143話『愚者 5』
皆様、クリスマスはいかがお過ごしだったでしょうか?
私は、からっぽの島を開拓しまくっていました・・・。
ナナリー視点です。
「その後は、あなた達も知っている通り。
私は、選ばれたんだって。
ハーレムエンドを目指していたの。
貴女にずっと悪い事をして来た。
直接的なことじゃないけれど、悪い噂を流しているなんて、
大きな声で言いふらしたりしたわ。
それにエド様に聞いた話だけど、私の服やノートが
無くなったりしていたのは、全部リリンの仕業だったみたいなの」
私の話を静かに、
真剣に聞いてくれていたエミリアは、私の手をそっと握った。
「ナナリー様、話してくれてありがとうございます」
やさしい微笑みで、エミリアはそう言った。
どうして、やさしくしてくれるの……?
私はずっと、貴女に酷い事をして来たのに……。
耐え切れず、私は涙が零れた。
「簡単に許される事ではないかもしれない……。
私は、沢山の……沢山の間違いを犯してきた。
謝って許されることじゃない。
だから、私は……ヒッゥ……ヒック」
嗚咽のせいで上手く言葉が出ない。
「わらひは……ヒック……ご、ごめんぁ……さい……ううぅ……」
「ナナリー様、貴女の気持ちは分かっています。
貴女は、妖精リリンに騙されていただけ。
貴女の罪を私は許します」
エミリアの言葉で私の心は少しだけ救われた気がした。
「うう……ぅあああぁああああああぁあ――! ――!!」
耐え切れず、私は大声で泣き出した。
その後、私が泣き止むまでエミリアは抱きしめてくれた。
泣き止んだ私は、エミリアから離れて誠意を込めて謝った。
「本当に、ごめんなさい……。
私は、貴族の常識がいまだに良く分かってないわ。
だから、今回の件も含めて私の処罰がどの程度重くて、
どうなるかなんて分からないけれど。
私は全てを受け入れるつもりです」
私はエミリアに似た女性、エレノア様のほうに顔を向けた。
エレノア様は、コクリと頷いた。
この街でやってしまった事に対しては、エミリアにはまだ話していない。
私はきっと、責任を負わなければいけない。
「ナナリー様の私への不敬は許してもらえるように、
エドワード殿下と両陛下にもお伝えしています。
そんなに不安にならずとも良いですよ」
エミリアの言葉が少しだけ、嬉しかった。
でもエド様はともかく、どうして両陛下とも?
私は、疑問を感じてエミリアに詳しく聞いた。
「ナナリー様も薄々は感づいていらっしゃるのではなくて?」
感づく?
私は、キョトンとしてエミリアの顔を見つめた。
「同じ日本人の転生者ですもの。
転生者どうし、助け合わなくてはね」
ニッコリと笑ったエミリアに私は驚愕した。
そして振り返る。
エレノア様も、ジョシュア君も、ベリアル王子も、
みんなニヤリと笑っていた。
エミリアが目覚めるまで、
私はエレノア様とジョシュア君、ベリアル王子にだけ私の話をしていた。
エレノア様もジョシュア君も転生者で驚いたのに……
まさか、エミリアも転生者だったなんて……!
「は、はえええええええ!?」
私は驚きのあまり、変な奇声を上げてしまった。
次回、エミリア視点に戻ります。