126話『合同研修 1』
年末の小説家になろうは年末休みがあるみたいですね。
私も休み期間にストックためないとなぁ。
回りくどい説明を簡素にしました。
今日の治癒科の教室はいつもより人の数が多かった。
今回のテスト期間は、治癒学校の生徒達との合同になっている。
皆それぞれ、規則正しく列を作っていた。
学園と治癒学校の生徒合わせて、全員で160人くらいだろうか?
白と黄色の祭服に身を包んだ集団が治癒科の生徒達の隣に列を作っている。
帯の色がそれぞれ違うことから、
彼らは王都とヴォルステイン領の治療学校の生徒達だ。
青色の帯が王都の治癒学校の生徒で、赤色の帯がヴォルステイン領の生徒達だ。
集団の中からライトブラウンのクリ毛の髪をカチューシャで後ろに纏めた、
ジョシュアの姿もあった。
もちろん、隣にはお揃いのカチューシャをしたシンシアの姿もある。
2人はこちらに気づいて手を振っている。
私とベリアル様も手を振り返して、治癒科の生徒の列に並ぶ。
前列にはナナリーの姿もあった。
今回の実地研修テストは特別講師としてお母様も参加するようだ。
皆、治癒院の院長であるお母様に、尊敬の眼差しを向けている。
お母様は、自己紹介と、今回の研修内容を話している。
私とベリアル様が馬車の中で話した内容と同じ症状とその対策の説明だ。
「決して、無理な治癒魔法をかけないで頂きたい。
患者によって、魔法を制御することを心がけてくださいね。
炎症破裂のせいで、患者の体力が減ってしまいますし、
最悪の場合、破裂の痛さで命を落とす場合もありえます。
皆さんはそういった軽率な行動はしないと信じています。
私からの説明は以上です」
お母様の説明が終わった後、皆それぞれ中庭に移動した。
王都近郊の街までは、帆馬車で移動するのだ。
帆馬車のほとんどは、ヴォルステイン家の家紋と治癒院のマークが
施されている。
帆馬車に使用されている部分は全て取り外し組み替えることで、
簡易ベッドやテントになったりするのだ。
それに収納スペースも多く、治療器具を多く詰め込めることから
現代で言うところの救急車的なポジションも担っている。
帆馬車に乗る生徒は治癒学校の生徒と入り混じらせて
護衛込みの1台6人ずつ乗り込んでいる。
私とベリアル様が乗った馬車にはジョシュアとシンシアと、
2人の護衛が乗り込んできた。
きっとお母様のはからいだろう。
しばらくして、列を成していた帆馬車が一斉に出発した。
実地研修という名のテストへ向けて。
ちなみに、生徒達は侍女や侍従は連れてはいない。
上流貴族にはきついだろうけどね。
卒業後に、治癒院所属になるので、これも慣れるためなのだった。
雪避けのタイルの敷かれた舗装された道路を馬車で進む。
馬車の中でジョシュアとシンシアにそれぞれ挨拶を交わし、
今回のイベントについて2人の意見を聞いてみることにした。
「それで、ジョシュアもシンシアも今回のイベントについてどう思う?」
顎に手を当てて考えこむジョシュアは、しばらくして言葉を発した。
「僕の憶測なのですが、ここはゲームではなく現実の世界です。
ゲームの世界に転生してきたナナリーの性格は姉様に聞いたかぎり
かなり危険なものと推測します」
「危険と言うと?」
ベリアル様の問いにジョシュアは詳しく説明する。
「現実なのですから、
ゲーム画面のようなパラメータというものがありません。
なので、ナナリーの治癒の能力が、今どの程度なのか分からないんですよ」
ベリアル様はパラメータ? とつぶやいている。
「ベリアル様、パラメータというのは、能力を数値化したものです」
私の付けたしの説明にベリアル様は微妙な顔だ。
まぁ、これ以上詳しくと言われても、私もあまり分かっていないのだ。
苦笑いのジョシュアが話を続ける。
「ゲームではこのイベントで、ナナリーは聖女として目覚めます。
雪の星霊に気に入られて、治癒の力を使いまくるかもしれませんね。
そして、ナナリーは増長する可能性もあります。
自分はヒロインなのだからと、調子に乗ってしまう可能性もあるんです。
それと、もし姉様がナナリーのそんな状態を咎めた場合、
悪役令嬢エミリアが自分の治癒を邪魔したと敵視しかねません」
私とベリアル様も同じく、それらは考えていた事だった。
「そうなった場合、止めてあげる人が必要だと思うのです」
私とベリアル様はシンシアの言葉に露骨に嫌な顔をしてしまった。
敵視されるとわかっていて、そんな事したくないのが本音だ。
せっかく仲良くなってきたのに、イベントのせいで嫌われたくはないのだ。
ベリアル様に至っては、ナナリーのことを本気で嫌がっている。
ジョシュアとシンシアは目配せして頷く。
「その役目を、シンシアと僕で担おうかと思います」
えっ!?
「だ、大丈夫なの!?」
「心配は無用ですよ。姉様。
僕とナナリーのイベントは回避済みですので」
どういうことだろうと私はキョトンとした。
「僕とシンシアは既に結婚済みです。
書類もラナー王妃陛下のお茶会後に出してきました。
僕とシンシアは既に夫婦ですので、新婚ホヤホヤの僕に
手を出すことなんてありえませんよ」
と、ジョシュアとシンシアは左手の薬指に填めてあるオソロイのペアリングを
見せてくれた。とってもいい笑顔で。
うぇえええええ!?
「おめでとう」
「お、おめでとう……」
ベリアル様は普通にお祝いの言葉を贈っている。
私も戸惑いがちにお祝いの言葉を贈った。
というか、気が早いな君達!
私なんかこの間、婚約の解消をしたばっかりだぞ!
「姉様とマリエラ様が婚約の解消をしたばかりでしたので、
不敬かとも思ったのですが、こんな時こそ、嬉しい話の1つくらい
あってもいいんじゃないのかって陛下からお言葉があって」
なるほどね。
そういう考えもあるのね。
「じゃあ、ナナリーのことは、2人に任せるわね。
結婚しているからと言って、ナナリーがジョシュアに色目を使わないとも
限らないのだし、本当に気をつけてね」
私の言葉に、2人は頷いてくれたのだった。
※
ちなみに、この世界での結婚は男女14歳の社交界デビュー後からできます。
12歳~宮廷拝謁をし、パーティなどに出席して周りに認知させます。
デビュタント後、立派な大人として認められるのです。
大体は、14歳の年にする貴族が多いけれど、12歳からさせる貴族もいます。
親の都合や政治的な都合に合わせる場合がほとんどです。
テスト期間の話は長いです。
治癒院と治癒学校がごっちゃになっていたので修正しました。