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異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
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第四十七話 騎士サムフェルの考えとメリット

うまい話には裏がある

「サノユウスケ。あまり聞かぬ名だな。容姿から判断するに異邦人であろうが、本当に難民なのか?」

「はい。王都から逃げてまいりました」

「・・・真実か。ゴルツも無能ではあったが雑魚ではなかったはずだ。貴様のその卓越した対応力と戦闘力は称賛に値するが、難民だと言い切るには強すぎると我は思う。石が真実だというので信じるが、何か隠しておるのは間違いあるまい?」

騎士が痛い所をついてくる。嘘を言えばバレるので、少し迷った挙句むしろ本当だと認めてみる事にした。

「はい。お話しできない事もたくさんございます」

「やはりな。貴様以外にも異邦人を見たことがあるが、その者達も貴様と同じように何かを抱えておった。異邦人がすべてそうなのか、貴様らが特殊なのかは我にはわからぬ。だが、その抱えておるものに触れることは危険だと騎士としての勘が我に教えてくれている。抱えているものについてはこれ以上追及しないので安心せよ。いくつか質問をしたら、貴様も休め」

「ご配慮に感謝致します」

「気にするな。騎士の勘はいままでの戦いで必ず我の命を救ってくれた。その勘が触れるなと言っている。それだけだ」

「ありがとうございます」

いろいろと突っ込みたいが、しゃべれと命令されるよりはマシなのでお礼を言っておく。

「では質問に移る。貴様らは今後どうするつもりだ?」

「特に計画があるわけではございませんが、帝国のどこか大きめの町へ行き、当面の生活資金を稼ぐつもりでございます。この村も早ければ日が登り次第、遅くても翌日の朝には出ていくつもりでございます」

「稼ぐあてはあるのか?」

当初考えていた筋書きを話したが、何も当てがありませんでは問題があるだろうか。下手なことを言って石に出ても困るか。

「情報が無いため、町へ行ってから収集するつもりでいます」

「できる事ならこの場で従者にして我の下で働かせたいが、従者になるにはそれなりの家柄が必要だからな。惜しいものだ」

危うく勧誘されるところだったようだが、身分的問題が俺を救ってくれたらしい。

「お気遣いはうれしいのですが、私には連れがおりますので、お役には立てない可能性が高いかと」

お気遣いはうれしいという部分で若干石が赤くなり始めたので慌てたが、連れがいるという発言で透明に戻った。危ない。

「連れがそんなに重要か。貴様は平民ではないのか?」

「・・・」

奴隷だと話してしまっていいのだろうか? 石があるので平民だと言えばバレるが、せっかく話し合って決めた設定と食い違うのもまずい。情報漏えい防止のためとはいえ、この場で嘘をつくのも問題だ。従者の顔が険しくなってきたが、どうしたものか。

「・・・その様子では今の質問も問題があるようだな。取り消そう。答えなくてもよい」

「申し訳ございません」

「一度我が自ら宣言したことだ。今更変更してしまっては騎士の風上にも置けぬ。気にするな」

「ありがとうございます」

「貴様ほどの実力があるなら、ここから少し進んだところに街がある。エルタールという街だ。周囲を広大な森に囲まれ、水がうまい。代わりに魔物が多く街の周囲に大量に生息しておる。頻繁に行商人が襲われるのであの街には冒険者ギルドがあるはずだ。そこへ登録して冒険者になるのがよかろう。行商人の護衛や魔物の討伐をすれば金には困るまい。貴様の実力なら死の危険も高くないはずだ。あの街なら我が所属する騎士団の詰め所もあり、顔が利く。ギルドへ行くなら紹介状を書いてやろう」

騎士側で俺の沈黙をどう受け取ったのかはわからないが、質問を撤回してくれた。おまけにこの先にある街の情報と就職先への紹介状をくれるらしい。いきなり至れり尽くせりな対応をされて思わず騎士を疑ってしまい、顔に出てしまったようだ。

「立ったままでは話しづらい。貴様も座れ。少し席を外しておれ。しばらくこの者と話す故、外で待機し、誰も入れるな」

「はい。サムフェル様」

俺に座るように言って、最後に残っていた従者を外へ出す。従者が出て行った後、騎士がニヤニヤした顔で俺を見て来た。

「ハハハハハ。やはり貴様はただ者ではないようだな。普通騎士が難民ごときにこんな対応はしない。優遇も甚だしいからな。ただの難民や、取り入ろうとする胡散臭い小者なら我の提案に何の疑いもなく飛びついたであろう。しかし貴様はその顔をする。用心深いだけではない。気がついておるようだな。もちろんいい提案には裏があるものだ」

「どのような物でしょうか」

やはりというかなんというか、やっぱり裏があるらしい。最後だけ音量を下げ、俺の方に近づいてきた騎士に、こちらも近づく。

「近く、あの街で大規模な魔物狩りを行おうという話が持ち上がっておる。街に居る冒険者は強制参加だ。魔物を掃討し、街周辺の安全を確保すれば、貿易であの街は栄えるだろう。それに貴様も参加せよ。我の部下としてな」

俺を部下にすること自体はあきらめていなかったようだ。身分的な話はどこへ行ったのかと疑問に思ったので聞いてみる。

「冒険者なら騎士様の部下になれるのですか?」

「無論普通は無理だ。めんどうな手続きがあるからな。だがそれは我が手を回して片づけよう。どうだ?」

「実力あるものがほしいのは分かるのですが、そこまでして私を部下にして、どうしたいのでしょうか?」

やけに俺を部下へと勧誘する騎士に、俺はもっと裏事情を話すよう仕向ける。どこまで聞けるかはこの騎士次第だ。

「今、王国で反乱がおき、周辺の国も治安悪化に不安を覚えておる。自国が同じ道をたどらぬように、下層の者どもへの風当たりを和らげたり、上層の者どもを排除したりと国中で暗躍合戦が起こっているのだ。しかし、長年の対立がそれを許しはしないだろう。万が一同じ道をたどって反乱や内戦になった時、自分の味方は多い方がよい。我が主もそれをお望みのはずだ。ここで貴様に恩を売り、いざと言う時は協力してもらう。簡単な話であろう?」

思いっきりぶっちゃけた騎士に若干驚きながらも考える。石は透明なので真実だろう。

「つまり、万が一反乱がおこった時に味方になり、その先駆けとして大規模討伐に協力しろと?」

「そうだ。いきなり現れたどこの馬の骨とも知れぬ冒険者では我が主も納得できぬだろう。我の部下として実戦経験があれば、話もスムーズだ。今回の大規模討伐は我が主の提案から始まっておる。手柄を立てるにはいい機会だ」

「その提案を了承することによって、私にはどのようなメリットがあるのでしょうか?」

就職先の紹介だけでそこまでの対価を要求されるのは割に合わない。こちらには何か対価があるのだろうか。

「まずは冒険者ギルドへの紹介状が手に入る。登録がスムーズになり、バックに我がいるという事はそれなりの保証になるはずだ。他国の難民も登録できない事は無いが、元が貧民や平民、逃亡奴隷などであることが多いからな。戦いの基本を知らず、死傷率が高くて仕事の失敗率も高いため、仕事を回していいものかギルトも手を焼いておる。騎士の紹介なら実力に問題はない故、良い仕事を回してもらえるだろう。次に我の関係者である証を渡すので、エルタールの街にある迷宮への入場が無料になる。迷宮も死傷率が高いため実力のないものが入れぬよう入場規制をかけているが、同じ理由で入場がスムーズだ。迷宮内の魔物を倒し、迷宮の安全性向上に貢献すればギルドから金がもらえる。貴様にも悪い話ではないはずだ。さすがに我の名を語って威容を借りられると困るが、あの街にあるほとんどすべての店や施設は我が主の管轄だ。サービスや仕事に問題が発生しにくいだろう。問題が発生したからと言って我を頼って訪れられるのも困るが、街の者なら我の関係者に粗相はすまい」

メリットを3つ言ってきた騎士の言葉を考えてみる。ギルドへの登録がスムーズで、いい仕事を回してもらいやすくなるのはいい。迷宮への入場が無料で、入りやすいのもいいだろう。街での待遇がよくなる、あるいは悪くないレベルになるのもいいことだ。だが、それを勘定に入れても、この騎士の傘下に加わるべきだろうか? これは実質買収であり、俺の実力を買うと言う事だ。話を聞く限りこの騎士、あるいはこの騎士が仕える貴族は街での発言力や影響力が強いようだし、俺に出したメリットぐらい朝飯前の可能性がある。安い対価で戦争になった時捨て駒にされる可能性を考慮できるのだろうか? 考えている様子を見て、騎士がまたしてもニヤニヤと笑う。それに気がついて目を向けると、石が若干赤くなった。俺は騎士にある疑問をぶつける。

「無礼を承知でお聞きしますが、今述べたメリットに嘘はございませんか?」

「・・・なるほど。石に気がついたか、これは失敗したな。確かに、今言ったことすべてが真実ではない」

騎士は顔をゆがめて石を見た後、姿勢を正す。俺も椅子に深く座った。ここからが本題なのだろうか?

「隠してもいずれ分かる事だから教えておくが、我が主はエルタールの街周辺の領主様である。故にエルタールの街で領主様の部下である我に粗相を働くと言う事は、下手をすれば反逆行為であり、街の者達も心から対応してくれよう」

「謙遜でもこの石は反応するのですか?」

「いや。先ほど石が反応したのは今の話のせいではない。反乱の件だ。我が主の治めるこの領内で、反乱の火種になりそうな怪しい組織の暗躍があると我の部下がつかんでおる。その者達を事前に鎮圧できるのが理想だが、万が一反乱となった場合、猫の手も借りたい状況に陥る可能性があるのだ。不愉快極まりない話だが、我ら騎士だけでは対処が難しい」

「それは、内部に内通者か何かがいて、味方の信用が地に落ちているとか、そういう理由でしょうか?」

「鋭いな。いかにも、組織の首謀者に愚かにも手を貸す無礼者がいるようだ。誰かは分かっておらぬ」

「つまり、反乱の可能性が万が一ではなかったので石が反応したという事でございますか」

「そうだ。反乱の兆候は見えており、可能性は想像以上に高い。貴様の手を借りる可能性も、もちろん高いと言う事だ」

「そのような重大事実を部下になるとも決まっていない私に話してしまってよろしいのですか? この話を断って、反乱組織に勧誘されたら情報を売ることも考えられたのでは?」

なんだか俺が部下になる前提でいろいろ情報を話している気がしたので、まだ決めてないと釘を刺しておく。石がほんの少し赤くなったのは、これがゆすりの一種だからだろう。本当は反乱組織に頼まれても情報を話すつもりはない。

「無論、その可能性はある。故に貴様が断ったら貴様もこの村で処刑させてもらう。騎士である我には貴様を消すことなどたやすいことだ。無礼を働いたから斬った事にすれば、誰も文句を言う事は無い。不思議がる人物はいるかもしれないがな」

「私の戦闘力を評価していただいたのに、処刑できると?」

あっさり脅しを加えて来たので、こちらも殺気を放ちながら騎士をにらみつける。騎士は冷や汗をかいたものの、また話し出した。

「1対1では我でも勝てるか正直分からぬ。だがこの村には従者を含めて剣術を使えるものが10人はおるのだ。それをすべて相手にはできまい。また、騎士を殺せば当然反逆罪だ。この領地はもちろん。帝国中でお尋ね者になろう」

騎士は勝ち誇った顔で俺を見てくる。たとえ戦闘力が高くて騎士達を倒せても、犯罪者として国から追われる羽目になるという事実は、石が嘘でないと教えてくれる。取引をしているようで、実際俺に拒否権はない様だ。なかなかの悪役である。

「つまり私には初めから選択肢はないと?」

「今頃気がついたのか」

「ただ単にここで暴れて暴れた後すぐに王国へ再び逃げる可能性は考慮しないのでしょうか?」

「な・・・。ぐぬぬ、石が反応せぬと言う事は、貴様にはその気があるというのか」

「私は連れを王国から連れ出すのが目的で帝国へ来ております。帝国から追われるなら、別の場所へ逃げるしかありません」

淡々と告げて騎士を翻弄してみる。騎士は俺の表情よりも、石が反応しなかったことに驚いており、顔色が悪くなった。

「よかろう。万が一断ったら、外に居る部下に命じて貴様の連れを始末させる。これは脅しではないぞ?」

騎士は怒ったようで、低い声で俺を脅してくる。すかさず俺も威圧しながら言葉を返した。お互いの発言に石は反応しない。

「私なら、声をあげる前にあなた様の剣を奪って喉を裂けると思います」

「くっ、貴様本当に難民なのか? 本当にスパイではないのだな?」

「はい。もちろんでございます」

「騎士を脅すなど無礼極まりないが、今は不問にしよう。貴様に問う。味方になるか? 戦うか?」

騎士が俺の発言に気圧され、剣に手をかける。やりすぎたかと思って威圧をやめたらスパイ容疑をかけられたので、あっさりと否定しておく。騎士は汗をかきながら剣から手を放し、俺に答えを求めて来た。

「いくつか条件があるのですが、よろしいですか?」

「言ってみよ。飲めるかどうかは聞いてから判断する」


第47話です。最近体調が悪く、続きの執筆が滞るだけではなく、今回は更新まで遅れてしまいました。すみませんm(._.)m

騎士サムフェルは大物っぽいですね。真実の石があれば裁判とか楽そうって思うのですが、一方的に有利な道具ってそうそうないと思うので、騎士サイドにも反応する造りをしています。ユウスケが出す条件とは?次回もお楽しみに

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