137話『愚者 1』
ナナリー視点です。
土曜日と日曜日の投稿は2話にします。ストックの関係です。
月曜日の投稿は無しです。
自分へのクリスマスプレゼントや!!ヒャッハイ!
ご了承ください。
今日はイベントの日。
私が雪の星霊に認められて、
この街の住民を助けて聖女として目覚める日よ。
でも、私が担当する病気の症状の人は軽い症状の人ばっかり。
どうしてジョシュアにばかり、目立つ患者を診せるのよ……。
先生が私に組ませた相手は、シンシアだった。
彼女が炎症を抑える魔法を使って、私が傷を癒す係りだった。
私一人でも、十分なのに……。
でも、これはテストだから仕方が無いわね。
テストが終わったら、いよいよイベントの開始かしら?
ゲームでは治癒科の授業なんて無かったし、
テスト期間も12月だったからこの世界では
ちょっとイベントのはいりが変わっているのよね。
だけど、ヒロインである私はちゃんと王都を出て、
白魔法を使って、人々を癒しているわ。
ちゃんとイベントは起きている。
あとは、魔物の出現を待つだけよね。
診断書を書き終えて、先生に渡してから民家の外に出る。
今、私達がいるのは北側にある中央通りに一番近い商店街の民家前だ。
先生が診断書を確認したあと、私達にここで待機しているように言った。
先生は、他の生徒のところへ向かうようだった。
停めてある帆馬車の荷台部分に腰掛けるシンシアを見つめた。
シンシアの左手の薬指には、プラチナのリングがはめられている。
ジョシュアとおそろいのリングだ。2人は既に結婚している。
ジョシュアとシンシアも昨日、今日話しただけだけど私にとても親切だ。
ここは、ゲームの世界。
だけど、本当にそうなの?
最近、分からなくなる。
ゲームの世界なのに、攻略対象であるジョシュアは学園には来てないし、
もう既に結婚までしている。
ケヴィン君だってそう。
ゲームではあんなにイケメンじゃなかったし、カレンなんて恋人も居なかった。
それと、一番おかしいのはエミリアとマリエラよ。
どうして、私に優しくするのよ……。
リリンは、出て行ったきりもうずっと帰って来ない。
カインとコンラートも、いつの間にか学園には来なくなっていて、
サロンで聞いた女生徒の話だとカインとコンラートは
来月、学園を退学するのだと教えられた。
エド様に確認を取ったら、それは事実だった。
エド様の婚約者であるエミリアに働いた粗暴の罪で
カインは星教会の修道院勤めとなり、
コンラートはハイライト王国との国境の砦の勤務になってしまった。
私も不敬罪に問われるんじゃないかって思ったけれど、
エド様に、エミリアに危害を加えていないのなら罪にはならないと言われた。
言葉に対する不敬は、テティーア先生もエミリアもエド様も不問に
してくれているようだった。
エド様は、今まで私の身に起こったことは、
全てリリンの悪戯で、自作自演だという事が分かっているようだった。
でも、これ以上不敬な振る舞いは許されないとも言われてしまった。
今からちゃんとした教養を身につける努力をしなさいと諭された。
この時から、私はエド様に貴族のマナーや礼儀作法を習い直した。
それに、エミリアやマリエラにサロンで言われた言葉も気になったから……。
最近では、寮の自室でもマリエラから借りている侍女のヘンリーにも
礼儀作法を教えてもらうようにしている。
でも私は、全てを知っているかの様なエド様の言葉が少し怖いとも思った。
それに、エド様のあの目は……。
私は首を振って深く考えないようにした。
深呼吸をして、気持ちを切り替えたその時――
ドカーン!!!!!
西門のほうから、すさまじい音が鳴り響いた。
イベント――!
私は誘われるように、音がした方向へ勢いよく駆け出していた。
ナナリー視点、続きます。