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異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
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第四十八話 騎士との条件交渉

利害が一致すれば、協力できる

「1つ目、私の連れには一切手出ししないと誓っていただきたい。騎士様が信じる最も尊いお方に対して誓っていただきます」

「なんだと?」

「当然でございましょう。私が帝国へ来た目的はあの二人を王国から連れ出すことでございます。帝国へ来たのに身の安全が保障できないでは話になりません。協力など到底できるはずもなく、今すぐにでもこの村を去り、別の国か地域へ移動せねばなりません」

「貴様にとってあの者達はどれほど重要な存在なのだ。貴様が侍らせていた2人の女といい、後ろに控える家族といい、我にはただの難民にしか見えぬ。身内を大切に思うあまり我らに取り入ろうとする輩はたくさん見て来たが、身内の安全のために騎士を脅す難民など前代未聞だ。あの者達の価値を、この我が見誤っているとでもいうつもりか?」

「ええ。私にとって連れは重要な存在でございます。何に変えても守って見せます」

騎士がアリシアやミルはともかく、爺さん達まで関係の深い人物っぽく捉えているようだが、変に訂正したり線引きしたりするのも爺さん達に失礼だと思って特に言及はせずに肯定しておく。自分が間違っていると言われて騎士は不機嫌そうな表情を見せたが、石が赤くなったのでなぜだと言わんばかりの顔で俺を見てくる。爺さん達の件で嘘と判断されたのだろうか?

「石は今の発言に嘘があると言っておる。この期に及んでなぜ嘘をつく」

「一部を訂正いたします。私の元々の連れはあの2人の少女だけでございます。この村に来た時の騒動でも説明致しましたが、後ろに控えていた家族は道中で一緒になった難民にすぎません。この村か、騎士様のおっしゃるエルタールの街に着いたら元通り別行動するつもりでございます。目の前で危険にさらされればできる限り助けますが、連れの2人と同時に危険に見舞われ、どちらかしか助けられないなら、私は迷わずあの2人を助けるでしょう」

俺の発言に騎士はうなずくと、椅子の背もたれに寄り掛かった。この部屋に入ってきた瞬間の次にくつろいでいる。

「よかろう。その条件は問題ない」

「2つ目、あくまでも協力者という立場に居られるようにしていただきたい。騎士様の部下や捨て駒では困ります」

「なぜ困る?」

「私の目的は先ほど話した通りあの2人を守る事を最優先にしております。何かあった時、あの2人を置いて騎士様の仕事に協力する必要がありますが、何があってもあの2人を守れるように、関係は簡単に切れる立場が望ましいのでございます」

「つまり反乱時にあの2人の女が危険にさらされているとわかれば、貴様はこの我を裏切ってあの2人を優先するというのか」

「たとえ国が敵に回ろうともそうせねばなりません。あの2人を守る事にこそ私の生きる意味があります」

「貴様にメリットを与え、いろいろと情報を話したのは来る可能性の高い反乱時に貴様の力を借りるためだ。これでは意味がない」

ダメもとで言ってみた2つ目の条件は騎士に簡単に見抜かれて却下されてしまった。騎士は怒ってはいないようだが、目が鋭くなっている。あわよくば事が起こってもミル達を理由に断れるようにしたかったが、それは無理のようだ。

「では、反乱が起こった時は必ず戦力として協力致します。その代わり、金で雇った傭兵のような捨て駒運用はおやめください」

「さすがの貴様も命が惜しいか」

騎士は鼻を鳴らし、くだらないと言わんばかりの顔でそう言ってくる。死ぬのは嫌だが、だからとつけた条件ではない。

「私自身の死はあまり関係ございません。問題は私が死ぬとあの2人が路頭に迷う事、それだけは許容しかねます」

「条件はすべてあの2人のためだと言うのか。本当に自分のためではないと?」

「正直な気持ちを申し上げれば死ぬのは怖いのです。しかし私には簡単に死ねない理由がございます」

「それがあの2人か」

「はい」

まっすぐ騎士の目を見てそう言った。旦那様である男爵から、アリシアを頼まれている。俺が死んだらその任務はミルが引き継ぐだろう。しかし身体能力が高くてもミルの戦闘力には限界があるはずで、アリシアを養う必要上仕事中にアリシアを守ったり身の回りの世話をしたりする人が必要だ。そのすべてをミルひとりではできない。最悪ミルも何かの事故で死んでしまい、アリシアが異国の地で路頭に迷う事になるだろう。それは避けねばならない。ミルにもそんなことになってほしくないしな。

「何かを守ろうとする者は、守るべきものがない者より生への執着が強く、いい剣士になれる場合もある。いいだろう」

騎士は少し腕を組んで考えた後、そうつぶやいて了承してくれた。これで捨て駒にされたりはしないだろう。たぶん。

「3つ目」

「まだあるのか」

「お許しをいただければ4つ条件を出したいと思っております。お許しください」

不機嫌そうな騎士に頭を下げる。

「続けよ」

「3つ目、私は戦闘時に特殊な武器を使用いたします。遠距離攻撃用の武器で、弓よりも威力があり、早く、遠く、正確に敵を排除できるものでございます。反面扱いが非常に難しく、操作も複雑で私以外には扱うことができないでしょう」

「ほう。弓より早く、威力がある遠距離攻撃武器か、クロスボウでも使うのか?」

「おそらく騎士様には想像もつかないものだと思われます。私の故郷に伝わる旧式の武器でございます」

「興味がわくが、見せてはもらえぬのか」

「実演は可能でございますが、攻撃できる回数には限界がございます。それをみすみす1回使うのはもったいないかと」

「ぐぬぬ」

騎士が銃を見たいと言ってきたが、弾薬も無限ではないのでそう言って回避しておく。銃について知る者は多くない方がいい。

「それで、その特殊な武器を使うからどうしたというのだ」

不機嫌そうに腕を組みながら騎士は先を促す。

「この武器は秘密が多いため、できる限り行動は単独か少人数でできる任務をお願いしたいのでございます」

「しかし、扱う武器を指揮官が知らんのは問題である。それほどまでに秘密にしなければならぬ理由はなんだ」

騎士が怪しむような眼で俺を見てくる。若干迷ったが、俺は銃という物が俺達の世界でたどった歴史の一部を教えることにした。

「この武器は・・・。今後の戦争や戦い方を一新する可能性を秘めております」

「なんだと?」

「もしこの武器の仕組みや存在が敵対勢力に渡れば、この武器を量産しての戦争が起こるでしょう。そうなれば、剣は役に立たなくなります。どんなに剣術が優れた熟練の騎士でも、私があの武器を使って戦えばかすり傷一つ追わずに倒せましょう」

「それは、剣が届く位置に騎士が近づくより、貴様が早く攻撃できるからか」

「はい」

騎士は剣が役に立たなくなるという部分で若干過剰に反応したが、冷静に理由を分析していた。さすがは騎士というべきか。

「弓兵もその点は同じだが、弓はその気になればよけられぬ事は無い。熟練の騎士なら・・・」

「あの武器が放つ攻撃をよけることは不可能でございます」

「なっ」

少し考えた後に騎士がよけられる可能性を話し出したが、俺は即座に否定した。俺に主張を否定されて騎士が驚いた顔をする。

「私の武器が放つ弾は、矢など止まって見えるほど高速でございます。あの武器ならば、200mは離れた位置に存在する人間が私に気がつき、剣を抜くために手を腰に持っていこうと手を動かしはじめてから攻撃しても、剣に手が触れるより早く相手の命を奪う事が可能でございます。よけることなど不可能でしょう。攻撃されたと気がついた瞬間にはすでに命中しているのですから」

「そ、そんなことが・・・」

俺の例え話に騎士が絶句する。実際にはこちらも相手に気がつく必要があるし、装填速度の問題や、そもそも狙いが不正確で外す可能性、外した場合の再装填など考慮するべきものはたくさんあったが、細かい事は抜きでいいだろう。石も反応していない。

「理由はご理解いただけたでしょうか?」

「・・・わかった。もし貴様を使う時は、単独か少人数になるようにできるだけ配慮しよう」

「4つ目」

「これで最後なのだろうな?」

「はい」

騎士が疑うような視線を向けてくる。さっき4つと言ったし、嘘ではないのでうなずいておく。

「続けよ」

「4つ目、私の事、私の扱う武器や戦法などに関して、一切の口外をなさらぬようにお願いいたします」

「何?」

情報統制に関しての条件を出したら、騎士が顔をゆがませた。反論が来る前に手早く理由を説明する。

「先ほども申し上げました通り、私の扱う武器は特殊でございます。情報が漏れる事がいかに危険か騎士様はご存知でしょう。武器だけでなく、可能であれば私に関する情報も口外なさらないようにとお願いしたいのでございます」

「しかし、我が主に貴様を説明できぬのは困る。情勢が不安定なのでスパイ容疑をかけられるやもしれぬ。すべては無理だ」

逆に言えば一部は可能だと言う事なので、すかさず妥協案を提案する。

「であれば、私を難民出身の冒険者と言う事にしていただき、それ以前の事は知らないことにしてはいかがでしょうか」

「貴様の持つ武器について聞かれたらどうする。立場上主の問であれば我は答えねばならぬぞ?」

「私との取り決めで口外しないことを条件にしていると、ありのままお話しください。謎が多く怪しいですが、戦闘力が確かなら不安定な治安や情勢的にえり好みはしないかと思われます。仮に信用できず使われないならそれはそれで仕方のない事かと」

「しかし、しかしな・・・」

俺の説明を受けてなお、騎士は何かを迷っているようだ。何を迷っているのかはわからないが、ここは畳み掛けるべきだろう。

「騎士様は表で正義を語り、騎士道精神を重んじ、民衆を守る正義の味方であるべきでしょう。裏方でこそこそ動く者を隅々まで調べるのは困難であり、そういう仕事をする者達は何か訳ありなものでございます。そういう事にしておけばよろしいかと」

俺の言葉に対し、騎士が何か納得したような表情を見せ、半分あきらめたような顔で一度大きくため息をついた。

「我の勘に従い、異邦人の抱える何かには触れないことにすると言った。その言葉は嘘ではない故、守ろう。できる限りな」

「ありがとうございます」

俺も一度安堵のため息をはく。条件は出し、ほぼ俺の言いだした通りのまま飲んでくれるという。これならこの騎士に協力するのもいいだろう。反乱がおこった時に何を命じられるかわからないのが不安だし、反乱の場合戦う相手も人なのでできれば遠慮したいが、いろいろ条件を付けた挙句に断るというのもおかしいし、何よりミルやアリシアの安全を騎士が保障するならそれがいい。

「条件を4つ聞いた。ほぼ問題ないだろう。再度問う。味方になるか?」

石が若干赤くなったので問題はあるのだろうが、そこは仕方ないと思い、騎士の提案に同意する。

「私でよろしければ、微力ながらお手伝い致します。条件に従い、騎士様が最も信じる尊いお方へ誓いをお願い致します」

「よかろう。天地全能の神なるアンカールド様に我は今ここで、この者が出す条件を呑み、守り、決して破らない事を誓う」

騎士は右手を上げ、選手宣誓のような格好でそう言った。この世界にもやっぱり宗教があり、神を信じる人は居るようだ。

「これで文句はないな?」

「はい。有事の際は微力ながらお手伝い致します」

「期待しているぞ。おい! 誰かおらぬか!」

騎士はニヤニヤと笑みを浮かべ、大声で人を呼ぶ。扉の外で待機していたであろうさっきの従者のほか、ゴルツを処刑しに行った従者達のほとんども入ってきた。記憶違いでなければ2人ほどまだ姿が見えないので、遺体の処理でもしているのだろうか。

「お呼びでしょうか。サムフェル様」

「紙とペンを持ってこい。この者に渡す書類を作らねばならん。ゴルツはどうした」

「ご命令に従い、森の中で首をはねてまいりました。遺体は現在処理を施し、棺桶に移動中でございます」

従者の一人が部屋を出ていき、別の従者がゴルツの最後を告げる。処理って何をしたんだろうと若干気になるが、どうせ知ってもろくな情報ではないだろうと思ったので聞かなかった。部屋につけられた窓の外は白み始めており、すでに朝になっていると俺に教えてくれている。騎士も俺の視線に気がついて後ろを振り向くと、小さくため息を吐いていた。

「書類は本日中に届けさせよう。それまでこの村で待機せよ。担当の村人を探して補給を受けるがいい。我には仮眠が必要だ」

「承知致しました。本日はこの村に留まる事に致します」

「うむ」

騎士の指示に従い、礼を述べて部屋を後にする。護衛か監視か、従者が一人広場までついて来たが、広場に俺が入ったのを見届けると無言で戻って行った。ミル達はもちろん、ほとんどの難民はまだ寝ているようだ。白み始めたと言ってもまだ薄暗く、きっと早朝なのだろう。


第48話です。交渉事は苦手なので、こういった条件や腹の探り合いは筆者の不得意分野でもあります。今後も注意が必要です。

まだまだストックはありますが、続きが書けない日々が続いているので、今後更新間隔が伸びる事が予想されます。ご了承ください。1話5000時ほどで計算していた当初の計画と違い、区切りの良さを重視するとちょうど5100~5200文字くらいに落ち着くことが連載していてわかってきました。なのでストックが少しだけ早く減っていたりします(^_^: さぁ、一晩放置されていたミル達はどうしているでしょうか。次回もお楽しみに

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