1(日記)
四月二十五日
ポーラの行方がわからないまま、一日が過ぎようとしています。
誰に聞いても、あの子の姿を見つけることができません。
嫌な予感が、とめどなく私を襲います。
愛しい孫の姿を探して、長く私達の世話をしてくれているロイドも、気が気でないようです。
見ていて痛々しいほどですが、無理もありません。
ポーラは私にとっても、可愛い娘のようなものです。
息子のエドワードも、いつもの遊び相手が見当たらず、とても心配しています。
ああ、どうか、彼女が無事に見つかりますように。
四月二十七日
何という哀しい出来事。恐れていたことが現実になってしまった。
ポーラの変わり果てた姿に、言葉もありません。
彼女の首だけが見つかったのです。
ロイド。どうか、あの方を許してあげて。
あの方をどうすることも出来ない私達を。
あなたにとって、これ以上の苦しみがあると、私には思えない。
それでも、許してほしいのです。
全ては、あの方に宿る魔物の仕業。
私達は、この城に幽閉されて、呪われた末路を辿って行くのでしょうか。
瞳を閉じれば、今も思い描くことができる。
幼く、あどけない、ポーラの笑顔。
あの子が、一体、何をしたというのでしょう。
子供達も悲嘆に暮れています。
神よ、どうかポーラが安らかでありますように。
四月三十日
あれから、エドワードはポーラとのお別れが理解できず、会いたいと駄々を捏ねる日々。
けれど、少しずつ意味がわかってきたようです。
エドワードは涙を堪えて、独りになったロイドが可哀想だと言います。
だから、もう我儘を言わないというのです。
優しい子。
あなたの笑顔が、きっとロイドを救ってくれるでしょう。
神よ、独り残された彼に、どうか救いを。
そして、優しいあの方の中に宿る魔物に、どうか罰を。
五月六日
庭に出ていると、久しぶりにロイドが笑ってくれました。
私に小さなメダルを見せて、エドワードがくれたのだと語ります。
そのメダルは、以前エドワードがポーラにあげたものと一対になっているメダルです。
これを持っていれば、ポーラはいつも傍にいるのだと、エドワードはロイドを励ましたそうです。メダル一枚で、ポーラを失った哀しみを拭うことなどできないでしょう。
エドワードが、少しでもロイドの寂しさを和らげてくれますように。
あの方の中の魔物も、最近は姿を現しません。けれど、優しいあの方の調子が優れません。枕から頭の上がらぬ日々が続いています。
やさしいあの方に罪はないとわかっていても、私はこの安息の日々に安堵しています。
どうか、これ以上忌わしい出来事が起きませんように。