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異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
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第三十話 ミルはやっぱり心配性。お嬢様は少しうっかり?

人を判断する時、その人の口調は判断材料になる。常に敬語、常にギャル語、人によって使い分け、間延びしてたり、語尾が妙なトーンだったり、話し方は様々。

「あ、あの、その、こ、これ・・・」

店を去ろうとすると、ミルがベストっぽい物を持って遠慮がちに差し出してきた。

「これは?」

「それは革鎧だよ。兄ちゃん」

その光景を見た店員が教えてくれる。

「革鎧・・・。ミル、これがどうしたんだ?」

「こ、これがあれば、ケガをしなくて・・・その・・・」

「確かに兄ちゃん。革鎧があれば魔物の攻撃から多少は身を守れるぜ? 軽いから動きやすいのも革鎧の良い所だ」

「魔物なんてこいつでアウトレンジすれば大丈夫だろ。別に要らねえんじゃねえか?」

そう言って背中にある銃をチラッと見る。ミルは不安そうな顔になり、しどろもどろになって必死に俺に何か訴えようとしている。

「い、いえ、えと、あの、その・・・」

「ミルはあなたがこの前ケガを負った事を気にしているのよ。鎧があれば、剣の攻撃を防いでくれると思っているんじゃないかしら? 私達は戦えないもの。あなたが死なないようになるのは十分必要な事だと思うわよ?」

「なるほど。そういう事でございますか。なあ、革鎧って斬撃にも耐性あるのか?」

お嬢様の説明でミルが言いたかっただろうことが分かったので、店員に聞いてみる。

「銅の鎧や鉄の鎧に比べたら無いに等しいな。兄ちゃんは剣で打ちあう戦いをする必要があるのか? だったら鉄の鎧がお薦めだぜ。ちょっと重いが、斬撃はもちろん、ちょっとした打撃攻撃にもびくともしねえからよ」

「動きにくくなるのは嫌なんだよ。軽くて斬撃に強いやつはねえのか?」

「その2つは基本的に両立できねえな。オリハルコンとかならできるのかもしれねえが、貴重過ぎて兄ちゃんじゃ手が出ねえよ」

「そうか。じゃあ鎧はいらねえわ。ミル、心配してくれてありがとな。でも俺の戦い方だと動きが制限される鎧はかえって良くないと思う。次はケガしないようにするから、安心しろって。大丈夫だ」

そう言ってミルの頭を撫でる。ミルは悲しそうな表情を浮かべていたが、頭を撫でると笑顔になって来た。

「ケッ。人の店の前でいちゃつくなよ。革鎧は斬撃にはあんまり意味が無いけどよ。安くて動きやすいのが良い所なんだぜ」

「わりいな。でも斬撃に弱いんじゃ鎧の意味がねえんじゃねえのか?」

「兄ちゃん知らねえな? 鎧ってのは剣から身を守るだけが能じゃねえんだ。魔物の攻撃は体当たりみたいな打撃が中心だし、体を溶かす水を吐く奴とかも居る。そういう奴らに服はあんまり意味ねえからな。そういう奴らから体を守るのも鎧の仕事なんだぜ? 革鎧は軽いから動きやすいし、他の鎧と違って重ね着してもそんなにかさばらねえ。2枚重ねれば刺し突き攻撃にも結構耐えられる。この町で登山靴買いに来るって事は帝国へ行くんだろ? 谷は刺し突き攻撃する魔物が居るから、結構有用だぜ? さすがに3人に2枚ずつ買っていくと結構値が張るけどよ。安全が金で買えるなら安いもんだと思うがな」

「うーん。お嬢様、どう思われますか?」

「あなたが守ってくれるのだから、私達に鎧はいらないわ。買うとしたらあなただけで十分だと思うわ」

そう言ってお嬢様は自分用の鎧購入は不要だと言って来た。信頼の証なのか、あるいは鎧が嫌なのか、判断が付かない。

「へえ。兄ちゃん信頼されてんな。こんなかわいこちゃんに囲まれて、しかも信頼されているなんて羨ましいぜ」

「いろいろ事情があってな。しかし、鎧かあ・・・」

そう言って俺が革鎧とにらめっこしていると、ミルが服の袖を掴んできた。ミルの顔を見ると、心配そうな目で上目遣いに見てきている。破壊力がすごいのですぐに視線をそらしたが、あって損は無いかなと思い始めている自分が居る事に気が付いた。

「分かった。じゃあこれをくれ」

「まいど! やっぱりかわいこちゃんの言う事は聞くもんだよな! ハハハハハハハハハハ」

「ほっとけよ・・・」

豪快に笑う店員にイラついてにらみ返しつつ、代金を払って鎧を身につける。革のジャケットが丈夫になった物のような感じだ。確かに鎧と言われると軽いと思うが、服として考えると重いと思う。革と聞いて薄いイメージがあったが、身に着けてみると結構分厚かった。薄い木の板よりは厚みがあるだろう。上半身だけを守るもので腕も足もむき出しだが、確かに心臓や肺は守られるので気休めにはいいかもしれない。ミルがほっとした表情を浮かべたので、頭を少し撫でて防具屋を後にした。防具や靴で100フルほど買い物に使ったので一旦買い込んだ物を宿屋に置きに戻り、再び屋台の並ぶ通りを歩く。昨夜ほど人はいないが、朝食を食べた時よりはにぎわっていた。屋台を見ながら歩いていると、ある屋台の前でお嬢様が立ち止まり、俺の服を掴んできた。

「あれは何かしら?」

「さあ・・・。これは?」

「いらっしゃい。この辺の名物で、花の蜜を使ったお菓子さ。甘くておいしいよ」

「いいわね。ユウスケ、これを買いなさい」

「お嬢様。あまり無駄に物を買う訳には・・・」

「お客さん。辛い山越えに甘いものは必要だよ? 疲れた時に食べるともう最高! 特にレディのお連れさんにはね」

そう言ってミルやお嬢様に視線を向ける屋台のおっさん。ミルは怖がって俺の後ろに隠れてしまったが、お嬢様はレディと言う言葉に明らかに目の色を変え、俺の方を鋭い目でにらんでくる。レディが台無しだと今すぐ突っ込みたい。

「ユウスケ、命令よ。このお菓子を買いなさい」

「・・・かしこまりました」

「ありゃ、お客さん奴隷だったの? 奴隷にしては良い格好しているね。良い所のお嬢様でございますか?」

屋台のおっさんが若干態度を変え、お嬢様にいきなり敬語を使いだした。お嬢様が大威張りで胸を張って名乗ろうとしたので口を塞いで止める。王都から逃げている最中なのだから、今名乗られて痕跡が残っては困る。気をつけなくちゃいけない。

「むぐっ、んぐ~~!」

「いいから、買う気がある内に早くくれよ。もたもたしていると買う気が失せるぞ?」

「ああ、ごめんなさい。詮索するのはお客さんに失礼だよね。お詫びに1個サービスするから許して」

「チッ、調子いいこと言いやがって」

「あ、あの、その、えっと・・・」

「ミル、わりいけどカバンから金出してやってくれよ。俺は今手がふさがっているから」

「は、はい・・・」

「お菓子の味は自信があるから、気に入ったらまた買ってね」

お嬢様の口を片手でふさぎ、暴れる体をもう片方の手で押さえつけているのでミルに言って屋台のおっさんに金を払ってもらう。お菓子はお嬢様とミルの分、おまけでもらって全部で3袋だ。2フルなのでお菓子としては高いのかもしれないが、まあいいだろう。この状態を維持するのはつらいので、もう一度宿屋に戻る。純粋に泊まる事専門の宿なので、宿泊用の部屋とカウンター以外何も無いが、安い割に部屋がきれいだったので選んだところだ。部屋に入り、ミルがドアを閉めたのを確認してからお嬢様を開放する。もうすでにかなりおとなしくなっており、解放した途端叫んだり暴れたりしなかったのは偉いと思う。さすがは貴族令嬢だ。

「ユウスケ。なぜ名乗るのを邪魔したのか理由を聞かせてもらえるかしら?」

おとなしくなったと思っていたが怒っていたのが原因らしい。状況が分かっていないようなので1から説明する。

「お忘れでしょうか? 我々は王都から帝国へ亡命しようとしております。それも騎士団に追われながら、身を隠し、速やかに王国を出る必要がございます。まだここは王国領。ここで名乗るのは、追手に自らの位置を教えているようなものでございます」

「・・・確かにそうね。迂闊だったわ」

お嬢様がベッドに座り込んだ。落ち込んでいる感じだ。フォローするべきなのかもしれないが、良い手は思いつかない。

「お嬢様。これから先も、しばらくは身分を偽ったり隠したりして生活せねばなりません。お嬢様が貴族である事は、人前では悟られぬようにしましょう。私やミルがお嬢様と呼ぶのも悟られる原因になる為、敬語の使用や敬称呼びも控えさせていただきます」

「偽る必要がある理由は分かるわ。でもあなた達が言葉遣いを変える必要はあるのかしら?」

「普通の平民はお嬢様と他人を呼ぶことはございません。珍しい呼び方は人の記憶に残りやすく、危険でございます」

少し考えるそぶりを見せた後、お嬢様はうなずいて俺を見てくる。

「なるほど。あなた達の言葉遣いで私の身分が高いと思う人が居るのは困る訳ね?」

「はい、その通りでございます。髪の色や人種の関係で兄弟などへの偽装は不可能でございますが、貴族令嬢と奴隷の関係だと分からなければよいので、ひとまずは言葉遣いを変更致します。よろしいでしょうか?」

「ええ。しっかりと目的があるようだし、構わないわ」

少し納得がいかない感じだったお嬢様も納得してくれたようだ。これでさっきみたいな危ないシーンが少なくなるだろうか? ちなみにお嬢様は金髪、俺は黒髪、ミルは少し青っぽい髪色をしている。外国人の顔をしたお嬢様と俺では兄弟には見えない。

「じゃあ普通に話すから、今後はこれで。ミルも気をつけろよ?」

「は、はい!」

「違和感があるわね」

「そのうち慣れるだろ。むしろ俺はこっちが素だから、この方が自然になっていいんだけどな」

「あなたまさか、その為に敬語を辞めようと提案したんじゃないでしょうね?」

「いや。隠密行動が必要だって理由は本当だし、ざっと周りの人間の会話を聞いた感じだと、年下の女をお嬢様って呼んでいる奴なんて居なかったからな。早めになんとかしねえと1発でバレるだろうと思ったんだ。そういや、何て呼べばいい?」

「女って、レディと呼びなさい。主人である私に失礼よ。何て呼べばって、何か案があるのかしら?」

「いや、普通年下にレディはねえだろ。君って呼ぶと何かと不便だし、お嬢様は使えねえぞ?」

「くっ、年下の奴隷を買ってもらうべきだったわ。奴隷に女呼ばわりされるなんて、何たる屈辱・・・」

「この程度で屈辱を感じていたら何かの拍子にすぐバレちまうぜ? 演技が必要だ。そういえば、名前何だっけ?」

「ア、アリシア。アリシア・サラードよ。主人の名前も把握していないなんてなんて奴隷なのかしら」

急に敬語をやめたせいかアリシアは違和感があるようだ。名前を聞くのは初めてな気がするが、それは今どうでもいい。

「単純に聞き忘れただけさ、わりいな。じゃあアリシアって呼ぶぞ? さすがにその年でちゃん付けは嫌だろ?」

「い、いきなり名前で呼ぶなんて馴れ馴れしいんじゃないかしら!?」

「一緒に旅して帝国まで行く仲だぞ? 奴隷と主人なら当たり前でも、普通の男女ならあり得ねえだろ。それこそ結婚でもしているか、よほど仲のいい友人のはずだ。ある程度は馴れ馴れしくないと不自然だろ?」

「け、けけ結婚なんて、奴隷と主人が結婚なんてありえないわ!」

「当たり前だ。その年齢で結婚は速すぎだろ。だから仲の良い友人って事にしとくんじゃねえか」

「早すぎじゃないわ! もう少ししたら社交界にデビューして貴族の殿方とダンスを始める年齢なのよ?」

「もう少ししたらって事はまだなんだろ? それを早過ぎと言わず何と言うんだよ」

「くっ、敬語を辞めた途端生意気な態度を・・・」

「そうそう。奴隷と主人じゃないって事にするんだから、命令や罰とかも控えてくれよ。奴隷以外に命令して年上の俺が聞くとか傍から見たら変態じゃねえか。そうは思われたくねえし、アリシアもそういう女だって周りに見られるから、気を付けろよ?」

「くっ、分かったわよ!」

「あわわわわわわ」

俺とアリシアの攻防の間、ミルはずっとあわわと言いながら右往左往していた。その後も議論を続け、3人は友人であり、帝国に用事があると言うアリシアについて行っていると言う設定にした。最初は俺が帝国に用事があって2人が付いてくると言う設定で話を進めていたが、いくら友人とはいえ男の旅に女が2人もついて行くのはおかしいのではないかと言うアリシアの意見で変更になった。その他の理由としては、アリシアを俺が守る理由を、俺がアリシアに頼まれて護衛しているという事にすれば言い訳として成立させやすい事や、基本的な関係性が変わらないので嘘がつきやすいと言う理由もある。ミルの扱いと立ち位置が一番困ったが、俺から離れない事を利用して俺が頼んでついて来てもらったという設定にした。臆病な事を俺から離れない理由にしたが、ほとんど事実なのでそこはすんなりと決まる。議論や設定構築、それの記憶をしている間に夜が来たのでそのままその日は就寝し、翌日に町を出発した。ザンドの町で出会った老夫婦の話ではもう少し長居して疲れを取るのが良いらしいが、昨日の事があるので少し強行軍になってでも早めに帝国に渡ってしまおうという事になったからだ。外国に逃げればとりあえず安心だろうと言う考えは何か犯罪者みたいで嫌だが、王国内よりは追手の数が減るだろうと言う考えでは一致したので出発を選んだ。宿を引き払って屋台の並ぶ道を通っていると、すれ違う人やその辺で話している人達が、ほとんど同じ話題で盛り上がっている事に気がつく。俺達にも関係のある話題だ。帝国側の門へ向かいながら、少しずつ盗み聞きする。

第30話です。ついに大国最後の街を出発しようとしています。果たしてアリシア達は王国を脱出できるでしょうか。初期の頃に多数考えた案の中では、ユウスケは最初から普通の高校生口調で通す場合、終始えせ執事っぽいなんちゃって敬語やお嬢様扱いを行う場合、アリシアお嬢様と打ち解けてアリシアがOKしてくれる場合など、いろいろ考えてました。ただ、個人的にずっと敬語は執筆時に難しいと感じる部分も多かったので、いつかは切り替える方向で設定を進め、早い段階で切り替えようとさせた結果がこの話になっています。次回もお楽しみに

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