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追われる僕と終われる彼女  作者: ササタニタクシ
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前田賢介という僕。

とぼとぼ目的も無くこの村を歩いていた。

おじぃさんが言った通り普通の村だった。

スーパーがあったり、田んぼがあったり、コンビニがあったり、そして夜のお店があったりと特に何も変わらない村…

「!?」

いや、その普通という言葉は、一瞬に打ち砕かれた。

「ライオン?ベビ?なんだあれ?」

体は、ライオン、そして小尾にヘビになっている奇妙な動物に遭遇した。

しかもでかい。

「あれここら辺じゃ見ない顔だね?新入りかい?」

奇妙な動物の横からちょこんと僕と同じ位の身長の村人が出て来た。

「ごめんね。びっくりしたでしょ?こいつは、キメラの山口さんっていんだ。」

「はぁ…山口さん?」

なんか独特なネーミングセンスしてるな。

「そうそう山口さん。懐くと可愛いものだと頭もいいし。」

「からかうのは、やめないか。斉藤。」

えっ?、この山口さん日本語喋るの!?

「小僧、キメラという動物を見るのは、初めてかい?それならびっくしても仕方ない現世には、いない動物だからな。」

「言葉を発するんですね…初めまして前田です。よろしくお願いします。」

「あーあの間違えここに来た人か!話は、聞いてるよ。というかこの村で君の事を知らない人は、いないんじゃ無いかな?あの頑固なじぃさんが庇ったのだからね。」

「頑固なじぃさん?」

「そうだよ。あのじぃさんは、男性のいう事は、全く聞かない。スケベなじぃさんって知られてるんだわ。そんなじぃさんが、男性に手を貸したのは、本当にびっくりしたよ。」

あの人そんな人だったのか。

まぁでも確かに頑固なのは、わかっていたか。

「そう俺のこのキメラの姿もあの人の技を使えば解けるんだ。だけど、罰だの嫌だの怠いだので、直してくれないんだ。」

「山口さんは、なぜそんな姿に?」

「まぁ、俺は、生きているうちにいろんな罪を犯してここに来たからな。窃盗、殺人、強姦、恐喝。犯罪とわれるものは、すべてやったと思う。その罪が重なって最後は、死刑になったんだけどな。山口幸太郎。この名前を知らないかい?」

山口幸太郎という名前を知らないはずがない。

法廷で死刑を宣告された中でも歴代最悪の犯罪者と呼ばれていた。

死刑を宣告された時に声をあげて笑っていたと言われている。

そして、殺人を起こすたびにあえて目立つような証拠を越して、顔を何度も変え、十面相とも呼ばれていた。

しかし、死刑が執行されたのは、確か僕が生まれる前約40年前の事だ。

「どうだ?知っていた?」

「知ってます。でも、もう亡くなったのは、相当前の事じゃないですか?」

「まぁ40年前の事だからな。俺も色々とあってここにいるんだ。今は、この村のために毎日働いている。そんな日々を送っているって感じだな。」

なんか殺人鬼と話すのは、とても新鮮な気持ちだった。

人間の姿では、無いのだが。

「ところで、君は、何故こんなところにいるんだい?」

キメラ姿の山口幸太郎と話していると隣にいる斉藤さんと呼ばれるおじさんが話入って来た。

「あっはい。気分転換に散歩をしていた所です。」

「そうかそうか、色々と大変だったでしょう。間違えてここに来たのだから、また現世に戻るのかい?確か間違えて来たならもう一度現世に戻れるでしょ?」

「いや、それが色々とあってここに来るのは、2回目なんです。」

あの戻った経緯を簡潔に説明した。

「あの頑固物がちゃんと説明すれば良いものを」

「いや、自分が弱々しく泣いていたのが悪いので。」

「そうかい?君は、偉いね。責めないその気持ち感心するよ。」

偉いのか?普通だと思うのだから、結局自分が悪いんだし。

「あの、質問なんですが、山口さんと斉藤さんは、ここでどんな仕事をしてるんですか?」

「仕事か〜私は、特に何もしてないかな。山口さんは、仕事をしてるけど。」

「俺の仕事は、ここに間違って来た魂が暴走したり、過ちを起こした時に罰を与えるために地獄に送る仕事をしてるんだ。」

「魂を地獄に送る?」

「全部の魂がお前さんにみたいにお利口な奴ばかりじゃないからな。現世の時の俺みたいな奴がたまに此処に来るんだ。まぁ俺も此処に来た当時は、送られる立場だったけどな。」

なかなか現世でも此処でも激しい人生を送っているらしい。現世が殺人鬼だしな。

「ちなみにこれは、アドバイスだが、地獄には、行かない方がいいぞ。あそこは、相当な所だ。」

この人がこう言う位の所なのだから、相当なものなのだろう。

「ちなみに私斉藤は、この山口さんに殺された被害者なのだよ。」

「はい?」

「いや〜刃物でグサッと心臓を突かれてね。あれは、痛みを感じない位瞬殺だったね。」

「斉藤さん?どう言う事ですか?」

此処は、すらっと驚くことを言う場所なのだろうか?落ち着いて話が全く出来ない。

「まぁ、彼は、世間的には、殺人鬼と恐れられていたけど、ただの殺人鬼じゃない。優しい殺人鬼なんだ。」

「恥ずかしいからやめろよ。斉藤。」

「山口幸太郎はね、自分から命を絶とうとする人達の前に現れて自らの手では、なく他人の手で殺しを行う。言わば自殺をなくそうとした人なんだ。」

「私も自殺をしようとした時に現れてね。殺されたってワケなのだよ。」

僕は、自殺をしようとしたことが無いから、その気持ちは、よくわかない。死んだ事には、変わらないのでは、無いのか?

「あの時は、狂っていたからな。自殺するんだったら殺してやろうと思っていた。俺の両親も1人子供を残して2人で自ら命を絶ったから自殺ってものが大っ嫌いなんだ。」

「だったら、死なないように説得すれば良かったんじゃないですか?」

僕は、なぜ殺人鬼に反抗しているのだろうか。

「あはは。前田くんの言った通りだよ。殺さず説得すれば良かった。ただ当時は、人が決めた事だからそれを変えるのは、してはいけない。だけど自殺だけは、しないで欲しいだから俺が殺してやる。と思っていたからな。本当に殺人鬼そのものだよ。」

「こんな場所俺が荒らしてやる。」

そんな話をしていると遠くから罵声のような声が聞こえた。

「さてと、仕事だな。前田くんもし地獄に行く場合は、ちゃんと送ってあげるから安心してくれ。それじゃな。」

そう言い残し山口幸太郎事キメラは、遠くに飛んで行ってしまった。

「私は、彼に感謝しているんだよ。」

殺されたのになぜこの人は、殺した犯人に感謝しているんだ?

「まぁ、殺されて何故感謝しているのか?と疑問に持つのも当然だろう。それが普通の答えだよ。だけど、現世にいた私は、毎日働いて毎日怒られて、毎日酒を飲んで、本当にダメな人生を送っていた。そんな時に彼が現れたのだよ。」

「何故、死ぬ前に殺人鬼が斉藤さんの前に?」

「それについては、私もわからない。そしていくら聞いても山口さんは、教えてくれないんだ。もう昔の事だからと、いつも同じ答えしか返ってこない。」

殺人鬼には、殺人鬼なりの何かがあるのだろう。それは、多分普通の人には、わからない行動。

「そこで私の話を聞いてくれてね。そこで初めて会ったのに以前何度もあった事があるかのようにずっと話しを聞いてもらった。それで自殺をするなら俺にいいな。と言い残して彼は、何処か消えてしまったんだ。」

歴代最悪の死刑囚、十面相、殺人鬼そんな世間から白い目をみられていた山口幸太郎は、人間らしい人間なのかもしれない。

初めて言っていた優しい殺人鬼。

その名前は、あっているのかもしれない。

「その後私は、彼に頼んで殺して貰って此処に来たってワケだよ。まさかここで山口さんに再会できるとは、思っていなかったけどね。」

ニコニコしながら斉藤さんは、この話をするのだ。殺された人と再会出来て喜ぶなんてその人も相当変わり者か相当なドMなのだろうか?

このままだとずっとその話をされそうなので、話を変えた。

「話は、変わってしまうんですが、1つ聞きたいのですが、斉藤さんは、現世に未練は、無いですか?」

「なんだい?急だな。山口幸太郎という人の話は、此処から面白いのに。」

というか僕は、山口幸太郎という人の話を聞きに来たのでは、無いのだが。

「まぁいいや。未練は、全く無いよ…いや、全くでは、無いか。私より先に亡くなった嫁と娘は、どうなったのかは、とても気になるかな。此処に来てからは、少なからず毎日その事を考えいる。魂が集まるこの場所に来てないんだ。ただ、亡くなったのは、10年前そして交通事故だった。その時妊娠8ヶ月でね。私は、彼女と娘の救えなかったのを今でも本当後悔しているよ。あの時何故私は、上司とお酒を飲んでいたのかとね。」

「そうだったんですね。なんか、ごめんなさい。」

「何故、前田くんが謝るんだい?むしろこっちが感謝をしたいよ。久しぶりに嫁と娘の話が出来て、懐かしい気持ちにさせてくれた。あの頃の楽しい思い出が蘇ってくるよ。」

「…」

「ごめんごめん。思い出に浸るのは、1人でも出来るから、今は、浸るのは、やめよう。さてと山口幸太郎の話の続きをするかい?」

「いや、大丈夫です。」

なんか、凄い波が激しい人だな。


「そうか。それは、残念。さてと、そろそろご飯の準備をしなければ。」

だいぶ話して居たのだろういつまにか日が暮れようとして居た。

「前田くん。これは、人生を先に終えた奴の独り言だと思って聞いてね。人生全てが恋愛だけじゃ無い。だけど、恋愛は、自分を変えてくれる。しかし間違えると絶望を味わう事になる。それが特に死に関する事だとね。しかしこの時に絶望の中で一筋の光を見つければ人間は、今までよりも大きく成長できると思うんだ。私は、この光を見つける事ができなかった。光じゃなくて逃げ道ばかり見つけて居たからね。私のような間違いを起こさないでくれ。逃げることの代償は、最後には、しっかり自分に返ってくる。それを私は、体験している。」

そう言うと斉藤さんは、僕の背中をおもいっきり叩いて

「人生を楽しめ前田少年!」

と言って家に帰っていった。

此処は、背中を叩く事が流行っている場所なのだろうか?

ただ、やる気は、貰えた。

人生恋愛だけじゃ無いか。

殺された犯人が初恋の人だからと言ってその人の為に生き返るのは、少しおかしいかも知れないな。

僕は、僕だしな。

ただ、生き返ると僕は、僕の体では、いきれなくなる。

前田圭介として生きていく事になる。

それは、その後どうなるのかわからない。

そしてまず体を奪えるのかもわからない。

だけど、少しだけ心から楽しむという事を人生でしてみたいと思っている自分がいた。

それは、おおきい変化なのかも知れない。

自分が楽しいと感じてみたい。

自分がどうしたら楽しいと感じるのか。

そういえば今まで前田賢介と言う人間の事あまりしらなったのかもな。


あと、2日で僕の生き返りたい理由を探さないといけない。だけど、大きな変化があった1日だった。

さてと、帰るか。

あれ、家は、どう帰るんだっけ…

やべぇ。帰り道忘れた。

前途多難な帰り道僕は、日が暮れて真っ暗な闇の中を我武者羅に道をかざして帰るのだった。


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