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異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
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第五十一話 旅の終わりに

男女には譲れない部分がある?

「今どのへんなのかしら?」

「さっきの細い分かれ道が2つ目の場所だとするともう半分は超えたと思うぜ」

アリシアが肩で息をしながら聞いてきたのでそう答えてやる。朝起きて朝食とトイレ、男女に分かれて水浴びを行ってから出発した俺達は、2つ目の分かれ道と思われる場所を昼頃通り過ぎた。1つ目の分かれ道は広いし看板もあったが、2つ目の分かれ道は道が細いし看板もなかったので少し心配だ。どちらに進めばいいかはわかっているので道を間違える心配はないが、あれが分かれ道なのかは確証がない。1つ目の分かれ道の逆側、つまり海方面から商隊が今俺達の歩いている道を通ってエルタールの街へ行くそうだ。それが理由で道は広く、馬車で踏み固めるからか土のわりに足元がしっかりしている。道中で俺達以外の人間には出会っていないのが少し気がかりではあるが、今更戻るのも問題があるので道を進んでいるのだ。アリシアと男の子は完全にバテてしまっているので、男の子は旦那さんが抱っこし、アリシアは俺が肩を貸している。最初はおんぶをしようかと提案したのだが、おそらく年齢的に中学生ぐらいであろうアリシアは反発していやがった。かと言ってこの中だと男の子以外で唯一荷物を何も持っていないアリシアが一番疲れているという現状を放置するわけにもいかず、妥協の産物として肩を貸している。

「もう足が動かせないわ。少し休憩できないかしら」

「そうは言っても、エルタールの街周辺は魔物が多いらしいから、中途半端なところで野宿しない方がいいと思う。2つ目の分かれ道を通り過ぎたらもう少しだって聞いているし、街が近いなら宿で寝たいだろ?」

地図を片手に俺はアリシアに問う。疲れているなら、固いし虫が寄ってくる地面より宿屋のベッドで寝たいはずだ。

「それはそうだけれど、もう本当に足が言う事を聞かないわ」

「じゃあやっぱり俺が・・・」

「いやよ。絶対に嫌」

「じゃあどうするんだよ」

おんぶをしようとする俺を頑なに拒むアリシアに、何か名案があるのか問い返すと、アリシアは目を泳がせる。名案は無いようだ。

「どうしようもねえだろ。自分で歩けねえなら誰かに頼らねえと」

「そうだけど・・・」

座り込んでしまったアリシアとああでもないこうでもないと言い合っていると、ミルが服の袖を引っ張ってきた。

「どうした?」

「いえ、あの、その・・・」

チラチラとアリシアを見ながらミルは何かを言いたそうにしている。その行動にアリシアが何かひらめいたような顔をした。

「そうよ!ミル、あなたが私を背負いなさい!」

「はあ? お前大丈夫かよ」

「何よ。獣人なら私ぐらい軽いでしょう?」

アリシアの突拍子もない提案に俺が呆れていると、ミルが荷物を下ろし始める。無言ってことはミルもそのつもりだったのか?

「いいのか? ミル?」

「はい。大丈夫でしゅ」

「そうか。じゃあ頼むな」

「はい!」

なぜか嬉しそうにしだしたミルがさっさと荷物を下ろし、アリシアに近寄って前に座り込む。俺も荷物を一度全部降ろし、ミルが背負っていた一番大きなカバンを背負って、アリシアの母親の形見が入ったカバンと、グールのカバン、弾薬鞄、銃、剣の順で身に着ける。全部持つと普通の俺では少しつらいぐらいの重さだ。剣と銃が体の片方に寄っているのでバランスも悪い。

「大丈夫か?」

「はい。大丈夫でしゅ」

ミルがアリシアをおんぶして立ち上がったので、アリシアの位置を調整してミルもアリシアも楽な体勢にさせてやる。

「その子に背負わせて大丈夫かのう?」

「前にも確かやった事あったよな?」

「はい」

「だから大丈夫さ。いざとなったら俺が2人とも抱えるかそれこそ休憩するしかねえけどな」

「そうなるのは嫌よ。早く町へ行きましょう」

婆さんは体格的にそんなに差のないミルがアリシアを背負う事を心配しているようだが、経験があるからと安心してもらった。俺の冗談にアリシアがムキになってミルをせかし、俺達は再び出発する。相変わらずレーダーの端で光点がチラチラしているな。

「やっぱり魔物が増えて来たらしいな。気をつけろよ」

「ああ。後ろは私が警戒しているから大丈夫だよ」

「ミルも怖がらなくて大丈夫だ。もうすぐ街に着くし、安心しろ」

「はい・・・」

俺の発言を聞いて俺の近くに寄ってくるミルの頭を撫でて安心させつつ、爺さん達にも注意を呼び掛けておく。爺さん達に注意を呼び掛ける為にミルがおびえてしまったのは失敗だった。旦那さんは男の子を抱っこしながら時々後ろを振り返っているが、道は広くてもまっすぐではないので俺のレーダーより遠くが見えるわけもなく、旦那さんの努力は無意味だ。

「水の音がしない?」

「きれいな音ね」

アリシアの問に奥さんが答えている。確かにどこかで川の流れるような音がする。せせらぎって言うんだろうか、心が休まる感じのいい音だ。たぶん夜に聞いたら安眠できそうな感じ、静かな森に聞こえる川の音は、それだけなのに心が落ち着いてくる。しばらくすると森の向こうに水面が見え、森を抜けると目の前に巨大な都市が出現した。都市の壁はまさに城壁で、日本の城なんて比較にならないくらい大きい。50mはありそうだ。まさに見上げるような高さである。壁の前には堀があって、森を出る直前に見えた水面はこれだった。視界の端の方に川幅の広い大きな川が流れているので、さっきの水の音はあの川だろう。道の先は石の頑丈そうな橋がかけられており、橋の先には門がある。門はそれほど大きくなかったが、橋の幅は広かった。道に合わせて作られているようで、たぶん車が横に2台並んですれ違える。門は閉まっているが、門の付け根の部分に小さな小屋があって、そこに門番っぽい人がいた。俺達は橋から水面を眺めながら門に近づいていく。水面は透き通っているが、底は見えなかった。

「こんなにきれいな水は王都でもあんまり見ないわよ。底は見えないけれど、十分きれいじゃないかしら?」

「底が見えないってことは、相当深いんだろうな」

「堀ですもの、浅かったら意味ないんじゃないかしら?」

「そりゃそうだろうけど、底なし沼みたいにする必要はないと思うぞ?」

「本当にきれいな水ね。川もきっと澄んでいるんでしょうね」

「ここなら病気の心配はないかもしれないな」

のんきに水のきれいさを褒める奥さんとは対照的に、旦那さんは衛生状態の心配をしているようだ。俺とアリシアが軍事的価値で堀について話し合っているのも大概だが、爺さん達が前住んでいた場所はそんなに水が汚かったのだろうか。

「お前らは何者だ?」

「王国からの難民です。この道の先にある村の騎士様から、この街を勧められたので来ました」

「騎士様? そんな報告聞いているか?」

「俺は知らねえな」

「あれだろ、難民の管理をするって10日ほど前に騎士様と従者様が何人か出て行ったじゃねえか。あの村だろ」

門番らしい男に誰か聞かれたので難民と答えておく。門番は仲間に俺達の話が本当か確認しているようだが、情報伝達が不十分なのか、最初に聞かれた門番には知らないと言われてしまった。隣でトランプっぽいカードゲームの相手をしていた別の門番が覚えていたらしく、おそらく同じ人物であろう情報をくれる。ほっと胸をなでおろす俺達に最初の門番が質問を続けて来た。

「念のために確認する。お前らにこの街を勧めたという騎士か従者の名前は?」

「サムフェル様です」

「ああ。出てったのもサムフェル様だ。嘘じゃなさそうだな」

俺が上げた名前に裏付けをしてくれた門番が同意し、出まかせでない事が証明された。

「よかろう。この街には入城税が設定されている。1人につき5ヘイル、あるいは10フルだ。他の通貨しか持っていないならあそこで多少は両替に応じよう。どうする?」

国境の街もそうだったが、入市税みたいなものがあるようだ。王国通貨だと倍かかってしまうが、帝国通貨はあまり持っていない。

「王国通貨で払います」

「いいの?」

「帝国通貨もあるが、そんなにたくさんじゃないから王国通貨の方にしておこう。割高だけどしょうがねえよ」

「そうね。わかったわ」

アリシアが聞いてくるが、理由を話すと同意してくれた。カバンから9人分、90フルを門番に支払う。4フルで安宿に泊まって食事もとれるとおっさんは言っていたが、そう考えると入市税はとても高いことがよくわかる。おっさんの言った安宿が相当な激安宿だったのかもしれないが、それでも高いと思う。爺さん達が9人分払おうとする俺に何か言いたそうな顔をしていたが、門番に見えない位置で手を動かして何も言わないように合図しておいた。失礼かもしれないが、一緒に旅をした経験上、爺さん達は入市税を払える金を持っていないはずだ。あったとしても入市税だけで金が底をつくだろう。そう思っての行動だ。

「赤ん坊の分も払うんだな」

「子は宝だ。だから人数もちゃんと数える。まだ一人前になるには年月がかかるが、いつか今日払った税など問題にならぬほど稼げるようになるはずだ。そういう将来を考えて、子供でも1人の人間として扱うというのがこの街の方針なのさ」

「ほお」

いい理由にも思えるが、金が多く集まるという裏の理由があるんじゃないかと疑ってしまう。その考えが税金だけに適用されない事を祈ろう。そう思って9人分渡した。門番は数を数え、確認が終わると別の門番に指示を出す。別の門番が何かひもを引っ張ると、少ししてからゆっくりと門の片側が開き始めた。ギイーとかじゃなく、ゴゴゴゴみたいな重たい音を響かせつつ門が少しだけ開き、人が通れるぐらいまで開いたあたりで指示をもらった門番がひもをもう一度引っ張ると、門が静かになった。

「すげー」

「我が街が誇る鋼鉄の正門だ。ドラゴンであろうと幼竜クラスなら耐えられる。重いので開閉が厄介なんだけどな」

俺の率直な感想に、門番がドヤ顔で教えてくれた。愛想笑いを浮かべつつ、俺達はエルタールの街に入って行く。


第51話です。エルタールの街へ無事到着ですね。この街で何があるのかは、次回をお楽しみに。


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