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異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
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第六十一話 ごたごたの終わり

謝罪はある種の誠意

「久々に静かになったと思ったらトラブルとは、ギルドは様々な境遇の者達にやさしく、来るもの拒まず去る者追わずをモットーにしている。しかし、私がいるこのギルド内で、喧嘩ではなくともそれほどまでの戦闘行為を行っておいて、俺は悪くないは少し苦しくはないかね? 獣人の尻尾があまり触られたくないものであるという気持ちは私もよくわかるが、だからと言って冒険者を2名も戦闘不能にした挙句、もう一人にも近寄って手を下すのは、仕返しの範疇を超えていると私は思うが、君はどう思う?」

目の前にいる男達から目を離し、剣を下ろしながらゆっくりと足音の方に振り向くと、近くに固まったまま怯えた表情で俺を見ているウエイターみたいな恰好の男性がおり、その後ろからスーツではないが、それっぽいしっかりした服を着ている少し太った男性が近寄ってきていた。頭に獣耳が生えているので彼も獣人なのだろうが、何の耳かはわからない。そもそも耳だけで何の動物か判断できるほど俺は動物に詳しくないので、とりあえず獣人だという事と、偉いというか大物っぽいその人には、剣を向けない方がいいという事だけ考えて剣をしまった。男性は一瞬表情を変えたものの、すぐに余裕がありそうな笑顔に戻って近寄り、ウエイター風の男性の肩に手を置く。男性が脱力したので、肩をポンポンと叩いて下がらせていた。

「ご苦労様。君はもどりなさい」

「はい・・・」

ウエイター風の男性が逃げるように早歩きで奥へ引っ込んでいく中、獣人の男性は俺の目の前まで歩いてくる。

「剣を収めたのは賢明な判断だと思うよ。そこで転がっている脳筋どもなら頭に血が上って私にも剣を向けただろうが、君はまだ冷静だったようで、安心したよ。何があったのかは詳しく知らないのであまり言わないでおくが、これだけの人が見ている前でその馬鹿どもを、どうするつもりだったのかね?」

「とりあえず攻撃してきたから返り討ちにして、謝らせればそれでいいかなと、思っていました」

「命まではとらないか。獣人の尻尾を触っただけで殺されてはいくら馬鹿どもであろうとたまらんだろうから、いい判断だと言っておこう。しかし、謝らせるためにここまでする必要があったのかね? 後ろの扉を見たまえ。そこは入り口だ。もし人が入ってきて巻き込まれたら、君はどうするつもりだったのかな? 最初の男が吹っ飛んで、もう少し遠くまで飛ばされ、あの鎧の男に激突していたら? 君は単に返り討ちにするだけだったようだが、関係ない者を巻き込むリスクは、考えなかったのかな?」

「考えなかったわけではありませんが、そこまで悲惨な被害が出るほど痛めつけるつもりはありませんでした」

「ほう。これだけの時間がたつのにいまだに起き上がらないあの男も、後ろでうめく男も、その奥で震える男も、多少痛めつけたではすまない被害を被っているように思うが、これは私の目がおかしいのかね?」

「端的に言って、やりすぎだと?」

「わかっているなら、やる事があるのではないか?」

俺の返答に、男性はうなずきながら答えてくる。仕返しや正当防衛の範囲をとっくに超えている自覚はあるが、じゃあ抗議すれば謝ったかというと、疑問が残るのも事実だ。それでは納得がいかない。

「私は、何をするべきだと思いますか?」

「まずは謝罪したまえ。彼らにではなく、あの鎧の男と、先ほどの職員、そして、この事態を見ていた者達すべてにだ。その馬鹿どもは自業自得だとしても、周りにかけた迷惑はほとんどが君のせいであろうことは、私にもわかる」

「わかりました。皆さんお騒がせしました。あなたも、ご迷惑をおかけしました。さっきの人は・・・」

とりあえず掲示板の方向と椅子の方向を双方向いて、一度ずつ頭を下げ、鎧の男性の方に向かって、改めて頭を下げる。

「あ、ああ・・・」

鎧の男性は、若干うろたえつつも応答してくれた。ウエイター風の男性は奥に引っ込んでしまったのでどうしようか。

「彼には私から話しておこう。それでいい。素直に謝ってくれてうれしい限りだ」

目の前の男性は、笑顔をさらに強くしている。ゴソゴソと音がしたので後ろを向くと、3人目の男が2人目の男の体をどかして立ち上がろうとしていた。こっそりとやっていたのだろうが、立った時に男の剣が音を立ててしまったので丸わかりだ。

「ひっ!」

俺に怯えたのかと思ったが、背後からすごく重い無言の圧力を感じたので、すこし体に震えが走り、思わず横に移動してしまった。きっとこの人は強いのだろう。俺なんか比じゃないくらいに強い威圧感を、部屋中の人間が感知できるほど振りまいている。コソコソとミルが寄ってきて俺の後ろへ隠れ、抱き着いて来た。アリシアもいつの間にか俺の後ろへ移動している。

「君達には奥の部屋でゆっくりと事情を聞かせてもらおう。来なさい」

「は、はひゃい!!」

後ろで3人目の男が変な返事をした後、俺の方へ恐る恐る歩いてくる。少しでも音を立てようものなら殺されると思っているのかもしれない。2人目の男はうめいていて全く動けないらしく、1人目の男は立ち上がろうとしてまたこけてしまった。

「まったく。遠くから来た旅人に一撃で沈められるとは、冒険者として未熟な証だね。君達、ランクは?」

「し、Cです・・・」

「じゃぁFに降格処分としよう。君達3人ともだ。君が一番今まともなのだろう? 受付で手続きをしてきたまえ」

「はい・・・」

3人目の男は俺の横を少し遠回りで通り過ぎた後、男性の指示に従って受付へ向かおうとする。

「待ちたまえ」

「ひっ! な、なんでしょうか・・・」

「彼らへの謝罪がまだだぞ」

「あ、す、すまなかった。許してくれ・・・」

「誠意が足りん!!」

男の謝罪の仕方に怒りを覚えたらしい男性が片足を踏み鳴らすと、床の木材にひびが入り、建物が少し揺れた。あまりの音と衝撃に、この部屋にいた全員が振動に耐える。さすが冒険者というべきか、よろめいたのは3人目の男と俺達だけだった。

「も、申し訳ありませんでした!!! 許してください!!!」

3人目の男はサッと床に土下座し、額を床にこすりつけながら俺に謝ってくる。

「謝る相手が違うだろ。俺じゃなくてミルに謝れ!」

「お嬢ちゃん、いや、お嬢様。申し訳ありませんでした。許してください!」

「は、はい・・・」

「よろしい。手続きをしてきたまえ」

「わかりました!」

3人目の男は飛び上がって立ち上がると、羽が生えたような速さで走って受付へ向かった。ギルドの建物は広いし、俺達はドアに近い方に居たが、その短い距離でも飛躍的に速い速度で動いたあの男に、ちょっと驚く。

「さて、後ろの君もいつまで寝ているつもりかね。早く受付へ行きたまえ」

「は、はい・・・。お嬢ちゃん、すまなかった。許してく・・・ださい」

「は、はい・・・」

まだ怯えていて俺に抱き着いているミルに、2人目の男は転がった体勢から土下座の形に移動して謝る。ミルも少し混乱しながら返事をしているが、まだ怖いようだ。この男達だけではなく、新たに現れた後ろの男性にも怯えているらしい。俺も少し怖い。

「あの男は動けなさそうだから、彼の冒険者カードを持って行って彼の分も手続きしてやりなさい。あれは骨が折れているだろう」

「はい」

2人目の男はよろよろと立ち上がった後、フラフラと歩きながら1人目の男に近寄り、倒れこむようにして男のそばへ寄ると、何かを受け取ってまた立ち上がり、受付に居る3人目の男の方へ向かっていった。1人目の男は立ち上がろうとしてまたこける。

「君はそこに居たまえ。彼らが戻ってきたら、教会へ向かうといい。彼らへの謝罪はしっかりすることを勧めるがね」

「は、はい、グフッ、す、すびばせんでじだ・・・」

なんか変な音を出しながら、1人目の男は謝ってくる。2回目にこけた事で力尽きたのか、ピクリとも動かなくなった。

「まったく、貧弱な馬鹿どもだ。君達はここへ何をしに来たのかね。旅人のようだが、冒険者になるのかな?」

「はい、そのつもりで来ました」

アリシアも怖がって俺の後ろへ隠れているし、ミルは言わずもがななので、代表して俺が答える。

「Cランクは一番数が多い冒険者の主力層だ。そのレベルでも、十分に一般の人間よりは強い。彼らが君をなめていたとはいえ、戦闘不能にできるその戦闘力の高さ、私は歓迎するよ。だが、冒険者は組織の一員でもある。あのように規律を守らないバカが多いのは私の責任でもあるが、同じ組織に所属するつもりなら、こういった揉め事は控えめにしてもらいたい」

「善処します」

「よろしい。彼らは今冒険者カードを変更中だから、今のうちに君達から事の発端と事情を改めて詳しく聞かせてくれるかな?」

「わかりました。行こう。ミル、アリシア」

「はい・・・」

「わかったわ」

踵を返して奥へと向かう男性に続いて、俺達も移動する。受付では3人目の男と少し回復したらしい2人目の男が、受付の男性職員から注意を受けていた。1人目の男はまだあの場所から動いていない。カウンターの横、掲示板側の方へそれ、奥にある階段らしい場所を上がる男性の後を追うと、2階を通り過ぎ、3階の部屋に着いた。ドアの前で立っていた完全武装の男性に挨拶をして入っていく男性についていくと、中は広い部屋で、高級そうな家具と椅子や机、机とは別にテーブル、ソファー、観葉植物などがあり、男性はソファーの片方、一人用の高級そうなものに座る。入り口で圧倒されていた俺達を笑顔で手招きした男性に恐る恐る近寄り、反対側の4人ぐらい並んで座れるソファーに俺達は座った。アリシアが左、俺が男性の正面、ミルは右側に抱き着いている。アリシアも服をつかんでいるので、さっきの男性を見て怖がっているのだろう。


第61話です。勇介より強そうな人間が父親以外に登場しました。他にも強い人はいるかもしれませんが、勇介が強いだろうと思うくらいの方が登場した話となります。次では事情説明などを行う予定ですね。やりすぎちゃったら謝るのは重要だと思います。過剰防衛は逮捕されることもある現代ですが、異世界はどうなんでしょうね。次回もお楽しみに

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