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異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
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第五十話 冒険者の評判

誰でもなれる。つまり、問題があっても採用時は問題にならない。採用後は問題になる。

「何かまずい事言ったか?」

「いや、別に何も問題はないよ」

「嘘だろ。明らかに態度が変だったぞ」

誤魔化そうとする旦那さんに畳み掛けると、横にアリシアが座ってきた。ちなみにミルは反対側で食事の準備をしている。

「冒険者はいわゆる何でも屋よ。魔物の討伐を主な仕事にして、商隊の護衛や素材の採集、有事の際に国が雇って傭兵になったり、実力がある人は身分の向上があったりするのだけれど、反面危険が多くて死傷者が絶えないの。知らないのかしら?」

「初耳だな。ある程度予想はしていたが、そんなに死にやすい職業なのか?」

アニメや小説で聞く冒険者の職業とはそういう物だ。いろんな仕事をこなし、金を稼ぐ。小説ならイベント発生で貴族階級をもらったりするものだが、現実はやはり甘くないと言う事だろうか。旦那さん達の反応も気になる。

「一番数が多い仕事の魔物討伐がやっぱり大変らしいよ。相手も人間を襲ってくるし、命がけの戦いになるそうだ」

旦那さんが暗い顔のまま教えてくれる。ミルが配給されたパンを持ってきたので、みんなで食べながら話を続行する。

「それに、冒険者は誰でもなれるから、その、そういう系の人達が多くて、なんていうか、その・・・」

「ん?」

奥さんが目を泳がせながら何か言いかけてやめた。そこまで話してやっぱ話しませんはやめてほしい。

「あの連中はガラの悪いものが多いんじゃよ。腕は立つからわしらのようなものじゃ太刀打ちできんしな」

「そういう事か。なんとなく予想はついていたけど、やっぱりそうなんだな」

こちらもお決まりのパターンだ。誰でもなれると言う事は当然質の悪い人間も所属できると言う事で、元の世界で問題となっていた失業者やホームレスみたいな人達の受け皿になっているのだろう。中には人格や行動に問題があるから他の職業を選べない奴も当然居るわけで、そういう奴らと張り合う必要とかが生じて、周りも荒っぽくなる。魔物と戦っていて戦闘経験は豊富だから普通の人が戦って勝てるわけもなく、弱者と強者で関係は悪いと言う事だ。冒険者は粗暴だという問題は異世界でも変わらないのか。もとは貧民でいわゆる弱者の側だった爺さん達がいいイメージを持っていないのは当然なんだろう。

「王国にも冒険者は居るのか?」

「ギルドもあるし、冒険者もいるわ。ガラが悪いのはどこの国も同じだと思うわよ」

アリシアに聞くとそんな答えが返ってくる。屋敷に侵入した男を捕らえて連れて行った時に、すれ違った人達の中に居たのだろうか。確かに騎士じゃなくても剣や鎧をつけている人は居た気がする。もう記憶があやふやになってきているので、確証はない。

「爺さん達は冒険者が嫌いか?」

「当然じゃ。あやつらは人として大切な物が抜けている気がするわい」

「フォッフォッフォッ。お前は冒険者になりたいのかえ」

爺さんが怒ったような態度で即答し、婆さんは笑いながら俺に聞いてくる。

「なりたいわけじゃねえけど、この国でアリシアとミルを養う必要性があるからな。金は限りあるものだから稼ぐ必要はあるだろ」

「君の実力なら十分傭兵として雇ってくれるところがあると思うよ。何も冒険者になる必要はないんじゃないか?」

「そうよ。1人でグールを倒せるなんてすごいのよ? きっと貴族様のお屋敷で警備の仕事とかがあるはずだわ」

旦那さんと奥さんは俺が冒険者にならないように必死の形相で止めてくるが、その選択肢はできれば取りたくない。

「難しいな。どこの誰だかわからねえ奴を雇ってくれる可能性がそもそも低いし、あの武器はあんまり人に知られたくねえんだ」

「いや、だが」

「やめなさい」

なおも何か言おうとする旦那さんを爺さんが止める。さっきの怒った表情ではなく、真顔で俺を見てきている。なんかこわい。

「あの武器が特殊で、広まっては困るというのは分かる。わしもそう思うからの。だが、お前さんは忘れてはいないか?」

「何をだ?」

「お前さんが冒険者の仕事をしている間、この2人はどうするんじゃ? 街に置いておくのか? それとも連れて行くのか?」

俺もそれは考えている。魔物の討伐は危険なはずだ。アリシアを守るために帝国へ来たのに、危険に身を晒すのは意味がない。かと言って街に置き去りにするのも危険だろう。追手が位置を突き止めて刺客を送り込んでくる可能性はまだあるし、アリシアを1人にできない関係上置いて行くならミルも置き去りだ。俺が視界から消えただけで不安になるミルが、それを耐えられるとは思えない。俺もソロで魔物討伐になるので危険度が増すだろう。そういう観点から見ると冒険者は俺達の条件に合わない。じゃあ他の職業はどうかと考える。例えば旦那さんが勧める屋敷の警備はどうか。警備の仕事はおそらく休憩があっても一日中、毎日のはずだ。仕事だからアリシアもミルもそばに居られない。同じ町の中には居るが、警備の仕事だから何かあっても勝手に持ち場を離れられないし、ミル達と行動を共にできないという点では冒険者と変わらないだろう。むしろ仕事を途中で放り出せない関係で冒険者よりも何かあった時に対処できない可能性が高い。他の仕事として例えば酒場や料理屋で給仕や調理師として働くことなども考えてみる。料理はこの旅で作ったものが人生経験のすべてだ。元の世界では学生だったので目玉焼きが関の山、とてもじゃないが人に食べてもらえる料理は作れない。それならとあってないようなものである執事経験をいかして給仕をすると、接客業の経験はあるから何とかなりそうだが、荷物、特に銃を俺が携帯できないのでその点が危ない。店に事情を話し、アリシアやミル専用に店の端側のスペースをもらって待機してもらえばアリシア達と離れなくて済むが、アリシア達にとってそれは実質軟禁であり、誰でも入れる店という構造上敵が簡単に侵入できる。店に出入りする客がアリシア達の顔を覚えて情報が漏れる可能性も生まれるし、王国の追手でなくても、アリシアやミルをナンパする変な奴が現れる可能性も旅の経験上否定できない。これも却下だ。あれこれ考えて爺さんへの返答に困っていると、アリシアが口をはさんでくる。

「私達はもちろんついていくわ。ユウスケのそばが今のところ一番安全だもの。ミルもそう思わないかしら?」

「はい! そうでしゅ!」

アリシアが当たり前のようについていくと言い、ミルが同意する。しかしそれでは危険が、そう思ってアリシアの方を向くと。

「まさか置いて行くつもりなのかしら? 危険一杯の街にレディ2人だけを置き去りにするの?」

信じられないと言わんばかりの表情でそう言われて言葉がでなかった。右手に感触を感じて振り返ると、ミルが抱き着いてくる。

「魔物討伐は危険なんじゃねえのかよ」

「言ったはずよ。あなたのそばが一番安全だと思うわ」

「はい。そう思いましゅ」

アリシアに危険性を問うも、あっさりと返されてしまった。信用されていると言えば聞こえはいいが、責任重大だ。

「フォッフォッフォッ。信頼されておるのう」

婆さんが笑い、爺さん達もほほえましいものを見る目になる。とりあえず上目遣いに見てくるミルは破壊力がすごいので速攻で目をそらし、アリシアの頭を撫でておく。信頼へのお礼のつもりだったがアリシアは頬を膨らませてしまった。

「そういうわけだから、冒険者になるよ。もっといい就職先があればそれに越したことはねえんだけどな」

「そうか・・・。仕方ないね」

「あなたは私達が出会った冒険者みたいにならないでね」

「気をつけるよ」

納得してない感じの旦那さんと、心配してくれる奥さんにそう言ってパンを食べる。すでに男の子は食べ終わってお昼寝タイムのようだ。俺達も食事を手早く終わらせて、世話役の人に教えてもらったトイレに行ってから出発した。配給された水で残ったものは水入れに補給し、入りきらない分は近くの難民に譲った。村を出る時騎士の従者に出会ったので挨拶をして村を後にする。

「知り合いなのかしら?」

「昨日騎士のそばにいた従者の一人さ」

「そう」

村を出て、道なりに森を突っ切っていく。冒険者の話のあたりで爺さん達はついて来なくなるかと思ったが、別に何も言わずについて来た。男の子は寝ているので旦那さんが抱っこしている。国境付近の山よりは森が薄く、木々がまばらで太陽光がさす明るい森だ。周囲も結構広い範囲が見渡せるし、これなら魔物が不意打ちしてくる可能性も低いだろう。俺が寝ている間に来た従者がメルさんの地図に、エルタールの街までの道順と目印を書き込んでくれたらしい。メルさんの地図は王国の物なので、比較的帝国の部分はおおざっぱだったから助かった。これまで通ってきた2つの村と、エルタールの街の間には2カ所分かれ道があり、1カ所目の分かれ道で別の方へ行くと海側へ、2カ所目の分かれ道で別の方へ行くと別の街へたどり着くらしい。エルタールの街も道の行き止まりではなく、道の途中にある大きな町で、エルタールの街を通り過ぎてさらにいくつか町や村を経由すると帝都に着けるそうだ。帝都へ行く予定は今のところないが、従者が書き込んでくれた情報はうれしかったので、騎士が言っていた反乱発生時にはちゃんと手助けしてやろうと思った。その日は暗くなる直前まで道なりに進み、1つめの分かれ道を少し過ぎた場所の小川で野宿になる。村に居た時よりも野宿している今の方が食事に豊かさがあるという爺さんの言葉はみんなの笑いを誘ったが、野宿の方が寝る環境が悪いという意見は全員同意見だった。焚火を焚いて俺が周囲を警戒し、適当なところで薪をありったけ追加して俺も眠る。レーダーの端に魔物と思われる光点がチラチラしていたが、火を警戒してか襲ってはこない。アイも俺の苦情を学習し、ある一定より近づかない光点については起こさない事にしてくれたのでぐっすり眠れた。

第50話です。祝50話。といいたいところですが、普段読んでる先輩小説家の方々を見るに、50話は通過点に過ぎないみたいです。プロットはまだあるので問題ないのですが、ここから先は完結までエタり?との戦いだそうですね。ちゃんと完結させたいし、勇介達の喜怒哀楽を書けると楽しそうです。冒険者っていう職業は地球にはありません。冒険を行う冒険家は居るし、猛獣討伐をする猟師やハンターなんかもいます、金次第の何でも屋もいますが、全部やるという人は少ないと思います。そんな中冒険者という架空の職業ができたのは、魔物という地球にはいない謎生物に対応するためなのか、作家達の妄想や希望から生まれたものなのか、ちょっと気になりますよね。次回もお楽しみに

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