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わたし"だけ"が魔法使い  作者: 丸晴eM
魔法使いの第一歩
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05 仮杖

 学園の敷地を出て、裏の森へ向かう。この奥には2階層だけの訓練用ダンジョンがあるので、そのうち授業でもお世話になるそうだ。


「剣術科も槍術科もこの森を体力づくりがてら走り回るし、弓術科は薬の材料を探しに来るわ。夏には湖でのイベントもあるし楽しみにしててね」

「水泳大会ですか?」

「まぁそんな感じよ、うふふ。シェリーちゃんは大変かもね~でも先生も頑張るからね!」

 

 なんだかよく分からないけど、楽しそうだからとりあえず頷いておいた。


「さて、どっちに進もうかし…ら、何どうしたの」


 学園をぐるりと囲う壁を抜けて、森へ出た。

先生は誰かと話してるみたいだけど、もしかして契約してる妖精さんかな。


 ぼそぼそと話し合いが続き、険しい顔でわたしを振り返る。


「面倒なことになったわ」

「…どうしたんですか」


 そんな前置きで話されると、正直聞きたくないんだけどなぁ。


「この辺りに妖精の木は3本あります」

「あれ、教えてくれたんですか?」


 何が面倒なのか、ただただラッキーでは?


「一々木を調べて探すから3日は覚悟してたんだけど…まぁ結果は同じか。あっちと、そっちとむこう。一つは川の近くで、後はダンジョンの傍と、丘の上。さてどこから攻める?川沿いに丘に向かって、丘でお昼食べて、ダンジョンの方はまた明日かしら」

「全部回らなくちゃだめなんですか?ひとつでいいんじゃ…」


「そこの妖精がお呼びだそうよ。どこも是非自分の木を使って欲しいって。どの木を使うか厳正な審査をして欲しいそうだから、ちゃんと実物を見て選んで欲しいんですって」


 嬉しいお誘いなはずだけど、スケジュールから察するにそれぞれ離れた場所にあるみたい。

それに、全部見て決めて欲しいということは、二週目があるわけで。


「好かれるのも問題ねー。まぁ最近魔法使いが少ないし、向こうも構って欲しくて仕方ないみたい」

「自分の家が切られちゃうのに、ですか?」

「妖精の住処なんて、お気に入りの休憩所みたいなものよ。ころころ変わるし、どこでもいいの。でも皆、シェリーとお気に入りを共有したいみたい」

「はぁ」


 でもどうせ"仮"だから、すぐ手放すことになるんじゃないのかな?


「仮杖だから、妖精と契約できたらすぐ使わなくなるんですよね。一目見て気に入った、とかしちゃ駄目でしょうか」

「そうね、大雑把に説明すると、仮杖は杖の元なの。仮杖を提供してくれた妖精がそのまま力を貸してくれる事が多いし、仮杖を苗床にして新しい杖を作るから、ずっと使うと取ることもできるわ」


 なるほど。仮杖は使い終わることなく、違う形で使うのね。


「だったら3つとも持って帰るのはどうですか?全部揃ってからじっくり見比べて選ぶ、みたいな」

「そんなことしたら選ばれなかった木の妖精が怒るわよ」

「贅沢に3本とも使うとか」


「…それは()()ね」


 こうまで粘ってでも、できれば回避したい仮杖探し。


 その心は、しんどいから!


 全魔法使い共通なのかどうかは知らないけど、大体の魔法使いは体力がないものなのよ…。

あんまり汗をかきたくないしね。


「ちゃんと歩きやすい靴、履いてきたわね?うん、じゃあ行きましょうか!」


 かくして、過酷な耐久ピクニックが開催されたのだった。

 

  

 


 

*** 

  

 


   

「それで筋肉痛なの?」


 歩いて、歩いて、登って、歩いた。先生が丘と称した場所は、山と何が違うのか分からない傾斜で、ふくらはぎが悲鳴を上げている。


「登りよりも下りの方が足にきてさー、もうへとへとだよ。戻ってこれたの、ついさっきだし」


 暗くなる前には学園に戻って来れたが、正直許容オーバーだ。

3つの木を今日中に回るには距離が離れていたので、また明日ダンジョンの傍まで歩くのだ。

ぐったりして、ベッドに倒れているなう。


「フィフィ達はね、身体能力のテストをしたの。ティティはね、クラスで一番足が速いの」

「へぇ、ちょっと意外」

「ユーグは体の軸がしっかりしてるって褒められていたの」

「子供の時から、稽古つけられてたからね。ユーグのお父さんも冒険者なんだよ。わたしのお父さんとチーム組んで冒険してたんだって」

「親同士も仲がいいなんて、素敵なの」


 まぁでも、お父さんはユーグのお母さんが苦手らしくって、家に遊びに行くと渋い顔してたけどね。

なんでも女性に優しく男に厳しい性格らしく(私は可愛がられた事しかないから知らないけど)、色々雑なわたしの父はビシバシ小言をくらっていたそうだ。 

 

「フィフィちゃんはどうだったの?」

「フィフィは一番、目が良いの!ギリギリの間合いを見切れるの」

「それ一番かっこいいじゃん!」

「そ、そう…?そうなの!」


 食い気味に褒めると、腰に手を当てて胸をそり、ちょっと偉そうなポーズをとった。可愛い。


「走って、投げて、振って、模擬戦して疲れたの。一緒にストレッチするの。使った筋肉はきちんとほぐさないとダメなの」

「はーい」


 フィフィちゃんの真似をして、しっかり体を伸ばす。

明日にそなえて、早めに休むことにした。


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