10話『ヴォルステイン家。1』
長かったので2回に分けました。
エミリア視点に戻ります。
今、私は地下室の本棚前にいます。
記憶が戻ったことにより、私が住むヴォルステイン領について調べることにした。
私が持っている本は「ドルステンの栄え」という本だ。
ヴォルステイン領は王都から2つ領を挟んだ場所にある。
山岳地帯の下にある森に接していて、森にはエルフが住んでいる。
森からは川が流れ、ヴォルステインの首都ブルードがある湖に繋がる。
というか、人間側が森から流れて溜まった湖に首都を作ったってところね。
湖と森を結ぶ一本の川沿いに街があり、街には亜人が2割エルフが3割、
人間が5割暮らしている。そして、街からお城まで橋が通っている。
このお城がブルード城である。
湖の中央に建てられた城は外壁は滑らかな白いコンクリートのような材質で
ぐるりと城を囲っている。
お城は土の土台の上に滑らかな石の台座で高床にし、
尖った屋根のある塔と赤いレンガの屋根で作られた石壁の屋敷が寄せ集まって
出来ている。
一番大きい本宅だけを見るなら、地球の教会のような作りにも見える。
街から見る景色だと、周りにある尖塔が本宅をお城たらしめる配置にしてある。
これは、王都のお城より豪華に見せないよう配慮された作りだからだ。
そして、私がいる地下室は、ブルード城の元牢屋だ。
前回説明できなかったからここで、我が家についても話しましょう。
我が一族であるヴァルステイン家の紹介です。パチ。パチ。パチ。
我が一族は、ドルステン王国の守護家と呼ばれている。
父親の名前はジェバース・ブルード・ヴォルステイン侯爵。
代々王家に使える大臣の一人で王政の治癒機関の総責任者である。
実は、この治癒機関はお母様の発案らしい。
エレノア・ナスカ・ヴォルステイン侯爵夫人。
社交界の聖女などと呼ばれている。
実際に、治癒魔法に関しては王国一で聖女らしいと思う。
ヒロインであるナナリーが、現れるまでは。
それで、治癒機関というのはどういうものかと言うと、
日本で言う昔の厚生省みたいなものである。
※あくまでみたいなものである。ここ重要。
コホン。
父であるジェバースは18歳のときに、母のエレノアと結婚した。
20歳の時に父親から領地を継ぐと、母エレノアと共に、領地で治癒機関を
立ち上げ、治癒院を設立。
母エレノアの自由と突発的、画期的な発案の賜物なのだ。
父と母の馴れ初めは母から聞いたことあるけど、意味不明だった。
星霊様(聖霊の上位種)からのお告げで結婚したらしい。
治癒機関についてだったね。
ここからは、説明になっちゃうけど。
私は本のページをめくった。
「ドルステンの栄え」は国の観光名所本です。
なぜ、地下牢屋の本棚にそんな本が入っているのか?
それは、外に出られない貴族様のためです。犯罪者でも貴族様なので。
「外には出せないけどいろんな場所の絵つき本で我慢してください」ってことです。