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藪枯らしの家  作者: 森中満
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「じゃあ、これからよろしくね。何かあったら、そこの電話で、麓の僕の家まで連絡して」

「はい。こちらこそよろしくお願いいたします。」


まずは、掃除に取り掛かった。僕は掃除が嫌いだ。そう、例えば、試験前になると急に掃除をしたくなる。僕にとって、掃除とは、一種の現実逃避だ。思ったより、僕の家出先は過酷なようだ。


「帰りたい。なんて言えないよなあ」


とにかく、僕はなんとか鼻歌を歌いながら、掃除を進めた。まずは天井。ほこりを頭からかぶったみたいになった。次に暖炉とストーブ。おじさんは、ほとんど灰をかいたり、煙突掃除夫を呼んだりはしなかったようだ。やがて僕の肺はほこりと灰でいっぱいになった。身体中が不快に感じる。僕はとりあえず水を浴びようとした。冷水だった。山の地下水を引いているらしく、ガスで沸かさないと、お湯が出なかった。


「暮らせるわけないだろう!おじさんはよくこんなところで暮らせたな!おじさんはきっとほこり一族の手先で、世界中をほこりでいっぱいにして掃除道具の世界を破滅させるつもりなんだな。あ、これって小説のネタになりそうだな。」


お風呂場でいい話の種が思いつく人が多いそうだ。そして僕もその一人だったというわけだ。

思わずにやけてしまうのは許してほしい。なんだか小説家の一員になったかのようだ。


だが、烏の行水をした僕を待つのは、穴ぐらの家。とりあえず、僕は床掃除をした。その途中で、大きな棚を動かしたら、ゴキブリが出てきた。きっと、おじさんのほこり帝国建設のための傭兵に違いない。僕は、ほこり帝国創始者であるおじさんに代わって彼らに給料を与えた。ゴキブリ用の毒入りの餌をいたるところに置いたのだ。これで、口封じと証拠隠滅が同時にできる。

人の世には、便利なものがあるものである。


次に、窓掃除。これはヤブガラシをむしり取るだけで早く終わった。そのあとは、キッチンや玄関など、こまごましたところを掃除するだけで終わった。ここまで掃除するのに約2日。おじさんが支給してくれたパンや、インスタント食品を食べながら、なんとか、僕が住めるくらいまで掃除することができた。

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