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異世界に響く銃声  作者: レコア
第一章いなくなる人
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第二話 消えるゲーマーと少年兵?

ネットの記事なんて当にならない。でも、火のない所から煙は出ない。

家に帰ると宿題をとっとと終わらせて、エアガンの手入れをする。俺は手入れをしながら、部屋に飾られた各エアガンを見つめる。俺はスナイパーに憧れ、エアガンもスナイパーライフルを中心に揃えているので、部屋は長くて大きなライフルが飾られた、エアガン好きならテンションの上がる部屋だ。他県では条例の関係で16歳の俺は所持できるエアガンの種類に制約があるが、俺が住む県はその条例が無いため規制が緩く、18歳用のエアガンが購入できる。バイトを始めてからできた気持ちの余裕が、俺にちゃんとした【高校生として接してくれる友人】を作らせてくれたので、友人を部屋に呼んでエアガンを見せてみたり、庭の一部で缶を相手に撃ったりして遊んでいたが、親父は飛び道具を毛嫌いしているため、長くは撃てない。弾が庭に散乱しないように分解されて土に返るちょっと高級な物を使うため、たくさん撃つ事もできない。本当はもっと撃っていたいし、いろんなエアガンが買いたいが、部屋のスペースの問題や、バイトで稼げる金に限りがあることなどを理由に数は多くない。それでも毎日練習しているためか、あるいは距離の問題なのか、普通に狙うだけなら庭のどこからでも標的に当たるようになった。速射や長距離スナイプもやってみたいが、そこまで庭が大きくないのでまだやったことはない。エアガンの手入れを終えたら夕飯を食べる。帰りに見たニュースが妙に気になって考え事をしていたせいか、あまり味がしなかった。夕食後は早めに風呂に入る。あとはもう寝るだけにして、パソコンを起動する。リアル世界で撃てない銃があっても、パソコンを使ったゲームの中で撃てる。今はそういう時代だ。デジタルゲームをやったことがなかったので最初のうちは友人の勧めにも半信半疑だったが、最初のアカウント作成で手間取った以外これといった問題もなく、今ではすっかりハマっている。ゲーム内のコミュニティにも所属し、技量を買われていた。ゲームでは多数の人が同時にプレイしており、人種、国、言葉の壁が簡単に越えられる。世界中のプレイヤーが俺の見る画面の中で戦っていた。時に敵として、時に味方としてだ。すっかり身についた動きでログインする。皮肉にも、剣道で培った集中力と冷静な判断がスナイパーに向いていたため、操作を覚えてからはぐんぐん上達し、コミュニティ内でもスナイパーとしてはかなり上位に入っていた。

また、剣道で培った間合いの感覚や反射神経が、スナイパーが普通苦手とする接近戦にも対応できる能力を与え、ナイフという小物を使う点は剣道と少し違うものの、普通のスナイパーよりは確実に強いと思えるレベルには戦えていた。もっとも、ナイフで戦わなければならない状態まで敵が近くに来ることは少ない。味方の援護もあるし、自分で接近される前に大半は排除できている。そんな中、コミュニティ内でもあのニュースが話題になっていた。

「そういえば聞いた? You氏?」

「何を?」

「少年兵が中東でたくさんいなくなったらしいんよ」

「ああ、スマホで見たわ。誘拐なんだろ?」

ネットゲーム内でも時々時事ネタが話題になるが、今回はこのニュースか。何か新情報でも出回っているのだろうか?

「それがどうも違うらしいんよ」

「は?」

「ネットの記事だと、神隠しっぽいって騒がれているんよ」

「阿保じゃねえの?ww 神隠しとか昔話かよ。しかも中東で?ww」

思わず吹き出してしまう。映画じゃあるまいし、しかも舞台が中東ってどういう事なんだ。

「ウチもそう思ってんけど、どうも中東だけやないみたいやで」

「他にもあんの?」

「アフリカとか、イギリスの方とか、日本でもそれっぽい失踪事件が最近多いんて」

「日本はともかく、アフリカの失踪事件とかよくネットから見つけたな」

「まとめ記事っぽいのができているんよ。不自然なほど突然消えるっていういかにも神隠しっぽい事が書いてあって、警察とかも探しているけど手がかりが全くないねんて」

スマホのニュースで見た少年兵の事件以外にもあるのか。でも全部神隠しで片づけるのは安直すぎる気がする。

「単なる家出じゃねえの?」

「数がすごいんよ」

とっさに出した家出説はあっさり否定されてしまった。でも、そんなに人が消えているならニュースになるんじゃないだろうか?

「でもテレビじゃやってなかったぜ? デマなんじゃね?」

「消える人には共通点があってな。戦闘系のゲームに関わっていて、結構強いって人ばっかりらしいで」

「いや、それこそおかしいだろ。少年兵がいつゲームやるんだよ。しかもゲームでまで戦闘するとか病気だろ」

「だから今回はおかしいって騒がれてんのよ。本当に戦闘している人達が今度は消えたって」

「関連がないだけじゃねえの?」

消える人の共通点が戦闘ゲームの強豪プレイヤーなら、普通に考えたら少年兵は当てはまらないだろう。意味が分からない。

「消える人のもう一つの共通点は、消えた場所に紋章っぽいのが残るんて」

「紋章?」

「そう。画像はなかったけど、見た人の印象ではファンタジー物の魔法陣みたいなんて」

「ここにきて魔法陣かよ。ますますデマっぽいじゃん。それともカルト宗教の怪しい儀式とか?ww」

神隠しの次は魔法陣か。もはや小説やアニメの世界になってきている気がする。

「まあ、胡散臭いのはもっともやけど、ちょっと気になるんよ」

「ふーん。どんなところが気になるんだよ?」

「ほら、最近・・・。アースインしてないやん?」

アースはこのゲーム内コミュニティで強いと評判のアタッカーだ。突撃番長的な奴で、近距離戦闘がすごく強い。

「そういや見ねえけど、無いだろ。考えすぎじゃね?」

なぜこの話題なのかと思ったら、最近インしないゲーム仲間を心配しているのか。でも、なぜお前が?

「だといいんやけど。ウチ、アースとリアルで知り合いなんよ」

「ほう、知らなかったぜ。もしかしてデキてんの?ww」

「な訳無いやろ。高校が一緒なんや」

ここにきて知り合いだと暴露してきたこいつをちょっとおちょくってみたら、拗ねたような怒ったようなチャットが返ってきた。

「すげー偶然だな。お前らここに入った時お互い初体面っぽく挨拶していたよな? 怪しいぞ?」

「だからちゃうって。クラスでゲームの話をしていたら、あいつが割り込んできて、話してみたら知り合いだって分かってん。でも、あんまりリアル情報持ってくるのもよくないっていうし、そこまで親しくもないからほっといただけや」

「なるほどな。で、それを今俺に明かしちまったら意味ないんじゃね?」

ネットで仲良くなった人が意外と近くに居る人間だったなんてたまにある話だが、リアル事情を持ち込むのは良くないというマナーを気にして黙っていたなら、今ここで俺に話すのはおかしいだろう。いまいち意図が分からない。

「いや、信じてもらうために必要やから・・・」

「何をだよ?」

信じてもらうって、何をだろう?

「アースな、失踪してんねん」

「え・・・」

今までの胡散臭いという感情が消え、急に背筋が寒くなった。思わず部屋の中を見回した後、恐る恐る確認する。窓は締まっているが、どこからともなく、風が吹いてきて髪を揺らしたような気がした。

「マジか?」

「おとといくらいからな、急に学校に来なくなったんよ。先生は入院したらしいって言うとったけど、様子がおかしかったからアースとよく話している子に聞いてみたらな。その子と遊んでいる最中に突然いなくなって、そのまま帰ってきてないらしいんよ」

友人と遊んでいる最中に突然消えるなんておかしいだろう。家出じゃないとすれば、誘拐か何かに巻き込まれたのだろうか?

「警察は?」

「動いているみたいやねんけど、ウチは部外者やから何も教えてもらえんかった。アースの家を教えてもらって行ってみたんよ。ゲーム仲間や言うたら家の人が入れてくれてな。そしたらあったんよ。アースの部屋に」

「何があったんだ?」

無意識のうちにゴクリとつばを飲み込む。

「部屋の隅に、ちっさなマークみたいなんがあってな。変な模様やったから聞いてみたら、家の人も見たことないらしくて、警察は落書きやろうと思って気にせえへんかったらしいけど、隅っことはいえ床に書いてあるなんておかしいやん? ちみっこやあるまいし、アースは絵が苦手やって前話してたやん」

「そうだな」

床に書かれているなんて確かに変だ。高校生なら紙に書くだろう。部屋の隅にあるっていうのも気になるところだな。

「そのあとであの記事見つけたから、アースのお母さんに話してみたらな? ウチが見つけたマーク、消えてなくなったって言われてん。誰も入ってないはずやのに」

「不気味だな」

記事を見る前だったならそんなにしゃべらないクラスメートの失踪に興味を持つのはなぜだか気になってしまう。わざわざ警察に行ったり家を調べて部屋に入ったりするのは行動力がありすぎると思うが、模様が消えたという事態が不気味で聞く気は起きなかった。たぶんこいつなりにクラスメートを心配したんだと思うが、他の連中に聞かせたら完全に茶化されるだろう。

「あんまりニュースにならへんのは、あのマークがしばらくしたら消えるからなんやと思うんよ」

「家の人が気味悪がって消したわけじゃねえんだよな?」

「お家の人もびっくりしていたからそんな事無いんやないかな」

家族の仕業でなく、誰も入ってない部屋でマークが消えるのは不自然だ。アースの強さは俺も知っているし、少し不安になる。

「なるほど、確かにあいつ強ええもんな」

「せやろ? アースここでは結構うまかったやん」

「神隠し云々はともかく、なんかありそうだな。そのまとめのサイト教えろよ。俺も見てみるから」

「URL貼るで? あんたもスナイパーの腕はすごいんやから気をつけなあかんよ?」

さすがに神隠しはないと思うが、知らない中じゃない奴が居なくなったのは気になるし、興味もあったのでサイトを教えてもらう。

「お前は母親かよ。とりあえずサンキュー。無いとは思うけど、一応注意しとくぜ」

「別に心配してもええやん? せっかく頼れるリーダーなんやから、いなくなったらいややもん」

「はいはい、気を付けるから安心しろって。それじゃ、今日は落ちるわ、おつー」

ゲームを閉じた後、送られてきたURLを開く。もうすぐ寝ないと明日の朝がつらくなるが、数分見たら終わるつもりなので時計をチラ見しつつ画面の文字に目を戻す。


【失踪者多数、謎の神隠し事件まとめ】


「うさんくせえ題名だな」

そんなことをつぶやきつつ読み進める。サイトには分かっている失踪者の人数と、失踪したおおよその日にち、国籍など、思ったより細かい情報が書いてあった。情報化社会の闇なのか、個人情報が簡単に公開されている人も何人かいた。さすがに日本人で名前などが公開されているやつは居なかったが、3人ほど居なくなっていると書かれている。全体では200人以上になるらしい。他にも、見るからに本当かどうか怪しい消える瞬間のものだとされるピンボケ画像や、例の魔法陣っぽいマークについても、目撃談などをもとに絵にしたもの、自称目撃者の証言、マークを占星術や神話、果ては有名なアニメなど、いろいろなものに登場する魔法陣や儀式的紋章などと比較したという自称学者の考察など、情報はあるものの、いまいち信憑性に欠け、胡散臭さや中二病感が漂う物がほとんどだった。ネットならこんなものかと斜め読みしながらスクロールしていると、目に留まった情報に少しドキッとする。俺やアースがやっているゲームの中堅クラスプレイヤーが、失踪者に居るというものだった。先ほどのゲーム仲間の話が頭をよぎる。他の戦争系ゲームやバトルメインのMMORPGのプレイヤーも失踪者に何人かいるそうだが、知っているゲーム名が出たことは少し心臓に悪かった。不思議とオフラインのゲームはなく、オンラインゲームばかりなのが気になったが、件の少年兵集団を筆頭に、ゲームとは無縁と思われる人も結構いなくなっているみたいだし、関連性は高くない気がする。

「脅かしやがって」

若干腹が立ちつつも、記事を読み進める。ゲーム仲間は突然消えると言っていたが、失踪者の何割かは部屋が異常なほど荒らされていたり、血痕が残っていたり、悲鳴こそ聞こえないものの謎の振動を近所の人が感じたなど、事件っぽい状態で失踪した人もいるようだ。警察が動くのは事件性のありそうなものだけで、何の前触れもなくいきなり消えた者は、家出などの単なる失踪者扱いになっていた。海外の人間だと、マフィアに借金関係で消されたと警察が結論付けるなどのちょっと日本じゃ考えられない理由で捜査が打ち切りになった奴も居るようだ。時計を確認するとそろそろ寝るべき時間だったので、持論展開は明日にしてパソコンを閉じる。その夜は嫌な夢を見た。謎の黒い物体に手招きされている夢だ。黒い霧のようなものから手だけが出ている光景は、なかなかに恐怖心を煽るものだった。さすがに高校生にもなって汗びっしょりになるほどうなされるとは思わなかった為、翌朝は寝不足で体調が悪く、午前中の授業が辛かった。

第二話です。第一章は転移するまでを描く予定なので、つまらないなと思うかもしれませんがご了承ください。明日投稿する次話で第1章が終わりを告げ、第2章で異世界の物語が始まります。

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