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異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
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第三十五話 雪と虫

きれいなものには裏がある

「全員起きたか? さっさと飯食って出発しようぜ」

そう言って干し肉を取り出す。串に刺して火のそばで炙っただけの簡単な食事だ。焼肉ですらないがとりあえずはこれでいいだろう。水を少し温め、町で買った調味料で多少味が付いたのを確認してみんなのお椀に注いでやる。しょうゆも味噌もないのでなんだかはわからないが、お吸い物のような料理が出来上がる粉末状の調味料だ。何かを砕いているだけかもしれない。

「あったかいのう」

「ああ、体にしみるね」

「おいしい!」

「よかったわね。ありがとう」

「フォッフォッフォッ。この飲み物は体によさそうじゃ」

「余る方が困るから、全部消化してくれよ」

「言うまでもないわ。数少ない食事を、残すなんてありえないわ」

「は、はい・・・」

みんなそれぞれで喜んでいる。まだ日が出たばかりで寒いから、温かいお吸い物は好評だった。昨日使った野菜の余りを入れてあるので、単なる味付きのお湯にはなっていない。料理は基本的に母任せだった俺にとっては、昨日の料理も数少ないレパートリーだったりするわけだが、これならアリシア以外の口にも合うはずだ。アリシアにはもっと金や手間のかかった料理を再三求められているが、旅という状況、限りある予算、食材の日持ちの問題、俺の料理の腕との相談が必要だという理由でその都度断っていくうちに、アリシアの舌が俺の料理に慣れることで解決した。朝食後、鍋などを洗って片付け、全員を交代でトイレに行かせて、焚火やトイレの後始末をして出発した。後始末と言っても焚火は火を消しただけ、トイレは砂をかけて埋めただけだ。誰もくみ取らないし掃除もしない野外仮設トイレは、そこにあるだけで異常なほど異臭を放つだろう。ここはよく使われる道らしいので、そういう他人に迷惑がかかる事態が起こらないようにという配慮だ。臭いにつられて寄ってくる魔物もいるそうなので、爺さん達も文句を言わずに手伝ってくれた。焚火の消火も水を使うのはもったいないので砂をかけて消す。砂で完全に覆った後、砂を崩して火が完全に消えていることを確認した。消火したと思ってもたまに火が灰の中でまだ燃えていることがあり、山火事の原因になったりするのでこの確認は旅人の間である種のマナーになっているらしい。俺達が準備している間にいくつかグループが出発していったが、俺達の火の始末を監視しているようだった。火事が起きたとき、犯人や原因に関する情報提供をすると国や町から情報の信憑性などに応じて懸賞金がもらえるそうで、この辺で唯一焚火をしていた俺達が火の始末をちゃんとしているか確認していたようだ。グループの視線に気がついてにらみ返していた俺に旦那さんが教えてくれた。俺達が出発した後のグループで、何人かが焚火のあったあたりを見に行っていたのには正直引いたが、今俺の視界に映っている人のほとんどは貧困層が多い難民ばかりのグループなので、わずかな懸賞金でももらえる可能性があるならすがりたいのだろう。ちなみに、俺達のせいにして放火し、それがバレるとその日のうちに処刑されるらしい。なのでバカなことをする奴はいないと信じたい・・・。

「なんか、急に温度が下がってきたな」

「そうだね。もうすぐ山が白くなるんじゃないかな」

「山が?」

「ああ。詳しくは知らないけど、昔ここを通ったことがある人が近所に住んでいてね。途中から地面が白いふわふわしたもので覆われて進みにくくなるらしいんだ。すごく冷たくて、足が動きにくくなるから注意するようにって言われたよ」

「それって雪じゃねえのか?」

「雪? 雪って何だい?」

「いや、白くて冷たくてふわふわなんだろ? 俺が知る中でそういう物っていえば雪だと思うが?」

「へえ、物知りなのね。見てみたいわ」

「僕も見たい!」

「君はいろんなことを知っているんだね」

旦那さんと世間話をしていると、どうやらこの先が雪に覆われているらしいことが分かった。旦那さん達は雪を知らなかったようだが、特徴から察するに雪だろう。山の上は寒いから降っていてもおかしくはない。ただ、雪が降るほど高いところまで登る必要があるということなら、それは厄介な気がする。アリシアが大丈夫か心配だし、男の子や赤ちゃんの体調も気がかりだ。山に登るのは初めてなので俺にもわからないが、高山病とかなったりしないのだろうか? 他にも不安材料はある。街で聞いた「麻痺毒を使い刺し突き攻撃をする魔物」にまだ出会っていない。遭遇しないならそれに越した事は無いが、山登りで体力が消耗したところに魔物が現れたりしたらきっと大変だろう。雪山で麻痺して動けなくなったら凍死するのではないだろうか。

「なあ爺さん。この辺によく出るっていう刺し突き攻撃の魔物って知っているか?」

「見た事は無いのう。ふもとの町で薬が売られておったが、高すぎてわしらは買えなかった。出てこられると厄介じゃ」

「誰か見たことあるか?」

「たぶん虫系の魔物なんじゃないかな。虫系にはそういう攻撃をしてくる魔物が多いからね」

「できれば出会いたくないわね。虫は嫌いだわ」

「魔物が好きな奴ってのもおかしいと思うけどな」

「確かにそうね。うふふ」

「さっきの近所の人の話に戻るけど、彼の話だと森の中に出てくるらしいよ。さっき言った白いふわふわのあるあたりにはあんまりいないとも言っていた。参考になるかい?」

「まあ、そりゃそうだよな。虫は寒すぎると生きられないし、雪がある場所は植物があんまり育たないから、虫には住みにくいだろ。そいつの言っていることはあっているかもな。じゃあ、もう少ししたらそいつらの縄張りを抜けられるわけか」

「虫は寒いのはダメなのかい?」

「温度が下がる時期は虫が餌にする植物や花があんまりないからな、あったかい時期に活動できるように、寒い時期は寝ていることが多いんだよ。ずっと寒い場所は植物が育たないから虫が少ない。たまに寒い地域に住んでいて暑いのが苦手な奴もいたりするけど、そういうやつでも雪が降るほど寒い地域じゃ生きられねえよ」

「魔物は人を襲うから肉食だと思うけど?」

「肉食の虫だって本来は草食の虫とかを食べるもんだ。草食の虫が植物不足で居ない寒い地域には肉食の虫もあんまりいねえよ。魔物の餌が人間ならあんまり寒さは関係ねえかもしれねえがな」

「そんな理由があったのか・・・。やっぱり君は物知りだね」

小学校の理科で習うレベルの話だと思うのだが、教育水準とかの問題なのか、あるいは文明レベル的にそこまで知られていないのか、話し相手の旦那さんはもちろん、男の子やミル、アリシア、奥さん達まで興味津々といった感じで聞いていた。爺さんがしきりにうなずいているのは、知っていたからなのか、納得したからなのか、それは謎のままだ。

「しゅ、しゅごいでしゅね。うぅ・・・」

「あははは、間違えた~!」

「こら、茶化しちゃだめよ。謝りなさい」

「いた。ご、ごめんなさい」

ミルが俺を褒めようとしたらしいが、「す」がうまく発音できないミルが言うと何を言いたいのか一瞬わからなくなる。男の子が茶化し、奥さんに叱られて謝っていた。ミルは真っ赤になってうつむき、俺の服の袖をちょこんとつかんできたので、軽く頭を撫でておく。爺さん達がニヤニヤしているし、奥さんはニコニコ顔に戻っているし、アリシアはあきれた目を向けているが、どうしようもない。

「おお! もしかしてあれかな?」

「ん?」

「きれいでしゅ。うぅ・・・」

「うわ~、真っ白だね」

そんなバカ騒ぎをしているうちに、進行方向に白いものがたくさん見え始めた。俺達が進んでいる道は蛇行しながらその白い所へ続いている。先行する他のグループもいくつか見え、白いもののあたりを歩いているグループも見えた。まだまだ遠いが、雪とみて間違いないだろう。ある位置を境に、そこから先の山の斜面が一面の銀世界になっていた。まだ木も生えているし、ところどころ岩や砂利っぽい地面が露出してはいるが、木もある位置を境に葉っぱに雪が付いており、さらに進むと葉の落ちた裸の木になった。駈け出そうとする男の子を旦那さんが抑え込んでペースを崩さずに進む。急激に上るのはたぶん体力的に持たないと思うので、この中だと体が弱そうなアリシアと男の子に注意を払いつつ、ゆっくりと登って行く。近くまで来た頃に手で触ってみたが、まんま雪だった。俺が知る雪より少し固く、砂も混じっているので汚い。男の子には触らないように注意しておき、旦那さん達にはこれが雪だと教えてやる。爺さん達も初めて見る雪に感動していたが、俺が触らないように言っておいたので手に取ったりはしないようだ。なぜ触ってはいけないのか聞かれたので、体温が下がる事と汚いという理由を説明したら納得してもらえた。少し登ると山の傾斜がきつくなったのでまっすぐ登れなくなってくる。前のグループに従って斜面をゆっくり登って行くほうが安全なようだ。人がたくさん通る道だけあって踏み固められた部分があるのでそこを通る。ジグザグに上るこの道はまさに山道だったが、足元が雪で覆われだしたので周囲の気温がぐっと下がった。カバンから予備の上着や防寒用のローブっぽいものを出してアリシアとミルに渡し、俺の分は迷った挙句奥さんに貸した。サイズ的に男の子には大きすぎるし、爺さん達が入るには小さすぎるからだ。男の子には予備の毛布を渡してマントのように羽織らせてやったから、何もないよりはマシだろう。

「あなたはいいの?」

「俺は別に平気さ。赤ちゃんは自分で体温調節できねえし、寒いって言う事も出来ねえからな。できるだけ温かくしとけよ」

「ありがとう。あなたはやっぱり優しい人ね」

「すまない。娘や息子の事を気遣ってくれること、感謝しているよ」

「お兄ちゃんありがとう」

「孫の心配をしてくれるとは、感謝するぞ」

「フォッフォッフォッ」

「本当に大丈夫なのかしら?」

「心配するなって。いざとなったら毛布を羽織ればいいしな」

「あの、その・・・」

「ミルも着とけ。俺は大丈夫だから」

「は、はい・・・」

そんな会話をしながら山道を登り続ける。3時間も歩くと男の子が疲れたので旦那さんがおんぶし、アリシアがまだ寒そうだったのでみんなの視線が外れている時にこっそり毛布を渡してやった。アリシアの性格を考えるに自分が一番厚着をしているのを嫌がるかもしれないと思ったからだが、特に何も言わずに受け取ったので考えすぎだったのかもしれない。昼を過ぎたが、斜面の途中で止まる場所がなく、同じ道を後から来ているグループもいるので昼飯は抜きにしてそのまま上り続けた。もうすぐ日が落ちるころになってかなり前を歩くグループが足取りを速めたようだ。何事かと思って周囲を警戒すると、道が続いている先に建物らしき影が見えた。前のグループはそれを見て足取りを速めたらしく、同じことに気がついた他のグループも一斉に早く進みだした。俺達より後ろのグループは300mくらい下の道を進んでいるのでまだ気がついていないようだ。


第35話です。短めで内容の薄い部分だけ切り抜かれちゃったんじゃないかと個人的に心配してます。これでストックの3分の1から半分くらいまで投稿したので、続きを書くペース上げが必要なのではないかと思っています。富士山を時々遠景として見る事があるのですが、今年は風の影響で山頂付近の雪化粧が無くなっていました。低めの山でも季節によっては雪が降りますけど、山の雪はきれいですよね。次回もお楽しみに

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