122話『オベール公爵の苦悩と憂鬱。』
まさかの、オッサン視点。
オベール公爵視点です。
パシン!!
「何て事をお前はしてくれたんだ!!」
「父上……?」
私は、震える手を息子の頬に叩きつけた。
頬を押さえ、何が起こったのか理解できていない息子に
さらに怒りが満ちてくる。
「カイン!!
お前は、自分が何をしたのか本当に理解していないのか!?」
私は、馬鹿な息子にわかりやすく説明した。
エドワード王太子殿下の婚約者である、エミリア様に働いた、
さまざまな無礼な振る舞い、濡れ衣を着せようとした事や、
湖でカインがエミリア様を湖に突き落とした事などだ。
まさかとは思ったが、息子の表情で事実であることを実感した。
私の話を聞いていたカインは、顔色が青くなっていく。
そして、湖の一件は何故自分がバレたのか分かっていないようだった。
「お前は、本当に分かっていないのだな」
「わかっていない……それはこちらの言葉ですぞ。
エミリア嬢は、ナナリーを貶めようと、裏でさまざまな悪行を
していたのですぞ!! それでも、私だけを責めるのですかな!?」
パシン!!
私はたまらず、もう一度息子の頬を叩いていた。
いつから、私の息子はこんなにも馬鹿に成り下がったのか……。
この話を持ってきた妻は静かに、成り行きを見つめている。
妻の瞳は息子への嫌悪が篭っていた。
「エミリア様は、エドワード王太子殿下の婚約者だ!!
その婚約者であるエミリア様には王族専用の暗部の者が常に見張っている。
暗部の者達から報告書を預かった。
これを見ても、お前は自分は悪くないと言うのか!?」
私は、書類をカインに手渡す。
王の印がしてある書類には、暗部からの報告書が入っていた。
それには、エミリア様は一切ランゲス家の令嬢に関わっていない事や
ランゲス家の令嬢の妖精が自作自演をしていた内容などが載っていた。
湖の一件については、認識阻害のフードとマフラーは我が家の物である。
使用品目を確かめれば、マフラーとフード2着が無くなっていたのを確認した。
そして、湖での戦闘でフードの男の一人が使用した剣術の流派が
バイゼイン家のものだった事や、フード越しの声なども載っていた。
カインは書類を読んでいくにつれ、顔色が真っ青になっていく。
ようやく、現状を理解したのだろう。
だが、事は起こった後だ。
この責任はキッチリとカインに償わせなければいけない。
私は、もう1つ別の王印のされた手紙を広げる。
「カイン」
名を呼ばれた息子は、ゆっくりと顔をあげ、脅えた目で私を見た。
「お前が将来、王宮に勤める事は取り下げになった。
来月から学園を退学し、星教会に勤めることだ。
それと、汚名のついたお前は、
婚約者であるマリエラ様との婚約も破棄された。
これは、王命でもある。謹んで受け止めなさい。
オベール家の事は、弟に継がせる。 安心して教会に身を置け」
驚愕の表情のカインは震えながら私にすがり、訴える。
「お、おまち……おまちください父上!」
そんなカインを私は払いのけた。
扉の横にいた家令に命令する。
「部屋に連れて行きなさい」
「ま、まって! 父上!! 父上!! ――話を――!!」
家令と侍従に腕を掴まれて連れて行かれる息子に
私は深いため息をついた。
書いてて思った。
これが、子供を叱るパパンの気持ちか・・・。
罪が重い!!!
次はコンラートのざまぁ 回です。