表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
30/74

第二十九話 国境の街

古代、都市は国ではなく、自分達で身を守っていた時期がある。古代は移動に時間がかかり、援軍が来るまで持ちこたえるのが都市の義務だったからだ

翌朝も朝食後に出発し、夕方ごろ川に着いた。交代で水浴びをした後、夕食を取って眠る。追手との戦闘の夢を見なくなったが、代わりに追いかけられる夢に逆戻りし、うなされている俺を心配したミルにいつもよりきつく抱き着かれて痛かった。朝になったので朝食を取り、水を限界まで補給してから川を離れる。その後も3日ほど進んでは野宿を繰り返し、4日目になった頃に食料が少ないなと感じ始めた。乾パンはまだあるが、干し肉はもうない。その他の食材も残りわずかだ。そろそろ狩が必要だと思ってレーダーで探しているが、物欲センサーのジンクスなのか、探し出した途端反応が無くなった。鳥なども引っかからないか探すが全く反応が無い。5日目に乾パン以外の食料が底をついたころ、ようやく鳥をレーダーが捕らえたので銃で撃ち落とした。木にとまった所を狙ったので難なく頭を吹き飛ばし、落ちたところを拾って処理する。鳥の皮を剥ぐなんてやったことはもちろんなかったが、思考強化のアシストのおかげでなんとなくどうすればいいのかが分かり、肉だけを取り分ける事に成功した。鶏サイズの鳥だったが名前は分からない。血抜きでてこずったが、それなりの成果があったのでよしとする。肉以外はその日の晩の焚火で燃料に使った。皮に皮下脂肪でもついていたのか、良く燃えたので火力調整が大変だったが、足1本分の肉を試しに火であぶってみる。焼肉の良い匂いに誘われてレーダーに魔物がちらほらと映っていたが、見える範囲には近寄ってこなかったので、おそらく火を警戒したのだろう。焼けた事を確認し、一部を切り取って毒見をする。調味料をつけていないので味はしないがまずくは無い。普通の鶏肉だ。残り少ない調味料で味付けをしてお嬢様達にも渡した。ミルはおいしそうに食べていたが、お嬢様は口に合わなかったらしく不満顔だ。メルさんが用意してくれたご機嫌回復用のお菓子を少量取り出し、こっそり与えたら途端に機嫌が良くなった。舞い上がって俺に抱き着いて来たのを見た時のミルのリアクションが若干怖かったが、こういうところは年相応な気がしてちょっとほほえましいと思う。6日目の昼頃、ようやく壁が見えて来た。ザンドの町から3番目に近い帝国との国境にある町だ。

「やっと着いたのね。疲れたわ」

「はい、お嬢様」

町へ入る門には多くの人が詰めかけ、列を乱した者が騎士に怒鳴られていた。追手が言っていた規制が厳しいっていうのはこういう事だったのだろうか? 特に門に近い所で何やら騒ぎが起きており、良くも悪くも盛り上がっていた。

「頼む。町に入れてくれ! 町の外で野宿なんかしたら魔物に食われちまうよ!」

「うるさい。素性もろくに語れぬ者は入れられぬと言ったであろうが!」

「俺達は王都の貧民街の者だって言ったじゃないか。貧しいから貴族様と違って身分証みたいなものは無いんだって!」

「今王国は混乱の極みにある。そのような確証の無い情報で怪しい者を町に入れるわけにはいかん」

「そんな。頼む、入れてくれ!」

「黙れ! 抵抗する者はこの剣の錆にしてくれるわ」

「キャー! やめて! お願いします。やめてください!」

物騒というかなんというか、治安が悪いな。

「・・・ねえ、私達は入れるのかしら?」

「メルさんが通行証のような物を荷物に入れたとメモに注意書きがございましたので探してみましたところ、確かに通行証がございました。ただし、お嬢様一人分ですので、私とミルは入れません」

「通行証が無いと入れないのでしょう? どうするのかしら?」

俺は先ほどもめ事が起きていた場所の隣にある列を指さす。

「あそこで身分証の発行ができるようでございます。私とミルの分を作ってしまいましょう」

「発行できるなら、なぜあの人達は発行しないのかしら?」

そう言ってお嬢様は先ほどからもめている人達を見ている。理由は聞かなくてもわかる気がするんだけどな。

「おそらく発行に多額の税金を取られるのでしょう。貧民街の人間には金銭的に難しいものだと思われます」

「そう。平民も大変なのね」

そんな話をしながら身分証を再発行する必要がある人が並ぶ列へ並びなおす。その列の人達は数人のグループごとに分かれて門に併設された建物の中へ入り、出てくると何も咎められずに門を通って行った。それなりに時間がかかっているので、おそらくちょっとした取り調べがあるのだろう。並んでいる人達はみんな金が入っていると思われる重そうな袋を持っている事からも、発行にかなりの金額が必要な事を教えてくれている。所持金は2000フルあるが、この手の物は法外な値段を普通に請求してきそうなので少し心配だ。

「次の者達、入れ」

順番が回って来たので3人で中へ入ると、粗末な机があり、おじいちゃん騎士が椅子に座ってこちらを見ていた。背後には騎士が2人立っている。おそらく護衛だ。後ろでドアが閉まり、怖がったミルが俺の服を掴んできたので、頭を撫でる。

「ふん。何をしておる。座れ」

「はい」

おじいちゃん騎士がミルの頭を撫でる俺を見て鼻を鳴らし、机の前にある椅子に顎をしゃくった。椅子は2つしかないので、ミルとお嬢様を座らせ、俺は横に立つ。ミルが服を掴んだままだが、別に失礼ではないだろうしそのままにしておく。

「貴様らも身分証が欲しいのか?」

「はい。私と、彼女の分が発行できればと思っております」

「私と話すのに立ったままとは失礼な奴だな。貴様が話すなら貴様が座るべきではないのか?」

「この2人は長旅で疲れております。ご無礼をお許しください」

「ふん。女を気遣うとは見上げた紳士精神だが、平民の分際でそんな綺麗事を抜かすな。まあ、気遣いたくなる気持ちも分からなくもないので、今回は不問としよう。ふっふっふっふっ」

おじいちゃん騎士はそう言ってミルとお嬢様をジロジロ見ながら笑う。目線が頭から足先まで舐めまわすように動いているのがちょっと腹立たしいが、くだらない事でもめても意味が無いのでスルーする。ミルが服を掴む力が強くなり、下を向いてしまったので頭を少し撫でてから、本題に入る事にする。いつまでも2人を眺めさせる事に何かメリットがあるとも思えない。

「身分証ですが、発行には何か必要な事があるのでしょうか?」

「書類作成の為にいくつか質問に答えてもらおう。この石が嘘を見抜く、つまらぬ小細工はやめておくのだな。後は金だけだ」

騎士が目線だけ動かして机の上に置かれた石を見た。透明な四角い石で、ガラスみたいだ。ビー玉くらいのサイズだろうか?

「いくらぐらいでしょうか?」

「100フル必要だな。払えるか? 無理なら出て行け、貧民を街にあふれさせるわけにはいかぬ」

そう言っておじいちゃん騎士はニヤニヤとミルを見つめる。お嬢様を見るのをやめてミルだけに的を絞った事に少し嫌悪感がわくが、ミルは下を向いているので視線に気が付いていない。お嬢様は露骨に嫌な顔はしていないが、顔が引きつっている。

「金額は問題ございません。質問をお願い致します」

「よかろう」

俺が払えると言った途端におじいちゃん騎士の態度が変わり、仕事モードの顔になった。結構貫禄がある。ミルには目もくれず、まっすぐ俺だけを見て来たので、負けないように見返す。一度うなずいた後、おじいちゃん騎士が手元に紙束を広げた。

「貴様らはどこから来た?」

「王都から参りました」

「貴様らの関係は?」

「私と彼女が奴隷で、こちらの方がご主人様でございます」

「ふむ。貴様は奴隷か、珍しい事もあるものだな。この町へ来た目的は何だ?」

何が珍しいのかはよくわからないが、すぐに次の質問が来たので答える。

「帝国へ渡る為、国境越えにこの町を通過しようと思っております。食料や水もこの町で補給する予定でございます」

「帝国へ渡るのは、移住目的か?」

「いいえ」

「ならば、また王国へ戻ってくるのだな?」

「はい」

「この町、あるいは王国に反意はあるか?」

「ございません」

「貴様らはどうか?」

「ございません。騎士様」

「ご、ごじゃいません・・・」

「よろしい。最後の質問だ。貴様らは此度の反乱に関係がある者か?」

「・・・いいえ」

反乱の情報はこの街まで届いているのか。ちょっと動揺して不自然な間ができてしまったが、関係ないのは事実なので問題ない。

「ふむ。最後の質問だけ少し間があったな。石に反応は無い故嘘ではないようだが、何を隠しておる」

「王都の騒ぎから逃げて来ただけでございます。反乱に関わってはおりません」

おじいちゃん騎士が俺を睨む。あまり怖くはないが、何か心の奥底を見透かされているような気がした。

「・・・真実のようだな。よかろう。仮身分証を発行する。町を通り抜けるだけならこれで良い。商売をしたり永住したりするつもりなら騎士の詰め所で専用の身分証を再発行するのだ。良いな? 分かったら発行料を出せ」

「はい。ありがとうございます」

試練はクリアのようだ。カバンから200フルを取り出して渡すと、和紙っぽい紙に羽ペンでスラスラと何かを書いたおじいちゃん騎士が、印鑑っぽい物を押して俺に差し出す。受け取ってみると仮身分証と書いてあり、今日の日付であろう数字の羅列と、おじいちゃん騎士の名前であろうサインっぽい物が書いてあった。その横に国旗っぽいマークの印鑑が押されている。ミルにも同じ物を渡した後、おじいちゃん騎士がお嬢様に話しかけてきた。

「お前は身分証がいらぬようだが、すでに持っておるのか?」

「はい、こちらでございます」

おじいちゃん騎士の問いに、俺がお嬢様の身分証を見せる。しばらくにらみつけた後、おじいちゃん騎士が身分証を返してきた。

「・・・ふむ。良かろう。行ってよいぞ。くれぐれもトラブルを起こすなよ」

「はい。ありがとうございました」

おじいちゃん騎士に頭を下げ、ミル達を連れて部屋を出る。門の外に居た騎士達も止める事は無く、俺達は無事に町へ入る事が出来た。宿を3件ほど回って手ごろな値段の物を見つけた後、貴重品以外の荷物を置いて部屋に鍵をかけ、町に繰り出す。宿に食事処が無く、本当に寝泊り専用の宿だったので、夕食を外で食べる必要があったからだ。屋台が立ち並ぶ道は人が多かったのでミルとお嬢様が俺にピッタリくっ付いて来る事になったが、なんとなくもう慣れたのでその辺は気にしなかった。両側に女の子と言う状態はなかなかに人目を集めたが、お嬢様もミルも屋台に興味津々で、おいしいものの匂いにつられてあちこち見ていた為気がついていないだろう。野菜の炒め物っぽい物が売られている屋台の前でお嬢様が動かなくなったので、それを人数分買って夕食とした。野菜炒めなのだが、キノコっぽい食感の何かが入っていて不思議な味だった。お嬢様はそれが食べたかったわけではなく、単純に長旅の後で疲れたから止まっただけだったらしく、宿に戻ってから散々不満を言われてしまった。メルさんが用意してくれたご機嫌回復用のお菓子をまた少し渡すとすぐに機嫌が良くなったが、後後考えてみるとこれをもらう為に不満を言ったのではないかと言う可能性を思いついたので、明日様子を見る事にする。少なくとも俺が起きている間はミルがうなされなくなってきた気がするが、抱き着き癖は治らず、その夜も途中でがっちりと抱き着かれた。3人用の部屋が開いておらず、1人部屋の1人用ベッドに3人で川の字になって寝たが、なぜかお嬢様も反対側から俺の服を掴んだ状態で寝てしまい、狭い事も相まって身動きが取りにくい。当初俺が端っこ、ミルを真ん中、お嬢様を俺の反対側にして寝る予定だったのだが、お嬢様がミルのしっぽがくすぐったくていやだと言ったので途中から俺が真ん中になったのだ。ミルの尻尾から離れる為に俺達に背を向けて寝ていたお嬢様が、寝返りを打った時に何かつぶやいて俺の服を掴んできた。ミルを真似たのかちょこんと掴むだけだったが、位置的に変に動くとお嬢様が痛い思いをする場所だった為、俺は朝までほとんど体勢を変えられない状態になってしまった。ミルが抱き着いて来るのは想定していたが、お嬢様に服を掴まれたのは意外だったので若干居心地が悪い。しばらく我慢していたら、疲労が俺を眠らせてくれたようだ。体勢が変えられなくて体のあちこちが痛かった。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


翌朝、宿の裏にある井戸で水浴びを済ませた後、昨日夕食を食べた屋台がある通りに行って朝食を取った。今度はちゃんとお嬢様に確認し、焼き鳥っぽい物を人数分買って食べる。俺が捕って作った物と違ってしっかりと焼かれ、下味も付いている物だったのでお嬢様も満足していた。ミルもおいしそうに食べていたので大丈夫だろう。旅人用の雑貨屋らしきお店で干し肉などの食料を買い込み、水入れを一つ買い足した。スープを作ろうとすると水が大量に必要な為、水の消費が思ったよりも多かったからだ。他にも捕った鳥を解体する為のナイフが切れにくかったので新しい物を買ったりした。消耗品の補充代、宿代や食事代全部まとめて30フルほどだったから、やはり通行証の発行料は法外な値段だったらしい。武器屋があったので騎士の剣を売れないか聞いてみたが、剣を見せると商人の顔が曇ったので適当に理由をつけて逃げるように店を後にした。薬屋だと言う店にはRPGでおなじみのポーションが売っていたが、効果があるかよくわからなかったので、国境沿いに出る魔物の対策としてよく売れているらしい毒の中和剤と傷に塗るタイプの軟膏っぽい物、包帯替わりらしいぼろ布を買った。この町と帝国の間には巨木から見た山が立ちはだかっており、谷を通る街道が良く使われるらしいのだが、麻痺系の毒を持った厄介な魔物が時々人を襲う為、中和剤はこの店一番の売れ筋商品らしい。質の悪そうな瓶に入った物で、魔物の毒にやられたら飲ませるものだそうだ。軟膏っぽい物は見た目の通り塗り薬で、傷口をきれいにした後塗ると回復を助けるらしい。病院でかぐような臭いがしたので消毒効果もあるのかもしれない。ぼろ布は説明するまでも無い。日本ならたぶん小学生が雑巾にしてもらうはずだ。汚そうなので宿に戻った後、井戸水で軽く洗濯しておく。防具屋があったので見てみると、山越えに適した丈夫な靴があったので人数分買った。俺はスニーカーのままだし、お嬢様もミルもあまり山に適した靴ではないと思ったからだ。俺のサイズは簡単に見つかったが、ミルとお嬢様用のサイズがなかなか無くて時間を食う羽目になった。そもそも女性が山越えと言うのがあんまりないらしく、徒歩で山越えしなければならないような人は靴を買い替えられる金が無いらしい。考えてみれば、女性に山越えをさせると言うのもなかなかにハードなはずだ。迂回できる方法があるならそちらのルートが良いだろう。どうしてもというような人達は訳ありであり、そういう人に限って金が無いのはなんとなくわかる。

第29話です当初は1話5000字で考えてたのですが、キリのいいところで切るとどうしても文字数が前後し、少ないのは4000くらい、今回は6000字になっています。ふり幅がこんなにも多いのは私の文才の問題ですから、今後の課題ですね。体調が悪くて思うように先が書けず、アイデアばっかりポンポン出て困っていたりしますが、ストックの3分の1ほどしか公開していない現状、今更新が止まる事は無いのでご安心ください。ミル達が王国の国境に着きました。さて、無事国境を越えられるかな?w 次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
面白いです。 国の起源・・・ 玉という「価値ある富」を障壁(人や柵や壁や掘り) で囲むように守った集団暮らし、それが国である、らしい。 玉と城壁で出来てるのが国という文字の意味、らしい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ