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藪枯らしの家  作者: 森中満
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呆れられてしまっただろうか。何を隠そう、このおじさんは、小説家だ。僕の夢の原点であり、憧れの人。最近、執筆活動に忙しく山の管理の仕事が滞るようになったため、僕を一夏だけ雇ってくれたのだ。せっかく、こんなに近くにいるのだから、何か小説についてアドバイスをもらえるかもしれない。改めて、僕の家出の幸運さに気づく。久しぶりにワクワクしてきた。


「ぼうっとしない。」

「あ、すみません」


木々ははじめより、深い緑に変わり、空気も心なしか澄んできたようだ。


「さあ、ここだよ。ここで森山くんには一夏、山の管理をしてもらう。もちろん毎日麓から通ってもらってもいいんだけど、どうする?」

「いえ、ここに住み込みで働かせていただきます。」


冗談ではない。もしも麓から通って誰かおじさん以外の知り合いに見つかったら家に連れ戻されてしまうかもしれない。


「じゃあ、やってほしいことを説明するね。まず初めに一番大切なのは、山のゴミの管理、次に肝試しなど、危ない行動をとっている人がいないかのチェックをお願いします。それとこれはお願いなんだけど、僕は個人的にこの山の動物の写真を撮って記録していて、定点カメラを所々にしかけてあるから、その管理もお願いしたいんだ。いいかな?」

「わかりました。」


僕の家出先は、まさに森と調和した家だ。都心にあるような、いわゆる『森と生きる』とかそんな生半可な家ではない。文字通り、森と調和している。もっと言えば、森と同化している。

ヤブカラシに覆われた丸太でできた壁は、所々虫に食われたような跡がある。壁だけでなく、屋根の上の方までヤブガラシに覆われて、この家に住んでいる人すらも、枯れてしまうような勢いだ。家の中にはいれば、そこは思ったよりも広く、ヤブガラシに覆われて見えなかった部分があることを知る。部屋の隅っこには、ストーブも暖炉もあった。一応水も出るし、ガスも電気も使えないことはないらしい。室内はある程度は掃除されていたが、それもおじさんが毎日歩くところとか、いつも座っている椅子など生活に必要なところだけだった。一言でこの家を表すとしたら、

「きつねの住む穴ぐら」だろうか。窓もだいたい曇っているし。


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