111話『挫折。』
短いです。
今まで私は何のために頑張ってきたのか。
これじゃあ、何をしても意味がないのではなかろうか……?
そんなことを考える私は、ごろんと体制を変えてベッドにうずくまる。
私はあの後、寮に帰ってきてすぐに気を失った。
真冬の湖に落とされたのだ。
よく生きていたものだと思っていたけれど、
実は星霊シェイドの加護の指輪のおかげだった。
あれが無かったら、私は死んでいたという。
あの時の話をポアソン君はこう語った。
「エミリア様が湖に落とされる前に倒れていた侍女たちは無事です。
彼女達は眠りの魔法で気を失っていただけでした。
湖に落とされたエミリア様の後を追って、
ベリアル様が湖に飛び込まれました。
エミリア様を湖から助け出したすぐ後に
ちょうどよくこちらに向かっていた馬車が到着しました。
助け出したエミリア様をベリアル様はすぐに魔法で体を温め、乾かしました。
持って来ていた回復のポーションをエミリア様に飲ませて、
馬車で寮に向かっている時にエミリア様が目を覚まされました。
ちなみに、アホ共はエミリア様を助け出したあと、
馬車が向かってくる音に驚いて、
森のほうへすぐに立ち去って行きましたよ。
昨日襲われたという、ナナリーは無事です。
ピーラは成魚でしたから毒もありません。
彼女に怪我はありませんでしたよ」
今、ポアソン君は私の寮部屋にいる。
今日1日だけの、ベリアル様が戻ってくるまでの護衛だ。
指輪の修復の為に、ベリアル様はヴェルマに一旦戻ったそうだ。
私はポアソン君から話を聞いたあと、
もう少し寝たいと言って今に至る。
何もやる気が起きない。
ラナー様のお茶会はもう10日後に迫っているのに。
頼んでいたパステルカラーのドレスも、
ドレスルームのトルソーに飾り済みだ。
だけど、まったく行く気がしない。
むしろ、行って何をしゃべると言うの?
何をしても無駄なのに。
行って話し合ったところで、結局変わらないのではないだろうか?
運命の物語はもう進んでいる。
私が死ぬという絶対の運命に向かって。
思い出しても震える。
そして涙が止らなくなる。
イケメンsたちはきっと私を現行犯と思っている。
犯人だから、あの場所にいた理由は証拠隠滅するためだと。
実際に、湖にいたピーラはあの後全てベリアル様の魔法で退治したという。
確実にあの人達にとっては、私は悪役令嬢なのだ。
私にナナリーを恨む理由なんてない。
そんなことすら、彼らは考えない。
それほどまでに、私は彼らに恨まれているということだろうか?
うじうじ考えていると、少しだけ眠気が襲ってくる。
起きたら、カーラに頼んでラナー様のお茶会を
不参加にする旨の手紙を出してもらおう。
次も短いです。