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異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
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第四十九話 その後の会話

戦いの後は、休息が必要だ

ミルのそばに近づくと耳がピコピコと動いて周囲を警戒し始めたので、頭を撫でて安心させてやる。

「っ!」

「がはっ」

頭を撫でた途端に突然ミルがガバッと起き上がり、俺に抱き着いて来た。別に泣きわめいたりはしなかったが、呼吸が苦しくなるほどギュッと抱き着かれ、俺の方が暴れる事になった。もがく俺にようやく気がついてミルが力を緩めてくれた頃には、俺は酸欠で意識がもうろうとし始めており、一気に酸素を吸い込んでむせかえった挙句ゼエゼエと呼吸していた。

「ミル、せっかく助かったのに俺を殺す気か・・・」

「も、もうしわけありましぇん・・・」

「心配かけたのは悪かったけどよ、これで死んじまったら意味ねえぞ? 抱き着くのは構わねえけど力加減は注意しろっていつも言っているだろ? 気をつけねえと、小さい子供とかだったら死んじまうぞ?」

「うぅ・・・ぐすっ」

苦しかったので若干叱ったら泣き出してしまったので、俺から抱き寄せて頭を撫でてやる。

「悪かった。別に急に居なくなったりしねえから、もう少し落ち着こうぜ? 俺が見えなくなるたびにこんなに大騒ぎしていたらアリシアが困っちまうよ。俺は居なくなったりしねえから、安心しろ。大丈夫だ。な?」

「はい、ぐすっ、ひぐっ・・・」

20分ぐらい頭を撫でながら大丈夫だと言って聞かせ続けたころ、近くで人が動く気配がしてアリシアが起き上がった。

「昨日の夜急に居なくなったと思ったら朝目覚めた途端ミルと抱き合っているなんてずいぶんな事ね。何があったのかしら」

視線が痛いので離れようとするが、ミルに服をがっちりとつかまれて離れられなくなってしまった。

「心配かけたからな。悪かったよ」

「心配したのはミルだけじゃないわ。お爺さん達も心配していたし、私だって心配したわよ。あなたが居なくなったら困るもの」

そう言って視線を逸らすアリシアの頭も撫でておく。急に頭を撫でられて頬を膨らましていたが、何も言ってはこなかった。

「悪かった」

「見た限り無事のようだし、その顔だと何かいい事があったんでしょうから、別にいいわよ。何があったのかしら?」

事情説明を求めるアリシアの問に、ミルの耳がピコピコと反応している。器用というかなんというか。

「昨日村に来た時もめた従者を覚えているか?」

「ええ、覚えているわ。あの従者がどうしたのかしら?」

「昨日の夜、あいつが襲って来たんだよ。で、返り討ちにしたら昨日仲裁に入ってくれた騎士が事情を説明しろって言うから説明してきた。騎士も納得したみたいだからこれ以上この件で何か言われることはないと思うぜ」

「従者が難民を襲うなんて・・・。その従者はどうなったのかしら?」

「騎士に事情を話して、それがほんとだとわかったらすぐに殺されたよ。騎士の顔に泥を塗った事と、平民に剣を向けたからだってさ」

「そう・・・」

ゴルツの最後を聞いてアリシアが暗い顔をする。さすがに即刻処刑はこの世界でも異例なのだろうかと一瞬思ったが・・・。

「従者とはいえ騎士様の手足となる人が守るべき民衆に剣を向けてはダメよね。仕方ないわ」

納得したと言わんばかりにスッキリした顔になった。

「即刻処刑って結構普通なのか?」

「そもそもそれほどの大罪を犯すことが稀よ。普通は投獄とか拷問やむち打ちの刑なんかで済むと思うわ」

「じゃあ今回はやりすぎなのか?」

「たぶんあの従者は他にも何か問題を起こしていたんじゃないかしら? 今回の事も含めて罪が重かったんでしょうね」

「ああ、そういえばそんな事言っていたな」

騎士が確かそんな事を言っていたなと思い、記憶を探っていると、ミルが俺にもたれかかってきた。また寝てしまったらしい。

「ミルは泣き疲れたようだな。俺も眠い。かと言って朝にもらえるらしい水とかの補給を受けられないのは困るしなあ」

「わしらが何とかするから、お前さんは寝ておれ」

声のした方に目を向けると、爺さんが起きてこちらを見ていた。昨日ゴルツに蹴られたはずだが、ケガはなさそうか?

「大丈夫だったか?」

「それはこっちのセリフじゃ。お前さんが連れていかれたあと、その子も孫もお前さんを心配しておった。その子はずいぶんと長く起きて待っておったから、寝かせてやりなさい。配給品はわしらがお前さん達の分ももらっておくから、気にしなくていいわい」

「悪いな。頼めるか」

「任せておれ」

うなずく爺さんにお礼を述べ、アリシアに振り返る。俺が寝ている間、アリシアを守るやつが居なくなるからだ。

「悪いがアリシア、少し寝かせてくれ」

「ええ。あなたが万全の状態であることが重要だもの。そのぐらい問題ないわ」

「何か不審なことがあったら遠慮なく起こせよ」

「わかっているわよ・・・」

そっぽを向くアリシアを放置してミルを寝かせてやる。俺に抱き着いたままなので、そのまま横になるしかなかった。ミルの毛布をもらって体にかけ、しばらくミルの頭を撫でているうちに意識が飛ぶ。目覚めた時はもう昼過ぎだった。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


何かが体のそばでビクッと動いた感覚で目が覚める。久しぶりに夢を見ない睡眠だったので、ぐっすり眠れたと思う。目を開けると、ミルの耳が目の前でピコピコと動いていた。頭を動かして視線を下に向けると、音に気がついて顔をあげたミルと目が合う。

「あ、ああああの、その・・・」

「おはよう。眠れたか?」

「は、ははははい、その、えっと・・・」

ミルは顔が真っ赤で、目がぐるぐると回りだしている。熱でもあるのかと思っておでこを触るが、熱はないようだ。首を回してアリシアを探すと、アリシアは俺のカバンを漁っていた。体を起こそうとしたらミルの手が離れたので、起き上がって周囲を見回す。

「あら、ようやく起きたのね。昨日は大丈夫だったの?」

声のした方を振り返ると、俺の後ろで奥さんが赤ちゃんを抱っこしながらこちらを見ていた。

「今何時ぐらいかな」

「時間は私達にはわからないわ。たぶんお昼くらいなんじゃないかしら? 他の難民達が食事をとり始めているわ」

奥さんに聞いたつもりだったが、背後からアリシアが答える。この世界に来た時は、部屋に居たので腕時計などは着けておらず、こっちの世界では時計を見た事無いので、正確な時間はよくわからないらしい。金持ち貴族や一部の施設には時計があるそうなので、時計や時間の概念が無い訳じゃないのだが、田舎と同じで時に縛られない感覚的な生活を人々は送っているようだ。

「そういえば腹減ったな。でも火は使えねえから、どうしたもんか・・・。配給で何もらったんだ?」

「お爺さん達が言うには少しのパンと水が一人当たり桶一杯だそうよ。私達は人数が多いから8杯分もらってあるわ」

「昨日の騎士様が参られてな、お前さんに迷惑をかけたからと特別に1つ多くパンを下さったぞ。後でお礼を言わねば」

爺さんがホクホク顔で俺に言ってくる。男の子はすでに旦那さんのそばでパンをかじっていた。固そうなロールパンみたいだ。

「そんなことがあったのか。それ以外になんか言っていたか?」

「私にこれを渡して戻って行ったわ。あなたに必ず渡してほしいんですって。何なのかしらこれ」

アリシアがそう言って白い封筒っぽいものを渡してくる。溶けた蝋で封がしてあり、完全に中世の手紙だ。紙の質は良くない。

「ああ、今回の騒動は言ってしまえば身内の不祥事だから、そのお詫びにって事だ。後で役に立つ品らしいぜ」

「そう。何かは教えてくれないのかしら?」

「お楽しみってやつだ」

怪しそうな顔をするアリシアをごまかし、グールとの戦闘で手に入れた鞄に封筒を入れる。

「さあ、俺達も食べようぜ。ぐっすり寝たし、食べて休憩したら出発だ」

「ずいぶん急ね。この村にはとどまらないの?」

奥さんが心配そうな顔で俺を見てくる。さすがに長旅で疲れているのだろうか? それとも何か別の理由があるのか。

「ここは見ての通り難民でいっぱいだ。前の村に居た門番の言葉を信じればまだまだやってくるはずだろ? 動けるうちに移動しちまった方がいいと思ったのさ。難民であふれたら村の人が困るって言っていたし、あんなこともあったしな」

「そうだね。チラチラと見てくる人がいるし、お昼ご飯を食べたら移動しようか。行く当てはあるのかい?」

旦那さんが難民達をチラ見しながら同意してくれた。そう言われて視線を向けると、5人ほど視線をそらされた気がする。

「確かに見てきているみたいだな。従者を返り討ちにしちまったらそうなるか」

「フォッフォッフォッ。従者とは経験を積めば騎士様になられるお方。一介の難民に返り討ちにされたと聞けば噂も広まるじゃろう」

婆さんが笑いながらそう言ってくる。目立ちたくないと騎士に言ったにもかかわらず、十分目立つ行動をしてしまっているわけか。

「そういう面も含めて、この村からは離れよう。騎士がエルタールの街が近くにあるって教えてくれた。ひとまずはそこへ行こうぜ」

「エルタール? この辺じゃ一番の大都市だね。さすがは騎士様だ」

旦那さんがなぜか騎士の勧めに感心していた。いまいち意味が分からなくて困った顔をしていると、旦那さんが説明してくれる。

「エルタールの街は帝国と王国の国境に近いけど、その分貿易で栄えていてこの辺じゃ一番大きな町なんだ。あそこなら私達難民が住める場所も確保できるだろうし、うまくいけば仕事を探してお金を稼げるかもしれない。旅の荷運びくらいなら私にもできるだろうしね。君は強いから傭兵になればきっと仕事には困らないと思うよ。騎士様もそれを見越しての勧めなんじゃないかな」

「なるほどな」

確かにそうだ。騎士はあの街で冒険者になるのがいいだろうとエルタールの街を勧めて来た。裏の目的は別にあったが、建前上はそういう事だ。旦那さんの読みもある意味当たっている。冒険者の話を旦那さんは知っているのだろうか。

「冒険者ギルドがあるからそこで冒険者になればいいって言われたが、冒険者って何をするんだろう?」

俺の問に旦那さんと奥さんが少し暗い顔をした。爺さんや婆さんも聞こえなかったふりをしている。何だこの反応は。


第49話です。前話で一晩近くミルを勇介から離しましたが、そのあと再開したらどうなるかなっていう話ですね。つなぎ感が否めないですが、これで次話へ向かいます。5000字を超える話ばかりでしたが、今回は4000ちょいと若干少なめになっています。最後の反応があった後、冒険者の評判に対する会話が始まるのですが、そこをぶった切って話をまたいだり、切らずに追加するには長すぎるかなと思った結果になります。続きをなかなかかけない現状ストックが減っていく一方なので、その辺も考えているとご了承ください。次回もお楽しみに

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