172話『出発前夜 1』
旅宿から中央広場にある宿舎にはお母様と共に戻り、副院長に話を通した。
ナナリーも呼んで、明日の砦行きの件を伝えるのだ。
「そういう訳だから、ナナリーさん行ってもらえる?」
というお母様の言葉に、ナナリーは即座に答えていた。
「もちろんです!
私に出来る事なら、なんでもします」
ん? 今、何でもって……?
ナナリーは真剣な表情で頷いていた。
苦笑したお母様はナナリーを抱きしめた。
「ナナリーさん、無理はしちゃだめよ」
と呟きながら、私に視線を向ける。
アイメッセージに込められた言葉は「ナナリーを頼むね!」だった。
(大丈夫、ちゃんとナナリーが無茶しないように見ているから!)
私はそう意思を込めて頷いた。
ベリアル様も隣で頷いている。
お母様は納得したのかナナリーの頭を撫でつつ、離れる。
頬を染めたナナリーは少しだけ緊張が解けていた。
その後、研修テストの続きはどうなるのか聞いたりした。
救護班は途中抜けになってしまうからね。
まぁ、今この街にある脅威のせいで、テストどころではないけれど。
「あなた達のテストの点数は全て高得点ですよ。
ミス・ナナリーは、ミス・シンシアと力を合わせて
先生の指示通りに治癒魔法を使っていました。
ただ、炎症を抑える持続型の治癒魔法は得意では無いようですけどね。
状態異常系の治癒魔法を頑張って覚えていきましょう」
副院長の言葉に、ナナリーは落ち込んだ表情になっていく。
お母様はすかさず言葉を付け足して、フォローに入った。
「誰にでも得意不得意はあるわ。
ナナリーさんはこれから勉強していけばいいのよ。
傷を癒す能力だけ見たら、エミリアと同等だもの」
お母様の言葉に、ナナリーは涙ぐんでいた。
「私、帰ってきたら勉強も頑張りたいです。
学園を退学になってしまっても……
治癒の能力が消える訳じゃないから、沢山の人を助けられるように……
自己流でも、頑張って勉強します」
ナナリーの決意の言葉に、お母様も副院長もやさしく微笑んでいた。
その後、明日の詳しい予定を聞いた私達は部屋へと移動した。
部屋はお母様と副院長のはからいで変更になりました。
私とナナリー、ベリアル様、そしてナナリーが指名したマリク君が
新しい部屋で今晩、過ごす事になった。
説明のあとは、食堂で夕ご飯だ。
荷物を運び終わった私たちは、新しい部屋に集まっていた。
もちろん、新しい部屋はちゃんと掃除がいき届いている部屋だ。
私達は明日の砦への救護班として同行してもらうマリク君に
詳しい説明をする。
「そういう訳ですので、マリク君には申し訳ないのですが
私達に同行して頂きます……」
申し訳ない表情の私達に、マリク君は手を顔の前でふりながら答える。
「とんでもないです!僕が行って出来る事なんて少ないですが
精一杯努めさせていただきます。
僕は、ナナリーさんのサポートに回ればいいんですよね?」
というマリク君の言葉に、ナナリーが頷く。
「私は傷を癒す魔法しか自信がないの。
マリク君には、炎症を抑える持続型の治癒魔法をお願いするわ」
ナナリーは素直に自分の欠点を話す。
それにマリク君は頷いていた。
「任せてください。
僕は状態治癒魔法は得意ですが、
傷を癒す魔法はあまり得意ではなかったので、助かります。
僕達、相性は抜群ですね!」
マリク君はとってもいい笑顔をナナリーに向けて言った。
ナナリーは顔が真っ赤になってマリク君を見つめている。
2人の間は、とてもいい雰囲気になっているので、
気を使った私とベリアル様は、静かに食堂に移動するのだった。
なんか、ストーリーがダラダラしてる!?Σ(゜ロ゜;)