そう言って、ベリアル様は手を離して頭を撫でてくれた。
ポッと顔が熱くなる。
窓ガラスに反射したホッペを見たけれど、全然、痕とかついてなかった。
ベリアル様の、力加減が完璧すぎた。
ベリアル様と一緒に、部屋に戻る。
2段ベッドの上の方が私のベッドなので、先にベッドに入る。
ベッドの中でうずくまって寝ようと努力する。
だけど、さっき言われた事を思い出してしまった。
『エミリアは私をひきつける程の魅力をもっている』
ひきつける……ヒキツケル……惹きつける……!?
む、むむむむむ……むりやわー!!!!!
こんなん、寝られへんわーーー!!!
久しぶりに、関西弁が出てしまった。
今までふざけていたけれど、ふざけられんやん! こんなん。
つまり、えーっと……どゆこと!?
ふえーーーーん。
私はしばらく、ベッドの中で悶絶してました。
―30分後―
ぐぅ……。
ちょっとだけニヨニヨ回?でした!