表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親子そろって悪役令嬢!?  作者: マヌァ
テスト期間編
130/232

129話『合同研修 4』

テンプレのイジメ展開を書いてみたかったんや!!




夕食の時間は、階層ごとに分けられているようだった。


食堂では皆で好きな場所に座って食べれるよう8個の長い机と長イスが

等間隔で2列ずつ並んでいる。


皆、トレーを持って列を作り、カウンターから食事を受け取って

席について食べている。



私達もトレーを手に取って列に並ぶ。

夕食は、トロミのついた熱々のカボチャのスープとコッペパンが3つに、

胡椒のきいたマッシュポテトと、

にんじんやブロッコリーなどの温野菜のサラダだ。

飲み物は白湯の入った給湯器から自分でカップに注ぐようだった。


ベリアル様は足りないんじゃないかな?

席についてベリアル様のトレーにコッペパンを1つ移した。

正直、コッペパン3つは多すぎるので私は2つでいい。

貰えたベリアル様は、ほくほく顔だ。

1つだけで申し訳ないけれどね。


食事を始めようとした、その時、食堂にけたたましい音が響き渡る。



ガシャン!!



音のした方を見ると、王都の治癒学校の学生服を着た生徒が

食事の乗ったトレーごと床に倒れている。

床には、トレーに乗せていたであろう夕食がぶちまけられていた。


その空間は、ギャハハハハハと笑い声を上げる周囲と、

静かに静観する生徒とで二分されている。


「おい、マック。

 せっかくの夕飯が台無しだなぁ?

 どうするんだ? お前が転んだせいで僕の制服に汚れがついたぞ。

 責任をとってくれるんだろう?」


なんというか、絶対あいつが足をかけたでしょ。


「ライナー様、申し訳ありません」


笑ってヘコヘコするマックという青年は、深緑の長い髪をみつあみにしている。

耳の長さからして、エルフだろうか。


マック青年は自分のポケットから出したハンカチで金色の短髪で体躯のいい

ライナーと呼ばれた高圧的な態度の生徒の制服や靴を丁寧にふき取っている。


※治癒学校の制服は水気を弾く加工がしてあります。


「貴族家のライナー・ホスケンス伯爵令息です」


私の向かいに座ったキャシーさんとセンラ君は嫌な顔でライナーを睨みつける。


「いつものことですので、エミリアさんは気にしなくてもいいですよ」


「いつものこと?

 こんな事が、王都の治癒学校では日常的だというの?」

 

私の問いかけに、キャシーさんとセンラ君は頷いた。


「あいつは、自分より立場の弱いやつに、いつもああしている」


センラ君の瞳には嫌悪が篭っている。


私は、食堂に教師がいないか確かめた。

扉の横に少し豪華な祭服を着たメガネの男性がいる。

あの人が先生?

私が席を立とうとすると、センラ君が話しかけて止めに入る。


「エミリア様、無駄ですよ」


無駄?


「どうして?」


センラ君に視線を向けて問う。


「あの教師は、ホスケンス家に買収されています。

 目を瞑るように言われているので、助けてはくれません」


なんてことだ。

こんな事、許されない。

お母様はこの事を知っているのだろうか?

いや、きっと知らない。だって、知ってたらこんな事にはなっていない。


ライナー・ホスケンスは、自分の制服が綺麗になった事に満足したのか、

席を立って取り巻きと一緒に食堂を出て行った。


マック青年は、自分のハンカチで汚れた床を丁寧に拭いている。


私は立ち上がってカウンターから布巾をもらい、マック青年の傍に寄った。

散らばった食器をトレーに乗せ、ダメになった食べ物を食器に戻す。

布巾で汚れた床もふき取る。ベリアル様も一緒に手伝ってくれた。


「あ……」


私達に気づいたマック青年は戸惑いの表情だ。

よく見ると、スープで左手にやけどを負っている。


トレーと布巾をベリアル様に渡して、カウンターに持っていってもらう。

私はマック青年のやけどを負ってない逆の手を取って、

入口横の手洗い場に移動した。

自分の手とマック青年の両手を綺麗に流す。

火傷した場所には触れないようにゆっくりと冷やすようにね。

あとは、私専用のオリジナルの万能治癒をかけ、

3枚ハンカチを取り出し、自分の手とマック青年の手の水気を取る。

最後に、やけどしていた場所に清潔なハンカチで包帯の代わりとして巻いた。

汚れたマック青年のハンカチも綺麗にして絞る。


※エミリアはハンカチを複数所持しています。

 ヴォルステイン家のハンカチは一般的なものより長さも倍です。

 包帯としても使える仕様になっています。


マック青年は私にされるがままだった。

綺麗にしたマック青年のハンカチを渡しながらたずねる。


「これで手は大丈夫ね。

 他に怪我をした場所はない?」


マック青年は私の顔をみてボーっとしている。

あれ? 聞こえてない?


「傷はもう平気か?」


ベリアル様の問いかけで、我に返ったマック青年は、

背筋を伸ばして、私とベリアル様に頭を下げた。


「はっ! あっ……! もう、大丈夫です。

 そ、その、ありがとうございます!」


「気にしないで。

 それよりも、貴方も夕食はまだでしょう?

 一緒に食べましょう」


私はマック青年を自分の席の隣に誘った。

お互いに自己紹介もした。


マック青年の本名は、マリク・セドリーガン。

男爵家の次男だという。彼は、生粋のエルフだった。


今更ながら、ドルステン王国は人間とエルフが多く暮らす国である。

初代国王がエルフと人間のハーフだったのも関係している。

ドルステン王国中での比率は人間とエルフが4割ずつ、残り2割が別の亜人だ。

亜人と言ってもさまざまだけれどね。

ちなみに、獣人やドワーフ族が亜人に含まれているよ。


話を戻そう。


それで、なぜマリク君がライナーに目を付けられているのかというと、

マリク君が成り上がりの商家の男爵家で、もともと気が弱く、

ライナーの言いなりになってしまっているんだとか。

エルフ族は全体的におっとりしていて、面倒な事が苦手だ。

それが原因なのだとか。


私は食堂の係りの人に頼んで、マリク君の夕食を貰えないか頼んでみた。

しかし、夕食は1人1回きりだった。

スープだけは、少しなら出せるとのことで、

私はスープをもらって、マリク君の前に置いた。

2つあったパンの1つもマリク君に分けた。

ベリアル様は、マッシュポテトを分けてあげている。


マリク君は感謝の言葉を言いながら泣き出してしまった。

私は慰めの言葉をかけるが、マリク君はさらに泣き出してしまった。

キャシーさんとセンラ君も一緒に慰めの言葉をかけて、

パンや温野菜を渡していた。センラ君、きみ温野菜嫌いなだけだよね?

マリク君はこんなに泣いてしまうほど、いままで辛かったのだろうね。


そんなこんなで、夕食の時間は過ぎていった。


この後、私は食堂で起こったことをお母様に説明するために

宿舎内を探し回った。

けれど、結局お母様や他の教員を見つけることはできなかった。



テンプレのイジメ展開で、

ライナーのざまぁを期待した方ごめんなさい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ