153話『新たなる属性。』
明けまして、おめでとうございます。
今年も『親子そろって悪役令嬢!?』を
よろしくおねがいします。
各班には、料理が得意な生徒がちゃんと混ざっていた。
18、19班では、私とキャシーさんが料理が一番上手な女性として
指示を出すことになった。
まず最初に作るのは、カボチャのハンバーグだ。
ミンチにしたお肉に入れる野菜はタマネギとニンジンのみじん切りに、
蒸したカボチャをつぶして入れて、かさましをする。
甘めにしたほうが子供受けがいいかと思ってね。
18班は、皮剥きしたカボチャの切り分けと、
カボチャ、ジャガイモの蒸し作業にお肉をミンチにする担当だ。
19班は、タマネギとニンジンのみじん切りとジャガイモの皮むき担当だ。
ジャガイモは蒸した後に皮を剥いてもらう予定だ。
作業が終わった、暇な人が大根などをおろしてもらう。
ちなみに、ハンバーグの種類は3種類用意してあるよ。
大根おろしのハンバーグに、
カボチャの入ったハンバーグと、チーズが入ったハンバーグだ。
それぞれ皆、作業に取り掛かった
しかし困った問題児が1人いた……。
「痛ったーい!」
声のした方を向くとナナリーが調理用ナイフで自分の手を切っていた。
周りの皆は一瞬だけそちらに視線を向け、
またかと言う顔をして自分の作業に戻っている。
隣で作業をするマリク君は若干ひいている。
ナナリーはもう10回以上自分の手を切りつけている。
切りつけるたびに、自分で治癒魔法を使うのがなんともシュールだ。
というか良く見るとナナリーの手元が微妙に光っている?
あれって、怪我をするのに身構えて治癒魔法を常に使っているのかな?
切りつける頻度が上がっているので、
きっと魔法に集中してカボチャを切る手が滞っているようにも見える。
あれじゃあ、本末転倒だ。
治癒魔法を使っても、無くなった血は戻っては来ないのだ。
確実にナナリーの切ったカボチャは、ナナリーの遺伝子が組み込まれている。
そういえば、前世でのナナリーは確か13歳だって言ってたよね。
この感じだと、前世のナナリーの我が強すぎて今世のナナリーが
ほとんど消えてる感じなのかな?
でもちゃんと学園の勉強にも、そこそこ付いていけてるから
知識としては残っているのかな?
私の意思も混ざってはいるけれど、ほとんど『前世の私』のが強いしね。
自分の治療を終えたナナリーが震える手でカボチャにナイフを向けている。
まるで、追い詰められた犯人が警察に
近寄るな!! 刺すぞ!? と言わんばかりの光景だ。
私は見かねてナナリーに声をかけた。
「ナナリー様、ナイフを使うのは難しいでしょう?
こちらを手伝ってくださいませんか?」
ナナリーには、カボチャの皮は滑るし硬いからやめたほうがいいよって
ちゃんと伝えておいたのだ。
それでも、やってみたいって言うから仕方なくやらせたけれど……。
涙目のナナリーは頷いて、自分のカボチャをマリク君に渡して、
素直にこちらに来た。
マリク君は、渡されたカボチャをそっと袋に詰めて処分していた。
ちなみに、カボチャ担当はベリアル様、センラ君、マリク君に護衛君だ。
お肉担当は私とキャシーさんにライナーだ。
「こちらの、蒸したカボチャをマッシャーで潰してください」
私は、あつあつのカボチャを蒸し器から取り出して、ボールに入れる。
ナナリーにマッシャーを渡して潰してもらうのだ。
ちなみにマッシャーは木の棒タイプのやつだよ。
先のほうが太く平らになっているやつ。
「まかせて!」
これなら簡単だと言うナナリーは、
マッシャーを勢い良くボールに振り下ろした。
ネチャ! という音と共に、
跳ねたカボチャのかけらがナナリーの顔に当たる。
「あっつーーーい!!」
うぇええぇぇぇええ!?
なんでそうなるのー!?
ナナリーのドジっぷりが本領発揮した!!
ナナリーの様子を窺っていた全員が、
驚愕の表情でナナリーを見つめた。
そして次々と、哀れむような視線に変わる。
ナナリーは、ドジっ子属性の称号を入手したのだった。
予約投稿中。
この投稿がされたのは12月29日です。