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「それじゃあ、早速山小屋に行こうか」
「あの、僕全くトレッキングとか、山登りとかしたことないのですが、何か山登りのコツってありますか?」
「まあ、いろいろあるけど、この山で暮らすために、必ずやってほしいことは、夜は山小屋の窓はきっちり閉めることかな。別に閉めなくても、死にはしないんだけど、風邪を引いたりとか、いろいろ大変だから。それと、その服装は山登りの服装ではないねえ。そんな格好だと、お姫様に嫌われてしまうよ?」
「お姫様ですか?」
僕のおじさんはメルヘンな人なのだろうか?小説家というのは、いつも何かを考えているのだろう。
「この山でニニギノミコトとコノハナノサクヤビメが出会ったかも、しれないからね。コノハナノサクヤビヒメはとても美しい姫だったらしいよ。いい人いないの?」
「残念ながら。」
そんなたわいもない話をしながら、僕はおじさんとゆっくりと愛宕山を一歩一歩進んでいく。
「え…。いも虫!」
「ぶっ!蜘蛛の巣だあ!ああ、虫じゃなくてすみません。」
「…森山くんはいつもそんなにうるさいの?」
「いえ、いつもはこんなにうるさくありません…。」