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異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
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第四話 森で初射撃

弾倉交換してボルトを後退させるだけではない。それが昔の銃の装填

 顔に風を感じて、俺はゆっくりと目を覚ます。体に目立った傷は無いが、ちょうど背中のあたりに何か固い物があったようで若干痛い。上半身を起こして周りを見回すと、森というには少し木が少なく、林というにはうっそうとしすぎている印象を受ける緑の中だった。傾斜は無いので山ではないと思うが、俺の知る限り近所にこんなところは無い。一応警戒したが、風通しが悪いのか木も揺れないし、動物の気配もしない。もちろん黒い霧も見当たらなかった。足元に目を向けると、見慣れない銃が1丁と見覚えのない茶色いカバンが1つ、少し離れた所に俺が学校に行く時に使う白いスニーカーがあった。最後の記憶は家の自分の部屋の中だったが、周りの風景はどう見ても外だ。足は部屋の中に居た時と同じ靴下を履いていたので、とりあえずスニーカーの所へ行って履いておく。サイズもぴったりだし、色も見た目も間違いなく俺のスニーカーだ。玄関で脱いだはずだが、靴下で歩くには地面の石が痛いのでうれしかった。次に銃とカバンに近寄る。カバンを開けると、紙の筒と金色のキャップみたいな物が大量に入っていた。他にも丸い木のボールから棒が付きだしたような道具が入っている。周りをもう一度確認したが、やはり動物の気配が無い。風はそよ風程度のものが時々吹いてきたが、やはり風通しは良くない場所なのだろう。見晴らしもよくないし、目の前の木を通り過ぎたらクマとか居ても困るので、周りに気を配りつつ紙の筒を一つ取り出す。和紙だと思ったが、どちらかというとキャラメルとかに付いているオブラートっぽい印象の紙だった。油が塗ってあるらしく、ちょっとベタつく。カバンの中には同じものと思われる筒がぎっしりと詰まっている。皮で出来た仕切りできちんと並べられているが、このカバンは筒の高さの倍以上は深いので、おそらく30包ほどは入っているのだろう。試しに光りにかざして中身が透けて見えるか試してみると、火薬であろう砂状の物と、おそらくこれが弾なのだろう。金属っぽい硬い感触の塊が入っていた。俺の知る弾薬とは若干影が違う。筒をカバンに戻し、銃を手に取ろうと近寄った。銃を握った瞬間、目の前の空間にSF映画のような近未来的印象を受ける半透明のスクリーンが現れる。驚いて周りを見回すが、スクリーンは視界のある場所に固定されており、顔を動かしても追従してくる。ゲームのメニュー画面を連想させるそれは、今持っている銃の情報ウインドウだ。書かれている言葉は日本語なので、読み進めてみる。


~・~・~・~・~・~・~・~・~

名称:エンフィールド銃

分類:旧式ライフルマスケット・ロング銃身タイプ、軍用小銃

装弾数:1発

所持弾薬数:2500発

製作者情報:アセット帝国召喚術師、エルス

・解説

・改造|(選択できません)

・修復・整備|(完全な状態です)

~・~・~・~・~・~・~・~・~


いかにもゲームって感じがする。分類を読んで分かったが、銃ではあるものの結構な旧式小銃のようだ。装弾数20発以上が当たり前のアサルトライフルはもちろん、5発くらいは入る昔のボルトアクションライフルよりもさらに古いのかもしれない。製作者の召喚術師という職業も気になるが、所持弾数2500発という記述の方が驚いた。どこにそんなにたくさんと思ってさっきのカバンに手を突っ込むと、見た目以上に奥行きがある事が分かった。ちょっと深いとかそういうレベルではない。腕が肩のあたりまでカバンに入っているのにまだ先があるようで、ちょっと寒気がする。試しに一番上、今見えている筒の列を思い切って5発ほど取り出してみると、コンビニの飲み物の棚のように空いた隙間に筒が押し出されてきた。下にある筒がどうなっているのかはだいたい理解できたので、筒をもとに戻す。筒は柔らかいので潰れるかと少し心配したが、筒を戻そうとすると下から出てきた分の筒が水に沈むようにゆっくりと落ちていき、場所を開けてくれた。便利だ。まさに魔法のカバンだな。ウインドウが出た時点で俺の知る世界じゃないことは薄々分かっていたが、こんなファンタジーなカバンが俺の知る世界にあるわけないので、ここは間違いなく俺の知らない世界だ。アニメとかだと、あの黒い霧が俺をこの世界に召喚するゲートか、連れてきた何者かの可能性があるが、俺をこんな森の中に置き去りにする理由がわからない。銃があるし、新手のリアルサバイバルゲームとかの可能性がチラッと頭をよぎる。しかし、それだとこのカバンやウインドウがどういう仕組みなのか説明がつかない。科学が進んでいると言われていても、腕が丸々入るような容量のカバンの見た目がこんなに小さいなんてありえない。体に傷は無いし、機械を埋め込まれて云々も無いだろう。アニメを見て憧れた異世界に今自分が居るのだと思うとちょっとテンションが上がる。ウインドウに解説という項目があったので選択できないか試行錯誤してみるが、手を画面の位置に持ってきても反応しないし、念じる系は思ったより難しい。10分近く格闘した結果、念じることで選択ができる事が分かった。音声入力も有効らしいと気がついたのはさらに30分近く後だったので若干落胆してしまった。あの努力はいったい・・・。念じることで解説の文字を選択すると、ウインドウが切り替わり、銃に関する解説が表示される。ちゃんと日本語だ。その解説によると、アセット帝国の召喚術師エルスさんが、今から1591年前に帝国で召喚術を使って異世界から召喚した物で、どこの世界から来た物かは分かっておらず、扱い方も分からなかった為に利用できなかった代物らしい。元々は異世界から強力な魔物を召喚し、使い魔として軍事利用する為に召喚術を行ったそうだが、召喚されたのがこの銃と大量の弾薬だったらしい。銃は複数あったようだが、運用法を調べる過程で誤射誤爆事故が多発し、多数の死者が出た上、他の銃は誤爆の際に破損し、危険物品と判断されたようだ。以降帝国の宝物庫に保管もとい放置されていた。というところで解説は終わっている。まあ、銃という存在を知らない人間が銃をいじったらそういう結果になることは想像に難しくないが、1600年近く前の銃がこんなにきれいな状態で俺のところにある理由は分からなかった。そんなに昔から銃ってあるんだっけ? とも思うが、火薬の歴史は2000年を軽く超えるらしいので詳しいことはよくわからない。というより、やっぱり魔物居るのか。身を守るすべが今のところこの銃しかないので、撃ち方を覚えなければ生きていけないという事は分かった。撃てるのか怪しいが、状態が良いのは一目瞭然なのでそれっぽく構えてみると、ウインドウが切り替わり「未装填。装填してください」と文字が出てきた。もちろん弾は入っていないだろうが、装填方法は良く知らない。しばらく銃を見つめているとまたウインドウが切り替わり「装填をアシストしますか? Yes/No」という文字が現れた。完全にゲームのチュートリアル感覚である。Yesと念じると、軽く頭痛がして、痛みが引いた後、この銃に関する知識が頭の中に浮かんできた。まさにファンタジーだ。知識に従って装填を行う。結構大変だが、アシストは知識だけではなく行動も補佐してくれるらしく、人生初の実銃への装填はスムーズに終わった。それっぽく構えると、ウインドウとは別に十字が視界に現れ、前にある木のあたりを指す。銃を動かすと、十字も銃の動きに追従した。たぶんこれが照準だろう。銃を木の真ん中に持っていくと、十字の周りに鍵かっこのような物が四方から現れ、互いに少しずつ空白を開けて十字の周りで四角を形成する。完全に照準だ。木から銃をそらすと四角が消えて十字に戻るので、十字が銃口の延長線上の位置で、何かをロックオンすると四角が現れるらしい。近場の石と遠くの木では四角の大きさに差があるので、おそらく遠くの物は精度的問題でロックが甘くなるのだろう。差があるといっても見通しの良くないこの場所では誤差の範囲だった。試しに撃とうとするがうまくいかない。困惑しているとまたしてもウインドウが切り替わり「射撃と照準をアシストしますか? Yes/No」と出てきた。チュートリアル様々だ。Yesを選択すると、またしても軽い頭痛がして、痛みが引いた後に銃を構えようとすると、正しい構え方、照準の仕方、発射操作の仕方が頭に浮かんでくる。これで大丈夫だろう。アシストに助けられ、とりあえず目の前の木に照準する。大きく深呼吸をしてから引き金を引いた。一拍後に衝撃が体に走る。乾いた雷みたいな音が鳴り響き、耳にちょっと無視できないダメージが入る。発砲炎もすごい。アシストによる姿勢制御のおかげかひっくり返りはしなかったが、やはり衝撃もそれなりにあるようだ。木には大穴が開いているが、倒れるほどではないらしい。弾は貫通して彼方へと消えている。初の実弾射撃は良くも悪くも想像やゲームと違った。反動は想定していたが、装填のめんどくささや思いのほか発砲炎がすごい事には驚いた。もちろん音もでかい。しばらく残心した後、耳を澄ましつつ周りを見回す。発砲音に怯えて逃げる動物や、音に反応して寄ってくる動物は居ないようだ。静かそのものである。危険が無い事を確認するとだんだんとテンションが上がってきた。

「うっひょー!! 実銃ってやっぱりスゲーな!」

ひとしきりはしゃいだ後、カバンを肩にかけ、銃を背負って移動を開始する。あの後森を歩きながら確認したら、筒は紙薬包、金色のキャップっぽい物はパーカッションキャップというらしい。丸い木のボールから棒が生えたようなものは装填を補助する道具だそうだ。物を手に持って見るとウインドウが切り替わって情報を表示してくれるらしい。

第四話です。異世界来ていきなり目の前に銃があったら皆さんはどうしますか?

私はテンションが上がると思っていますが、実際には困惑するでしょう。中には怖がる人もいるかもしれません。一部の人にとって、銃とはそういう物ですからね。明日五話を投稿したら連続投稿を終了し、プロットが枯渇しないようにゆっくり投稿に切り替えます。2週間に1回から3週間に1回を予定しています。

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