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異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
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第三十二話 旅の仲間

子供は素直だ。欲望にも、考えにも

「ねえ。後ろの人達、さっきからジロジロと見てきて不快だわ。何か用事があるのかしら?」

「いや、あれは勘違いだ。向こうも、アリシアも、両方共だがな」

「どういう事かしら?」

「たぶん説明したらアリシアは怒るから、詳しくは話してやらねえよ」

「主に言えない事って何なのかしら? まさかハレンチな事を考えているんじゃないでしょうね?」

「人を勝手に変態にするな。あと、主ってのもやめろ。バレたらどうすんだよ」

「くっ、またしてもこんな屈辱を・・・」

アリシアが屈辱に震えていると、ミルが袖を引っ張ってきた。不安そうな目でチラチラと後ろを見ている。

「だ、大丈夫でしょうか・・・」

「別に襲って来る事はねえよ。そうなったら俺が対処するし、ああいう連中は実力行使には出ねえと思う」

「そ、そうでしゅか・・・。うぅ・・・」

「心配するなって。いざとなれば逃げればいいだろ」

なおも不安そうなミルの頭をつないでいる手とは反対の手で撫でる。少しは落ち着いただろうか?

「戦って倒してくれたりはしないのね」

「そんなもん、盗賊でもねえ普通の人間をいきなり殺しちまったらただの殺人じゃねえか」

「襲って来るという事は、相手にも相応の覚悟があると思うわ。逃げてどうにかなるのかしら。相手は男4人よ。こちらの男は1人なのに。ミルが戦うとしても、私じゃどうにもならないわ」

「逃げるってのはただ逃げるわけじゃねえよ。あいつらに俺が対処している間、ミルとアリシアが安全な場所に移動すればいいだけだ。相手が俺達を殺しにかかってくれば、俺もそのつもりで対処する。心配はいらねえよ」

「でも、人を殺すとあなたはうなされるのでしょう? いいのかしら?」

アリシアはそんなことを心配しているのか。確かにうなされるのは厄介だし、安眠できないのは問題だが、じゃあ黙って殺されるのかというとそんなわけはない。むしろ死んでしまっては何の意味もないし、アリシアを守れないのは困る。

「その時は仕方ねえだろ。やらなきゃ俺が死ぬし、ミルやアリシアを守れなかったら意味ねえからな」

「そう、なら安心ね。ミル、ユウスケが何とかしてくれるらしいわ。私達は気にする必要はないそうよ」

「は、はい! そ、その、あの、ケガは、その・・・」

「ケガもしねえように気をつけるから、心配すんな」

「はい・・・」

ケガを心配しているらしいミルの頭をもう一度撫でてから、前に視線を向ける。さっきの老夫婦が居たグループのさらに前を行くグループが視界ぎりぎりの場所に見える。山を登り始めたと言ってもまだまだ森の中なので、見える距離は限られているからだ。案の定、後ろの男達は時々レーダーに引っかかるものの距離を詰めてくることはせず。夕方暗くなってきたので俺達が止まると、やはり一定の距離を置いて止まり、グループで固まって休憩し始めた。前を歩いているグループも少し距離を開けた先にある空き地で休憩しているらしい。荷物を下ろし、ミルにさんざん大丈夫だと言い聞かせて離れてもらった後、アリシアとミルに荷物を見てもらって、ミルの視界から消えないように注意しながら薪を拾った。火が点きやすいように細かくてふわふわの植物を混ぜて火をつけ、干し肉を焚火のそばで温めていく。肉の匂いと焚火の明かりにほかのグループから視線が集まっているが、特に何か言ってきたり、行動を起こしたりしてくる奴はいなかった。夕食をとった後、草むらを一つ確保してトイレを作り、ミルとアリシアをトイレに行かせる。アリシアは今更ながら野外トイレにかなり抵抗したが、漏れるよりマシだという事実を突きつけられてしぶしぶといった感じで向かって行った。周りの目が気になる事は想定内だったので、トイレを作った草むらは周囲を草むらに覆われ、前後左右どこから見ても中が見えない場所にしてある。念の為こっそりレーダーで確認し、覗きが居ない事も監視済みだ。俺が見ているのはレーダーの光点なので、俺は断じて覗きじゃない。2人がトイレを終えたのを確認し、俺もトイレに行った後、薪をもう少し拾って焚火に追加した。今までの旅もそうだったが、水浴び以上にトイレの問題が厄介だった。野宿するならもちろんトイレも野外であり、臭いの問題をはじめとした後始末の問題があるのでどうしても自分で作るしかない。放置すると臭いがすごいし、魔物が寄ってくる原因にもなるのでちゃんと始末しなければならないのだ。奴隷商館での経験が役に立ち、荷物に入っていたスコップっぽいもので穴を掘って野営場所に毎回俺が作っていた。もちろん野営から出発する前にはちゃんと埋めて問題が無いようにしている。アリシアは歩き疲れたらしくすぐ眠りだし、ミルも俺の隣に座ってうとうとしている。膝枕をすると前のように抱き着かれて困るので、近くに場所を開けてミルを寝かせた。どんなにうとうとしていても右手が俺の服から離れない事にはある種の執着心に近いものを感じたが、ちょこんと服の端をつかんでいるだけなので、いざとなったらすぐ離してもらえるだろう。2人とも今夜はうなされることなく、すやすやと眠っているのを確認した後、薪をさらに追加してから俺もうとうとし始める。意識が飛ぶだろうかという頃、何の前触れもなく突然意識が覚醒した。何事かと思って顔を上げると、俺達に近寄ってきていた奴がビクッと体を震わせて固まる。あたりはすっかり真っ暗だが、焚火の火で相手の顔は見える。年齢は分からないが、爺さんが一人、焚火に手を伸ばした状態で固まっていた。思わず腰の剣に手を伸ばすと、爺さんが慌てて手を上げる。しきりに手を振って敵意はないと訴えているらしい。顔が必死なので嘘ではなさそうだが、なぜ声を出さないのだろう?

「何か俺達に用なのか?」

できるだけ冷静を装いつつ、剣からは手を離さず、脅しにならないように気をつけながら声をかける。

「す、すまん。起こしてしまったか。害意は無い、頼む、殺さないでくれ」

必死に命乞いをする爺さんにどこか安堵を覚え、剣から手を放す。それを見た爺さんは明らかにほっとした表情を浮かべ、腰に手をまわしてさすり始めた。腰が痛いのだろうか? 手を出して、アリシア達とは焚火を挟んで反対側の位置を指し示す。

「怖がらせて悪かったな。腰が痛いんだろ? 用事は別に座って話せばいいじゃねえか」

「すまぬ。では失礼して」

どっこらしょとは言わなかったが、それとほぼ同じ意味であろう何かをつぶやいて爺さんが座る。

「それで、何の用なんだ? それもこんな夜遅くに」

「面目ない。寝ているところを起こしてしまったのもすまなかった。実は小さい子供がおるんじゃが、夜は寒いからの。子供だけでもいいから、火のそばで寝かせてやってはくれぬか? 暖かい方が眠りやすいじゃろうから、お願いだ」

金を奪おうとかそういう物騒な話じゃない事に少しほっとしたが、いくつか突っ込みどころがあるのでいろいろ聞いて行こう。

「小さい子って、老人と子供の2人旅なのかよ。危なくねえか?」

「いや。息子夫婦とわしの夫婦の親子で旅をしておる。家族が居れば旅もそこまで苦しくはない。ただ、幼い孫につらい思いをさせるのは忍びないからの。どうか、聞き入れてはもらえないだろうか?」

「子供をここで寝かせるとして、あんたらはどうするんだ?」

「わしらはその辺で寝よう。寒いのは承知じゃが、そこまで迷惑はかけられないからの」

子供だけ火のそばで寝かせても大丈夫なんだろうか? 俺だったら絶対に嫌だ。小さい頃、夜のトイレが怖くて母に泣きついた記憶がある。後で親父にバレて情けないと殴られた記憶まで思い出して顔をしかめたが、引き離さない方が子供の為だろう。

「いや。子供が親と離れて夜に一人とか、そっちの方がつらいんじゃねえか? 別に俺達の寝る邪魔にならねえならあんたらが居たって別に俺は構わねえぞ? むしろ子供だけ預けられても困る」

「おお! 優しき人じゃ。ありがとう。ありがとう」

満面の笑顔で俺に握手を求めてくる爺さんを適当にあしらう。大げさなくらい何度も頭を下げてくるが、腰は大丈夫なのか?

「あんまり大きな声を出すなよ。起きちまうじゃねえか」

「ああ、すまぬ」

ミルの耳がピコピコと動いている事に気がついて、慌てて爺さんと一緒に声のトーンを落とす。爺さんが背後の暗闇に向かって振り向くと手を振った。しばらくすると影が近づいてきて4人の人になる。一人は確かに小さな男の子だ。幼稚園児くらいの年齢だろうか? 20代っぽい若い夫婦と、老婆が後ろに控えている。4人だと思ったが、奥さんであろう若い女性が赤ちゃんを抱いているので、実際には5人だった。全員そろったところで頭を下げられたので、こちらも慌てて立って礼を返す。立った衝撃でミルが起きてしまい、見慣れない集団がこんなにも近くにいる事に驚き、ガバッと起き上がって俺の後ろに隠れた。男の子がミルの高速移動を怖がって母親の後ろに隠れる。ほかの家族もミルの行動に一瞬唖然となったが、俺が促して全員火の近くに座らせた。

「ありがとう。君のおかげで今晩は暖かい夜を過ごせそうだよ」

男性が俺に礼を述べてくる。見た感じ俺とそんなに年が変わらないんじゃないかと思うくらい、若い旦那さんだ。

「いや、別に気にしなくていいさ。彼女は臆病なんだ。怖がっているだけだから、許してくれ」

「あら、こちらこそ怖がらせてごめんなさい。ほら、あなたも隠れてないで挨拶なさい」

「こ、こんばんわ・・・」

「い、いえ、その、あの・・・」

奥さんがミルの行動に対して謝罪し、男の子を前に押し出す。男の子がボソボソと挨拶したのを聞いて、ミルもボソボソと返答していた。全員が入るには狭いので、ミルを促してアリシアの方へつめる。横になると全員が火のそばでは寝られないかな?

「フォッフォッフォッ。仲のいいことじゃな」

俺にピッタリくっついているミルを見て老婆が笑った。笑い方が魔女そのものだが、別に魔女ではないと思う。適当に愛想笑いを浮かべていると、男の子が母親の服を引っ張った。

「お母さん。おなかすいた」

「ごめんね。あんまり食べ物がないのよ。我慢しなさい」

「いやだ! おなかすいた!」

「こら、静かにしなさい」

「うわ~~~ん!!」

「おやおや」

腹が減ったのか。小さい子に我慢しろというのも結構無理がある気がするが、食料がないのは本当なのか、家族全員で男の子をあやしにかかっている。ほかのグループは見えないが、夜に鳴き声なんか聞いていい気はしないだろう。アリシアも目が覚めてしまったらしい。ミルほどではなかったが、目がさえて周りに人がたくさんいる事がわかると、ガバッと起きて周囲を見回し、俺を見つけるとさっと寄ってきた。抱き着いてこないだけまだ冷静なようだが、服をつかまれているので怖がっているようだ。

「な、何なの? どうしてこんなに人が居るのよ」

「アリシア、落ち着け。別に敵じゃねえから」

「当り前よ。敵がこんな近くにいたら、あなたが居る意味がないわ」

「何じゃ。そっちのお嬢ちゃんもお前さんにべったりなのかえ。フォッフォッフォッ」

「な、ち、違うわよ。ミルと一緒にしないでちょうだい!」

「うわ~~~ん。おなかすいた~!」

「ああ、もう。わかったから泣きやめよ。ちょっと待ってろ!」

「?」

縋りついてくるアリシアをなだめたら、老婆がまた笑ってきた。アリシアが反論しているが、その声でさらに男の子が泣き出す始末だ。さすがにうるさいのでカバンを開けて干し肉を取り出す。ゴソゴソとカバンをあさる音で男の子は泣き止み、俺が何をしているのか観察し始めた。爺さん達もこちらを見ている。目が干し肉にくぎ付けなのは仕方ない事なのだろう。鍋を取り出し、干し肉と水を入れ、乾燥野菜を少し入れて火の中に置く。鍋と言っても普通のものではなく、火の中に入れるので持ち手はない。金属のハサミでつかんで出し入れする奴だ。最初は使い方がわからず苦労したが、使用方法が書かれたメルさんのメモが見つかってからは完全にマスターしたと自負している。どのタイミングで火から出せばいいかなど、もう感覚的にわかるようになった。アイのアシストも使用してタイミングを計る。まだ水は温まっていないので、その隙に爺さん達に話しかけた。

「何か器になるもの持っているか?」

「器? こういう物でいいのかな?」

旦那さんが荷物から木のお椀っぽい物を取り出した。形的に日本の味噌汁を入れるお椀に似ている。これでいいか。

「人数分あるか?」

「あるが、何に使うんだ?」

「もう少し待っていろよ、その間に器を出しといてくれ。水に余裕があるなら洗っとけよ」

「ああ」

不思議そうな顔をする旦那さんとは裏腹に、奥さんは期待のこもった眼差しで鍋を見つめている。男の子も鍋から漂う肉の匂いによだれが出ている。爺さんと老婆は俺を崇め始めてしまったが、今はちょうどタイミングがいいのでスルーした。ベストタイミングで鍋を火から取り出し、旦那さんが出した器に少しずつ入れていく。ようやく旦那さんも意味が分かったらしい。

「私達は貧民街の出身だから、何も差し出せるものが無いが、いいのかい?」

「夜中に泣き叫ぶ子供が近くに居るよりはマシだろう。食わないとその子は泣き止まないだろうしな」

「ありがとうございます」

「わしらにまでくれるのかえ」

「子供だけ食べさせてもあんまり意味ねえだろ。変に遠慮して子供が食べなくても困るし、もう作っちまった物は消費しないとな」

「ありがとう」

家族そろってまた頭を下げられる。アリシアは何か言いたそうな目をしているが、男の子が泣き止んでいるので何も言ってこない。

第32話です。謎の家族登場(?)

3人旅だと会話にバリエーションがないので、旅の道連れかそれに近い誰かは登場させるつもりで書いていたのですが、当初の考えではこんな親子三世代の家族にする予定はありませんでした。これが俗にいうキャラの一人歩きかな?(違う) 次回もお楽しみに

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