もう1つのプロローグ 背中合わせの兄弟
こちらはプロローグのプロトタイプです、2章については鋭意製作中のため、しばしお待ちください
これが、俺の報いだと言うのだろうか。
これが、罰なのだろうか。
これが、俺が生きていた意味だというのだろうか。
体に突き立った槍が抜けない。壁に打ち付けられ、腹から流れる血が止まる気配がない。ゆっくり滴り落ちる。命が零れ落ちていく。緑と黒と茶と薄茶の迷彩が赤一色に染め上げられていく。
目の前の化け物がゆっくりと、息絶えそうな獲物を前にトドメを刺そうか迷っているようだ。それで良い。俺には敵わない。どうせ時間稼ぎなのだ。十分果たしたはずだ。みんなは先に行った。
視界が歪む。視界が霞む。代わりに、今までの生きた軌跡が走馬灯のように巡っていく。スライドショーでも見ているかのように、1枚1枚丁寧に表示され始めた。
生きてくれ、弟よ。俺はもう呪いに捕らわれ、抜け出せないだろう。ならば最期まで、俺はこの呪いとともにあろう。自らに課した呪いが自らを蝕むなら、まだ納得して逝けるだろうから。
だから、霞む目で、震える手で拳銃を構えた。
「俺……役目を果たせたかな……」
弟のように、生きることに意味を見出せたのなら、違う結末になったのかな……
※
どうして、人間は生存本能を抑えることができるのだろう。
どうして、生きることを放棄出来るのだろう。
どうして、生きることを許されないと思うのだろう。
この手の中にあるライフルが木の温もりと金属の冷たさを手に伝える。誰かの命と、人生という積み重ねを一撃にして奪い去る物言わぬ道具。汚れたケープが肩からひらめき、ボロボロになってきたブーツはそれまでの積み重ねを思わせる。これを見るたびに踏み越えた地を思い出す。
俺は生きたい。生きて、もう一度俺のいた世界に戻りたい。そして、もう一度見つめ直したい。俺が生きて成せることを。そして、生きる意味を。だから死ねない。
どんな醜態を晒しても生にしがみつく。泥にまみれて血に染まっても、それでも生きていく。でも、生きるだけではダメなのだ。ただ生きるだけでは、何にもならない。思考を止めるな。考えて、走り続けろ。
兄貴が示した、生きることを放棄すること。きっと、俺にはそうならないでくれという願いだったのかもしれない。走るたびに遠ざかっていく。
前へ走るだけで、本当にいいのだろうか。思わず足を止めて、振り返ってしまった。
もう繰り返したくない。2度も、自分の兄が壊れていく様をただ見ているだけで何もしない。そんなのは嫌だ。だから、進むために戻る事も、必要なのかもしれない。結論は、自分で出せた。