第六十六話 AVT-40
異国で見つける故郷の名残
その後、露店で中年男性が大声を出して客を集め、ローブを着た俺の体を剣で切ろうとして、弾かれる芸当を見せ続けた。2時間くらいやるころには中年男性も疲れてきていたが、見世物と思った人が金をくれる事もあり、少なくない利益を上げ、最後にはローブを買いたいという人が現れた。その後購入を終えて出て行った冒険者の後で、中年男性とおばあさんが歩いてくる。俺達は話が聞こえないように少し裏方で休憩していたのだが、いい笑顔の中年男性によると、俺に言った価格の5倍で冒険者の男性に売れたらしい。俺達に100ヘイルと言っていたから、5倍なら500ヘイル。細かい差はありそうだが、ざっと考えて50万円くらいだろうか? 結構な収入だと思う。
「ありがとう。君達のおかげで、また少し食いつなぐことが出来そうだよ。これで姉さんも少し安心しただろう。約束通り、店にある商品なら、何でも好きな物を3つ持って行ってくれ」
「そうさせてもらうか」
「私達も選んでいいのかしら?」
「そうだな。何をもらうか話し合って決めようぜ。アリシア達もほしいものがあったら言えよ」
「わかったわ」
「はい・・・」
その後ああでもないこうでもないと店の中を見て回ったが、アリシアもミルもほしいものが見つからなかったようだ。屋台自体がそんなに大きくないから商品も多くなく、中古の武器防具屋なのでお嬢様のアリシアと物欲の少ないミルはあんまりお気に召さなかったらしい。俺も色々見て回ったが、今の剣より少しマシっぽい剣が2本ほどあるだけで、こんなものにせっかくの権利を使っていいのかと悩んでいた。メルさんが買ってくれた剣でも十分だし、思い入れがあるというのも理由だ。
「なかなかピンとくるものが無いか?」
「ああ、何か他に商品はないのか?」
「うーん、他の中古屋から仕入れた売れ残りとかならあるが・・・。見るか?」
「見せてくれ」
早々に見切りをつけておばあさんの横で椅子に座ってしまったアリシアと、俺の後ろでずっと静かにしているミルに注意を払いながら、屋台の奥側に積まれた箱を見せてもらう。木でできた箱と竹みたいな何かの植物繊維で編まれたかごっぽいものの中には、見覚えのある武器が入っていた。あまりの驚きに固まる俺を見て、おばあさんやミル、アリシアも集まってくる。
「どうしたの?」
「何か目に留まったかい?」
「どうしたんだ?」
「いや、この武器どこで手に入れたって?」
「ずいぶん前に街へ来た行商人から買ったんだよ。使い方はわからないが異国の強い武器らしいってな。高かったから売ろうと思ったんだが、売る側が使い方を知らない武器なんて買えるかって客に言われて気がついたんだ。俺がバカだったのさ。行商人は別の街へ行っちまったから文句も言えねえし、捨てるのももったいないから放置していたんだが、これは本当に武器なのか? いろいろいじっていたらこれが取れちまってよ。壊れていたらさすがに売れないし、使えるならあんたにやるぞ?」
中年男性が指さすその先、みんなが見つめる先には、木の箱に入った俺の世界の武器が入っていた。
「ああ、確かに武器ではあるが、壊れているかどうかはこの状態じゃわからないな。あのローブと同じで、使える人間が正しい方法で使わないといけない武器だ。たぶん俺なら扱えるが、それは別に壊れたわけじゃないぞ」
「本当か!?」
中年男性が持ち上げて外れてしまったと言っているもの。それは弾倉だった。弾倉って言って思い浮かべるような形とは少し違うが、上の部分から銃弾らしい光の反射が見える。中年男性から弾倉を受け取って観察すると、アイがウインドウを表示して解析結果を教えてくれた。
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名称:AVT-40用 箱型弾倉 20発用
分類:箱型弾倉 20発用
装弾数:19発
・解説
・改造(選択できません)
・修復・整備(弾薬不足 傷多数 一部弾薬劣化)
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「なぁ、これはどういう武器なんだ?」
興味津々といった顔で中年男性が聞いてくる。箱から銃を取り出してひっくり返すと、弾倉が刺さるだろう場所に残りの銃弾が引っ掛かっていた。それを取り出して弾倉に押し込むと、カチッという音と小さな衝撃の後、銃弾が弾倉にはまる。
「おお!」
男性が驚きの声をあげる中、銃に弾倉をあてがって押し込み、こちらもカチッと音が鳴って弾倉がはまった。
「たぶんこれでいいと思うんだが、ここで使うのは危ないな。一応、動きそうではある」
「これが動くのか? 先っぽに刃が付いているし、魔法槍の一種だと思っていたんだが、何か違うらしいな」
「ああ、確かに槍っぽい使い方ができるようにこの刃は付いているが、元々は槍じゃないな。槍は補助機能だ」
「すごいな。見ただけでわかるなんて、さすが異邦人は違うぜ」
「?」
「黒髪に頭の良さ。異邦人なんだろ? あんたが扱えるってことは、これは異邦人の武器なのか?」
「そうだな」
「あの行商人が高く売れるって言っていた理由が分かったよ。確かに異邦人の武器なら高く売れるだろうな」
「そんなに珍しいのか?」
「隣のベルザリス傭兵国ならたぶん家が建てられるぐらいの値段になると思うぞ」
「そんなに・・・」
アリシアが値段を聞いて絶句している。それだけ異邦人の武器という肩書はすごいのだろう。
「ベルザリス傭兵国ってどこにあるんだ?」
「ここからだと帝都の方かな? 海沿いの国で、あっちこっちの国に国民を傭兵として送ってくれるからそう呼ばれているのさ。今王国がクーデター起こって混乱しているから、あの国にとっては稼ぎ時だろうな。異邦人の武器は使い方さえわかれば強力で平民でも一流の冒険者並みに魔物や騎士と戦えるらしいから、傭兵の多いあの国では強い武器ってだけで高値が付くのさ」
「なるほどな。まぁ、実際に魔物でも相手にしてみないとわからないが、たぶんちゃんと動くと思う。少し古くなっているみたいだから、そこが心配かな。あと、傷が多いから状態はあんまりよくないみたいだ」
「そうなのか。高く売れるとか言っておきながら、古くて状態の悪いものを売りつけられたって事か」
「端的に言えばそうだな。まぁ、この手の武器は中身がちゃんとしてれば外見が多少ボロボロでも問題ないし、逆だとだめだから、それよりはマシかもしれない。それで、高く売れるってわかったけど、本当にもらっていいのか?」
「ああ、約束は守らなきゃいけない。それにあんたなら扱えるんだろ? やっぱ良い武器は使える奴が持たないとな」
笑顔で肩をたたいてくる中年男性に苦笑いしていると、おばあさんが箱の端っこから何かを取り出す。
「これはその武器のものかい?」
「ん?」
おばあさんが見せてきたのは、後部をクリップで止められた予備の銃弾だった。着脱式の弾倉があるのにクリップ付きの弾丸が一緒に入っているのもちょっと不思議だが、さっきの銃弾と見た目は変わらないのでたぶん同じものだろう。
「そうみたいだな」
「これはどこに入るんだ?」
「それはこれの替えさ。こいつがなくなったら、これを外して取り換えるんだ」
中年男性が予備の弾倉らしきものを箱から出してきたので、銃に付いた弾倉を指さしながら説明してやる。
「異邦人の武器は変わっているんだな」
「よく言われるよ」
「じゃぁ、これだけ持っていてもしょうがないから、全部持って行ってくれ。改めて、ありがとう」
「ああ、こちらこそありがとう」
「気をつけていきなさい」
「さ、さよなら・・・」
「ごきげんよう」
結局その木箱と周りのかごに銃以外にもいろんな装備が入っていたので、木箱に全部詰めて箱ごともらうことになった。スノコを買っていたので持ちきれなかったため、中年男性に紐をもらってスノコを木箱に固定し、木箱を担ぐ。海外の大工が丸太を担ぐように右肩に木箱を載せるが、前後に長めなので周りに注意しながら進んだ。これを振り回しながら防具を買うのは危ないし迷惑になるので、一度冒険者ギルドの方面に引き返して、広い道を歩きながら宿を探す。適当に歩いていると、ある場所に少し汚い感じがする建物があり、その横に宿屋があった。看板にベッドのマークが刻み込まれているので間違いないだろう。すごい技術だと思う。文字が読めなくても、これを見れば簡単に宿屋だとわかるのは重要だ。ギルドの受付が文字を読めるか聞いて来たように、たぶん識字率は高くないのかもしれない。そう考えると文字ではない方法で宿屋だとわかるこの看板は良いと思った。
第66話です。半年以上開いてようやくの更新。お待たせして申し訳ありません。書き溜めが思った以上に進まず、どうするかあれこれ悩んでいるうちに忙しくなり、時間が空いてしまいました。とりあえず1話。今後も超スローながら投稿は継続します。次回もお楽しみに




