133話『異変 1』
前回の話が長かったので、今回は短め。
先生が私達が待機している民家にやって来た。
診断書を確認し、家族からも話を聞いて驚いている。
「ミス・エミリアは素早く的確な処置をしたな。
診断結果と、患者の話を聞く限り、
状態段階2の患者を治療してしまうとは……」
状態段階というのは、病気の進行状態を表す表現のことだ。
1段階は軽症。2段階は中等症。3段階は重症だ。
「ミスター・ベリアル、君も手際よくサポートを行ったようだな。
君達の腕前は、ほぼ見習い医師と同じ腕前だぞ。
卒業後、うちの診療所に欲しいくらいだ。
さすがヴォルステイン家の者達だな」
先生に絶賛された。
この後、家族にあいさつをし外に出ると、班のメンバーは既に集まっていた。
私達の往診した民家が最後だったようだ。
私とベリアル様は、皆の元へ向かい、お互いに労いの言葉をかけあった。
皆お疲れの様子だった。
現在時刻は13時くらいだろうか?
お腹も減ってきていたので、皆、早く宿舎に帰りたがっている。
「さて、私達の班の往診はこれで終了だ。
皆、お疲れ様。疲れただろうから、今から、宿舎に―――」
ドカーン!!!!!
先生の終了のあいさつの途中で、大きな爆発音が街中に響き渡った。
「な、なにが……」
大きな音に反応して、街中から喧騒が聞こえ始める。
声の中には、悲鳴も混ざっていた。
「先生!!」
というマリク君の声で、皆一斉にマリク君の方を向いた。
マリク君が指し示した方角に目を向けると、西門の方角から煙が立ち上り、
乗馬した兵士達が大通りを駆け抜けていた。
現在、私達がいるのはコルトの北にある平民街だ。
コルトの街への入口は東門と西門しかない。
乗馬した兵士たちは西門のある方角から東門に向かって走って行っている。
ただならぬ事が起こったのだと皆、察していた。
住民達も、脅えた様子で窓から状況を窺っている。
大通りから、兵士が数名こちらに抜けて向かってくる。
私達の前で停まり、声をかけてきた。
「夕日色の髪……。
失礼ですが、エミリア・ヴォルステイン侯爵令嬢であらせられますか!?」
どうやら、私を探しにきた兵士のようだ。
「そうです」
「馬上から失礼致します。
私は、第3兵隊の班長のシュゼルツと申します。
至急、我々と共に護衛の方と共に来て頂けませんか?」
シュゼルツ様の後ろに居る兵士が1人、馬から下りて
2人乗り用の鞍に変え始めた。
「何が起こっているのですか?」
私の問いかけに、シュゼルツ様はチラリと周りに居る生徒達を見た。
きっと、聞かれたくない内容なのだろうね。
「訳ありですね?」
「申し訳ありません」
「分かりました。
先生、申し訳ありませんが、生徒達を連れて先に宿舎へ
戻って下さい。
私とベリアル様は、シュゼルツ様に話を聞いたあと、
彼の指示に従います」
私の言葉に先生は頷き、帆馬車へ生徒達を誘導する。
生徒達は、素直に先生に従った。
「エミリアさん、どうかお気をつけて」
「ええ、ありがとうキャシーさん」
帆馬車に乗り込むキャシーさんの言葉に私は頷いた。
鞍を変え終えた兵士は、ベリアル様に馬を渡して
生徒達と一緒に宿舎に向かうようだ。
帆馬車が走り去ったあと、シュゼルツ様へ視線を戻して
詳しい事情を聞くことにした。
イベント突入。