156話『続・合同研修 6』
予約投稿中。
この投稿がされたのは12月30日です。
私がポテトサラダを作っている間、皆は順調にハンバーグのタネ作りが
完成していた。
カボチャハンバーグより残り2つは簡単だしね。
チーズハンバーグはみじん切りしたタマネギしか入れないし、
おろしハンバーグはみじん切りしたニンジンとタマネギのみだからね。
混ぜる担当はベリアル様とセンラ君だった。
キャシーさんが塩と胡椒で味を調えて完成させていた。
「ねぇ、これは使わなくてもよかったの?」
ナナリーに声をかけられてそちらを向くと、
箱の中に2つだけジャガイモが残っていた。
あれぇ!?
「あ! ごめんなさい。
蒸し忘れですね……」
残ったジャガイモは箱の奥底で他の食材に隠れて見えなかったのだ。
「しょうがないので、2つだけ残りましたと先生に伝えましょう」
私の提案に皆は頷いていたが、ナナリーだけは違った。
「ねぇ! 私、ジャガイモを使ってマヨネーズの味見をしたいわ!」
それは、いいのだろうか?
勝手に食材を食べるのはダメなんじゃない?
私はナナリーに、先生とシスターに聞いてくるように言った。
許可が下りれば味見してもいいけれどね。
自信満々で頷いて駆けて行ったナナリーは先生とシスターを連れて戻ってきた。
先生とシスターに、ボールに残ったマヨネーズを自慢しながら説明し、
2人がマヨネーズを眺めている間に、皮の部分を適当にピーラーでそぎ落とし、
フライドポテトっぽく縦長に切ったジャガイモを蒸し器に放り込んでいた。
調理器具は全て魔道具なので、蒸しあがる時間も短いし、
入れた食材が蒸しあがったら知らせてくれるハイテクな代物だ。
ナナリーは、蒸し上がったジャガイモをお皿に盛って、
上からマヨネーズをかけた。
先生とシスターにフォークを手渡して、味見を進めている。
2人はナナリーの迫り具合に戸惑いつつも、
ふかしジャガマヨを食べて絶賛していた。
天狗になっているナナリーは、お皿とフォークを18班と19班全員にも手渡した。
「さぁ、食べて!
先生とシスターも食べたんだから、共犯よね!!」
というナナリーの言葉に、先生は焦った顔をし、
シスターは声を出して笑いだした。
「ほっほっほ。 面白い子ですね。
味見くらい、してもいいのですよ」
というシスターの言葉に、ホッとした私達は、
ナナリーの作ったふかしジャガマヨを堪能した。
「ナナリーさんおいしいです。
貴女はきっと、いいお嫁さんになりますね」
マリク君の言葉は心からの賛辞だった。
エルフ族は全員美形だもんね。笑顔が素敵だ。
褒められたナナリーは、頬を染めて、
ジャガイモを使ったほかの料理をマリク君に説明していた。
マリク君も興味津々で聞いている。
でもナナリー、料理の種類知っていても作れないんじゃ……。
ナナリーとマリク君の周囲だけ、楽しげな空間が広がっていた。
私は、深く考えるのをやめた。
出来上がったハンバーグのタネは
19班の子達と一緒に小判型に仕上げてもらう。
最初の3つは私がお手本を作って、あとは皆に任せた。
チーズハンバーグだけは、うちの班の担当だ。
キャシーさんを筆頭に、チーズハンバーグを形作るのは
センラ君、ライナー、護衛君だ。
ハンバーグの大きさは2口で食べれるくらいにしてある。
厚みは1.5センチくらいだ。
3種類を盛り付けるので、丁度いい量になるだろう。
チーズハンバーグだけは他のハンバーグに比べてちょっとだけ厚めだ。
タネの中に削ったチーズを仕込むからね。
皆にハンバーグの形作りをしてもらっている間、
私とベリアル様、ナナリーとマリク君はソース作りに取り掛かる事にした。
ナナリーとマリク君には大根をすりおろしてもらう。
大き目のボールに、皮をむいた大根をすり器でジョリジョリしてもらうのだ。
なんとも、ナナリーとマリク君はとても仲良くなっていた。
料理は男心を掴むって言うからね。
2人の周りだけ、ふんわり空間が出来上がっている。
談笑しながらキャッキャウフフっている。
ナナリーがすりおろした大根が飛び散っているが、
マリク君が上手い事フォローしている。
そんな空間の隣で、私とベリアル様は
チーズハンバーグ用のソース作りに取り掛かったのだった。