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103話『ナナリーの困惑』

ナナリー視点です。




午前の授業が全て終わり、私はエド様を迎えにいく。

お昼ご飯をエド様と一緒に食べるのよ。


歩きながら、私は前日のことを思い出す。

ふつふつと湧き上がる怒りが表情に出ないように必死だ。


なんなのよ!! マリエラ!!

いつもいつも、私に酷い事を言って!!

私が誘ってあげたサロンでも気を失うなんて!!

マリエラの侍女が言うには、気管に飲み物が入ったって言ってたけど。


貴族食堂でエミリアもマリエラもちょっと優しかったから、

こっちも構ってあげたのに!!

出る言葉は説教ばっかりじゃない!!


私はヒロインなんだから、

エド様と仲良くしたっていいでしょう!


ここは、私の世界なんだから、

あんな事、言われたくらいじゃ負けないんだから!!


そんな事を考えながら、私はいつも通りエド様の教室に向かう。


「ナナリー・ランゲス様」


下を向いて歩いていたせいで、前にいる人物に気付かなかった。

顔を上げて、名前を呼んだ相手を見る。


そこには、見覚えのあるメイド服を着た女が立っていた。


「私に何かよう?」


メイドは美しい礼をして名乗りをあげた。


「私はマリエラ様の侍女をしている、ヘンリーと申します。

 本日は、マリエラ様のご命令でナナリー様の元へ向かうよう

 仰せつかりました」


「マリエラが?」


さっきまで考えていたムカつく相手の名前だった。


「私は、マリエラ様に、今後ナナリー様の学園でのお世話を

 お手伝いするように仰せつかりました」


なっ!?


「ど、どうしてよ!?

 侍女がいない私への当て付け!? 馬鹿にしないでよ!!」


「ナナリー様、落ち着いてください。

 そういう意味ではございません」


じゃあ、どういう意味だっていうのよ!?

私は続きを顎をしゃくって促がす。



「私は、ナナリー様のお手伝いを純粋に頼まれただけです。

 悪い意味ではありません。

 

 それに、例えば、サロンやお茶会時など、

 上流貴族のお相手ならナナリー様ご自信でお茶を注がれるのは、

 何も問題ございません。

 

 ですが、同格もしくは爵位の無い庶民の方を相手に、

 ナナリー様自身がお茶を注ぐのは、

 相手より私は下だという意思表示になりかねません。

 貴女様がそういう気がなくとも、注がれた方はナナリー様を侮られます」


マリエラの侍女、ヘンリーは私に分かり易く説明した。

そんな風に言われたら断りずらいじゃない……。


「わかったわよ……す、好きにすればいいでしょっ」


「かしこまりました」


そう言って頭をさげる侍女を、私は無視してそのまま歩き出した。

侍女ヘンリーは一歩下がった場所から私に着いてくるようになった。


一ノ実クラスの教室に着くと、エド様は重要な書類を片付けるために

王族用の政務室にいると言われた。


もー、エド様ったら最近忙しいって、お昼も一緒に居てくれないんだから!

私はヒロインなのよ!?

書類そんなものより、私を一番に優先するべきでしょ!?


「ナナリー様? 貴女、ナナリー・ランゲス男爵令嬢?」


なによ!? 今日は話しかけられる回数が多いわね!


「そうだけど?」


振り返ると、細身で短髪の栗毛の令嬢と黒髪黒目の令嬢がいた。

またエミリア関係で私に悪口!? 

いい加減にしてよ!! 私は何もしていないじゃない!!



「ナナリー様、こちらを受け取って下さいませんか?」


女子生徒たちが渡してきたのは、サロンの招待状だった。


「これは……? なんで?」


「私達、マリエラ様とエミリア様に貴女の話を聞いたのよ」


「え?」


なんで、マリエラとエミリア!?

私は意味が分からなかった。


「貴女のお父様、ランゲス男爵と私のお父様は同じ職場なのよ。

 同じ、宮廷貴族ですもの。仲良くしたいなって思って」


詳しく話を聞いたら、宮廷貴族というのは、

領地を持たない貴族の大半の事をさすのだという。

私のお父様は、王宮の財務省に勤務しているらしく、

この令嬢達の父親はお父様の同僚という話だった。


どうやって私の事を知ったのかと聞くと、マリエラとエミリアが、

私を紹介してくれてサロンに誘うようにほのめかしたという。


べ、べつに、マリエラとエミリアには感謝なんてしてないんだから!

私が、この世界の選ばれし者でヒロインだから、

きっとこの世界が私を導いてくれたんだわ。


きっと、そうよ……。


悪役令嬢のくせに……

でも少しはあの2人を褒めてあげてもいいわね。


エミリアもマリエラも話してみるとイメージと違うのよね……。

やっぱり、ゲームの世界だけど現実だから?

結構、まともな事を言うのよね。


この前の食堂の時の、小説の話もなかなか面白かったし……。

エミリアのケーキも、おいしかった。


まぁ、私は優しいから?

話しかけてくるんなら、話相手くらいにはなってあげるわ。


「ありがとう。 受け取るわ」


私は令嬢2人からサロンの招待状を受け取って、その場を後にした。


向かうのは、カインとコンラートのところだ。

エド様がダメなら他の2人の所にいくしかないしね。


カインはきっと図書室ね。

1月の学年末テストに向けて、もう勉強しているんですって。

コンラートは訓練場かしら?


それにしても、最近ずっとリリンを見かけていない。

探したい人がいるってどこかに出かけたっきりで好感度のチェックも

出来ないじゃない。


イベントだって、どのタイミングで動けばいいか、

相談したかったのに……



あれ? 12月ってイベントあったはずよね?


そういえば、リリンが居なくなる前に

12月は湖に行けって言ってたっけ。


でも、誰といけばいいの?


もう!!

どうしてリリンはこんな時に居ないのよ!!


とりあえず、12月中に湖にエド様を誘って行ってみるしかないわね!





次エミリア視点に戻ります。

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